ACT.165 海渡/元


トルレイト領海 第十四海上基地

「・・・誰を連れて来たと思ったら・・・」

『サラサ・・・
 君がこんなに愚かな事をするとは思わなかった。』

呆れるサラサの前に居るのは、
戦いとは無縁そうな平凡な男だ。何もかも並な感じがする。

「「・・・誰・・・?」」

「・・・私の元夫。」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ・・・!!


「けけけ、けこっ!?」

リノン崩壊。

「結婚してたのか?!
 で、でも、お前ってハルダイトの」

「だから、元って言ってるでしょ!!
 あの男の名前は“ザース・ワスト”よ!」

やはり、触れたくない過去らしい。

「ワスト家・・・
 トルレイトの貴族でも5本の指に入る有力者やな・・・
 ・・・なるほど・・・お前の考えが少し分かったわ・・・」

「そ・・・!」

ジャコンッ!


「上層部の情報を入手する為にしたくもない結婚までしてね・・・
 お陰でバツイチになっちゃったけど、たった2日だけだったし、大した事ないか。
 それに髪の毛にすら触らせた事もないから、プライドも傷付かずに済んだしね・・・」

(怖ぇよ・・・サラサって・・・)

(こんな女でも結婚できたんだ・・・)

いや、そこかよ。
何やらリノンはサラサに逐一反感を持つようになってしまっている。

「で・・・何?
 アンタみたいなお坊ちゃまがこの私の相手をするって?」

『相手というより・・・連れ帰る。
 君に戦場はもう不要なんだ。』

「―――――――――呆れた。」

構えた銃は降ろさない。
確実に撃ち貫く。

「トルレイトの支配こそもう必要ないのよ。
 あなたの考えとはそこからしてもう違うの。
 どうやら、魔人にまでなったみたいだし、その根性だけは認めて殺してあげるわ。」

『サラサ・・・!』

「今更、うろたえないでよ。
 私に殺してもらえるだけ、ありがたく思いなさい!」



コォオォオオォオオォォオオ―――――――――。



『さて・・・あなた方にも姫君以外に1人ずつ当てるとしましょう。
 姫には全員を倒すまで指一本触れません。
 そして・・・キッド君は私が御相手しますけれどね・・・』

「コラ・・・こっちが相手してやんだよ。
 上からモノ見んじゃねェ。バーカ。」

ザッ!

「どーもテメーと会ってから引っかかる事があってな・・・・・・」

指を擦り、炎を生み出す。

さっきの手前、どうなるか分からなかったが、
言う事は聞いてくれている―――戦える。

「ブッ飛ばして色々聞き出してやる。覚悟しやがれ。」

『・・・・・・いいでしょう・・・
 ・・・サク。私の“獄統”を。』

ローテルダム城下でも見た、アルベルトの側近が刀を渡す。
が、前と違って、離れる様子はない。
恐らくは戦うつもりなのだろう。

「・・・リカードさん。私が前に出ます。」

それに呼応するようにリノンもキッドに並ぶ。
それには理由がある。

「あの人は・・・魔術師みたいですから。」

「分かりました・・・交代で姫を守りましょう・・・
 ブラッド。お前はこっちにも出来れば眼を配ってくれ。」

「了解、了解」



ザッ――――――!


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