ACT.141 天は戒め、血は消える



「侵入したと思われる国境から最短距離で来るなら、」


ド!ゴォンッ!!


「んあっ!?町の外か!」

「来るの速すぎない!?」

「いえ。恐らく、国境警備隊の定時連絡の隙を縫って、
 警備隊員を倒し、その隙に侵入すれば、
 次の定時連絡まではその事実が発覚しにくいです。
 むしろ遅いぐらいかもしれません。
 加えてそこから分かる事は、戦闘能力が非常に高いという事。」

「単なる侵入目的の兵士ならそうは行かないから、ですね。」

「そう云う事です。」

「と、とにかく急ごう!」




城下町近郊 北西部

『『『あわわ・・・・・・』』』


コォオオオオオォオオ・・・


「流石の私でも驚いてるのよ。
 ゼロに近いぐらい魔力が無い私がどーして、
 魔力をこれほどまで使えるのか、ってねぇ・・・・・・。」

『バ・・・化け物の力だ・・・・・・』

「けど、この力・・・妙に精神的に疲れるから・・・」

布に包まれた大きなモノを両腕で抱えて構える。

「単に魔力を出すだけのこれで殺してあげるわよん。」

『!それは・・・新兵器!』


ジャゴンッ!


「・・・対放射熱フィールド展開。」

『『『今ならァッ!!』』』

「オラアッ!!
 人の国で何、暴れてやがんだ!!!」




バキィッッ!!!

        ドゴォ!!

   ガキョガ!!



『『『ごはああっっっ!!!』』』



           ズシャアアアアッ!!!



「え・・・何・・・?」

「大丈夫ッスか?」

三人のトルレイト兵に囲まれていた女性を守るように剣を構える。

「ま、まぁ、一応は・・・
 (やるじゃない、このコ・・・)」

後の二人も来る。

「やはり、トルレイト軍!」

「・・・リサさん・・・・・・こっちの女の人・・・」

「・・・!
 (・・・この女性・・・トルレイト上級兵士・・・
 しかし・・・立ち位置から考えて、
 味方同士で戦っていた・・・つまり、逃亡者はこの女性・・・!)」


ザッ!


『ぐぅ・・・・・・っ・・・』

『ガキ・・・がァ・・・!?』

「おいコラ、テメーら!
 人の国に勝手に入って来て、
 その上、女をよってたかって虐めるたァ、最低の更に下の連中だな!
 女に意味なく手を上げる奴はブッ飛ばすぞ、コラ。つーか、来やがれ。
 あ・・・そーいや、俺・・・あの女魔人殴ったっけ・・・あー、なんか矛盾が・・・」

『・・・て・・・メェッ!!!』

真正面から一人、飛び掛ってくる。

「うおお!!!?
 ジュストォッ!!!」

(この焔・・・この魔力・・・まさか・・・!)

「アフェッターレッ!!」


ザンッ!!!

『アッ!!
 チィィィッッ!!!!!』

『うあああっ!!アツッ?』

『うおおお!?』

バタバタ暴れまわって、火を消そうと必死になっている。
正直、笑える光景だが燃えているのは笑えない。

「・・・凄いです・・・・・・」

「ホントに驚いたわ・・・
 低火力で切れ味が少ないけど、しっかりと形を構成した焔の刃・・・」

「これで何でオメーより下なのか納得いかねー。」

『死ねェエエエ!!!』

「なぁっ!!」


        ジャキン・・・ッ!!


「え・・・?」

何か巨大な物を包んだ布から刃が・・・
いや、少し大きめのブレードが飛び出る。

「事情聴取は一人で十分でしょ・・・?私一人で。」

さっきまで襲われていた女がそのブレードを持って回転したかと思うと、


「さぁ・・・終わりよ。」



ザシュ!!!アアッッ!!!



『『『―――――――――!!!』』』

「・・・戒天・・・止血斬。」


         ザ・・・ッ。


「つ・・・よい・・・・・・」
	

一瞬の回転斬撃―――
そして、一切零れぬ血・・・

だが、確かに事切れている・・・。


「助けてくれてありがと。
 あなたの名前・・・聞きたいわ、ボウヤ。」

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