ACT.126 ローテルダム危機/鬼の業


  ザ       ザッ!!!

「・・・・・・・・・。」

『・・・息一つ乱さねぇか・・・・・・』

「・・・・・・・・・。」

息も汗も無い。
血すら既に乾いた。

『ケッ・・・
 これだから、完璧血統のイムラは面倒だ。』

「・・・完全な人間なんて居はしないさ。
 今の僕は―――殺すことだけしか考えていない!!!」


ザッ・・・・・・!!!


『ハッ、そりゃそうだ!!裂人斬!』

「(右・・・を避ければ、次は左足蹴り。)覇ッ!!」

予見通り、二連撃を避ける。

『チッ・・・・・・
 (カエデよかスピードはねぇが、代わりに動体視力は“異常”だな。)』

いくらスピードは相手出来ても間合いの詰め方の上手さと
高すぎる動体視力は鬼とは言え脅威である。
慎重にいかねばならない、そうカヴィスは認識した。

「・・・どうした。次は確実に貫くぞ。」

『ああ・・・そうだなァ・・・』


認識したからこそ―――それを出す。


『・・・マグマ。』

「!」



ゴ ゴ   ゴ ゴゴ・・・・・・・・・



『鬼族の専売特許。マグマを操る能力。』

「―――――――――。」

『魔界は地中内に構成された魔力高濃度世界により成り立っている。
 その環境は過酷にして劣悪・・・その1つの原因がマグマだ。
 下等魔族が俺たち魔人クラスから見ても奇怪な姿をしているのは、
 マグマの超高熱や地中へ行くほど大きくなる圧力によって奇怪になる・・・
 その過酷な環境を数千年に渡り己の者とし、進化を遂げたのが俺達、鬼だ。』

マグマが蛇の様にとぐろを巻く。

『コイツァ、魔界から喚び寄せたモノだ・・・』

「・・・なるほど・・・
 道理で自然界の産物には有り得ない魔力を含有している訳か。
 それで・・・・・・何だ・・・僕をそんな程度の術で殺すつもりか?」

『・・・・・・飛べ。』

「・・・マグマの弾丸・・・遅すぎる。」


ヒュ!オッッ!!


『避けたと思ってんのか?
 甘ェよ、クソガキ・・・・・・』

「―――?」


グジッ!


「!?(腕に少し火傷を・・・?)」

避けたのに―――どうして。
いや―――マグマだ。つまり、

『言っただろう?マグマは超高温だってな・・・
 その炎熱と魔力によって多少の避け方じゃ火傷は免れねぇ。』

「・・・・・・なるほど。」

小刀を納め、長刀一本残す。
それを右手に持ち半身を引き、右手を更に引く。

『・・・・・・神刀流・・・奥義か・・・・・・』

「・・・・・・・・・
 (姉さん・・・・・・この技であなたの仇を。)」

『クックック。
 カエデはその技を放って死んだっけなァ?』


ゴ・・・ッ!


『マグマブレイド。ここまで同じ様にやって来たんだ。
 敬意ってヤツを表してテメェも同じ様に相手をしてやる。』

「・・・・・・行くぞ!!!」






ほぼ同刻 ローテルダム郊外 北

「フッ!」


 ド        パァンッ!



“――――――!?”

「甘いね・・・幾ら軟らかくてダメージを受け難いと言えども、
 この僕から放たれる超絶スピードの脚で穿てば、飛沫になるまでサ。」


クロードとローテルダム騎兵隊員に化けた軟体魔獣との戦闘―――
経過時間、12分20秒。


「流石にそうなってしまっては、再生も何も出来ないだろう?スライムクン達。」

“ギギィッ!!取り付いて殺セ!!”

「全くどいつもこいつも戦いに於ける美学と云う物がなさ過ぎるね。」

周囲八方からスライムモンスターがその身体を広げ、襲い掛かってくる。

「・・・久々に使おうか。」


その襲撃動作に全く動じず、ただ研ぎ澄ます。


“死”


「終わりだよ。」




―――――――――――――――!!!!!




「・・・カテゴリーX。
 あらゆる範囲の攻撃も無意味さ。」


完全粉砕―――。
飛沫になって魔獣は消えて行く。

肉弾戦においてクロード・ネフェルテムに敵う者はそうは居ない。
敵が魔法を使う種族ではなく、取り込む事で勝利を得る者達だったこと。
その時点で、勝負は決まっていた。


「さて・・・ローテルダムに行くとするか。
 待っててくれたまえ、リサさぁんっ!」

最後のさえなけりゃ格好付いたのに。