ACT.10 真相探索1


数時間後 
リクトブルグ(城下町とビサイドの中間にある町) ソウジ宅

「うーん・・・」

「運良く該当するっぽいのは見つけたけど・・・」

「・・・かなり飛んだ話だな・・・」

「つーか・・・伝説が右手に舞い降りていいんすか・・・?」

そりゃ怖いわな。

「まぁ・・・伝説は色々と脚色がついて伝わるものだから、
 ここに書いてあること全てが本当とは言えないだろうけど・・・信憑性は」

「だ・・・だって、『炎の龍は大昔にメチャクチャ悪さしまくってたモンスター』で、
 それを『勇者達が封印して出来上がったのがこの右手の印』なんて信じられないッス!」

「いや・・・意外とマトモだと思うんだが。」

「別にですよねー。魔物を魔力の塊にして体内で飼うイカれた魔術士だっているし。」

ソウジはまじめに言っているとして、リノンは明らかにふざけている。

(人事だと思いやがって・・・)

むくれるキッドをよそにソウジがページをめくっていく。

「・・・過去に同じ様にその力を使った人間が何人か居るようだな。5人と書いてある。」

「龍が5回も喚ばれてるんですか?」

「いや・・・龍が呼びかけるらしい。『力が欲しくないか?』と。
 挑発の言葉も使ってくるらしい。そして・・・・・・」


ソウジの眼が一文に止まり・・・リノンが覗き込んでその一文を覗く―――


「5人のうち4人は最期には炎に飲み込まれて死んだ!?」

「ハ・・・ハハ・・・」

「アンタバカ!?どーして、そんな挑発に乗ったのよ!?
 私たちまで巻き込まれたら最悪じゃない!」

「全く・・・ここに来てお前の短気な所が・・・はぁ。僕がちゃんと付いていれば・・・」

お前ら・・・先ず心配しろよ・・・

「しかし・・・1人だけ無事だった人間がいる。しかも、この30年内に・・・・・・」

30年・・・非常に最近だ。
その当時、ガイアでは酷い大戦が起きていた。そこに関わっているのだろう、とソウジは考える。

「一昔前ッスよね・・・けど・・・誰が知ってるのか・・・」

「(30年・・・・・・誰が書き加えた・・・?)
 ・・・死んだ僕の両親なら知っていたかもしれない。
 だが、関係者は皆死んでしまっているのかもしれない・・・」

だとすれば、刻印について直接人から知る術は非常に少ない事になる。

「・・・えっと・・・何か解く方法でもあるのかな。」

「えぇ・・・『龍を戦いに飽きさせる』・・・と。」

「「あ・・・飽きさせる・・・?」」

「人間にとって紅い刻印は道具だが、同時に龍にとっても人間は暴れる為の道具であると。
 龍にその人間を使う事を飽きさせれば・・・龍は離れていくらしい・・・」

(そーいえば・・・)


お前の“誠なる心”で戦え。
然も無くば、貴様の身は滅びよう・・・だが、満たせばあるいは・・・


(・・・とかって・・・『満たせば』・・・ってのは、そう言うことなのか・・・)

「ソウジさん、戦う相手は魔物でもいいんですか?」

「・・・ここに書いてある3人は戦乱の時代に生きていたとなっているから、
 相手はきっと人間が大半だな・・・
 他の生き残った人間を含める2人は魔界大戦でらしい。魔物だな。」

「じゃぁ、相手は誰でもいいんだ。」

何だかんだ言いながら、リノンがキッドを一番心配している。
のはソウジの眼には明らかに映るが、キッドは当然分かっていない。

「って事は、また始まりかけてる大戦に俺も参加するしかねぇんだよな。」

「・・・多分。戦わなければ、紅い刻印が体を蝕む・・・らしい。
 それが炎に飲み込まれ死んだ・・・・・・ということか・・・」

「最終的には・・・・・・」

「・・・・・・死ぬみてぇだな。」


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。


「・・・って、ちょい2人とも黙るなよ!?」

「あ・・・あぁ。そうだな。ハハ。
 (最近・・・それこそこの30年に書き換えられたと思われるこの本・・・
 どこまで信憑性がある・・・ドコまで改竄された・・・?)」

「アハハ・・・・・・・・・」

「・・・大丈夫だって・・・そんな無茶な奴を体ん中に入れてんのに
 4人しか死んでないんだぜ?」

「・・・バカ・・・生存率20%じゃない・・・・・・ソウジさん・・・
 他に・・・他に何か書いてないんですか・・・!?もっと何か方法があるんじゃ・・・」

「・・・リノン・・・」

いや、分かっていない訳ではなくて・・・ただ・・・

「・・・・・・蔵にもしかしたら古い書籍があるかもしれない。
 これだけではどうしても信用できない。」

「お、俺も探します。」

「いや・・・お前たちはここで休んでいるんだ。ずっと動きっぱなしだろう?」

「でも・・・」

「・・・いいから。」


バタン・・・


「・・・・・・・・・」

「・・・・・・悪い・・・リノン・・・」

「別にさっき言ったの・・・・・・巻き込まれた、とかの・・・そう言う意味じゃないし・・・」

「・・・・・・悪い・・・・・・」

謝りたい・・・だけど、上手く言えなくて・・・

「・・・アンタがあの力・・・手に入れてなかったら、
 私死んでた・・・アンタの力のお陰で生き残った人だってたくさんいる・・・
 だから、謝らないでよ・・・・・・怖いけど・・・間違った事はしてないんだから。」

「・・・・・・あぁ・・・みんな・・・死んでたんだよな・・・
 なんにしても・・・この右腕に有る力が・・・助けたんだよ・・・な・・・」


けれど、その力が逆に・・・危険へと巻き込んでいる・・・
その矛盾をどうすれば断ち切れるのだろう・・・