ACT.100 謎の名
『うぎゃああっっ!!』
ドシャッッ!!
『な・・・!』
「申し訳ありませんが、あなた方には黙って頂きます。」
サクは武器を持っていない。
だが、魔力を帯びた徒手空拳と下位魔法によって既に3人も倒している。
『この女・・・一体・・・!』
「消え失せろ。」
『!!』
女に気を取られている間にもう一人が姿を現し、風の翼を羽ばたかせる。
「片翼の衝撃。」
ゴパ アッッッ!!!
『『『『―――――――――・・・・・・・・・』』』』
風とその刃に巻き込まれ、切り刻まれ血の飛沫すら無くなる。
片翼だけでこの威力―――
ミサトによる鍛錬の成果もあって、それは更に強靭に進化している。
「・・・何だい、その恐ろしく膨大な魔力は。」
「・・・・・・後で教えてやる。」
右前方を睨み、刀を構える。
「今は敵に目を向けろ。」
『おおおおおおおおっっ!!!』
「ここは私が!“貫け、槍の如く”!
“アクアスティンガーッ”!」
リサの両手の10本の指から鋭く尖る水の鞭が放たれ、
『がぎゃはあっっ!!!』『ぐべっっ?!!』
敵の四肢を連続で穿つ!
「(この2人・・・強いね。ソーライトにはこれほどの隊士がいるのかい。)
僕も負けてられないねぇ。さぁ、愚民共よ、来たまえ。
その汚らわしい咆哮を消し去ってあげるよ。」
(御手並み拝見だな・・・)
クロードの行動開始と共に後に下がる。
『嘗めやがって、この野郎!!』『かかれぇっっ!!!』
「フッ・・・・・・戦いとは美学だよ。人生もまた然り。
それを知った者だけが栄光を手に入れる。」
ザッッ!!
「だが、君たちにいきなり技を魅せるのは非常に無意味だろうね。」
『はあああああっっ!!』
クロードの体が僅かに動く
同時に兵の一人が堕ちる。
『え・・・?』
僅か5秒―――。ほんの一動作、だと思う。
『『―――――――――?!』』
ドシャッ!
『な・・・・・・何・・・ィ・・・ッ!?』
何が起きたのか―――。
倒された本人すらその意味が、過程が分からない。
(・・・速いですね・・・見えましたか・・・?)
(少しは・・・
しかし、初動が殆どなかった・・・そこから蹴り出したようだが・・・)
「・・・何だい?もしかして、臆したのかい?
なら・・・こっちから行くよ。」
その後8割の兵士が死傷。残りの兵士は敗走。その間、僅か30分。
「なんだ・・・弱すぎるね。というか、君。
余りに圧倒的な火力を持ちすぎじゃないかい?流石の僕でもヒクよ。ハハ。」
「火力じゃない。風力だ。訂正しろ・・・それに」
「ハハ、上げ足とってそんなに面白・・・・・・・・・」
視線の意味を察し、物陰に潜む。
「・・・・・・(一人・・・・・・・・・)」
「・・・っ・・・。
(ハイ・・・魔力は感じませんが・・・凄まじい闘気が・・・)」
「・・・・・・。
(妙な空気だね・・・この感じ、好きになれそうに無いよ。)」
ドン・・・ッ!!
『・・・・・・・・・命ぜられて来てみれば・・・何とトルレイトの弱き事よ。
そこの3人・・・隠れた所で意味は無いだろう・・・出て来い。』
「ほう・・・・・・3人を相手にするとでも・・・?」
暗がりであまり顔は見えない。
隠れている必要もないのでロックハートが戦闘に立って相手になる。
『・・・・・・その声・・・・・・』
「・・・・・・?」
月の光が雲に覆われる。
完全な闇―――しかし、見せなくとも分かるその感覚―――
「な・・・何だ・・・・・・・・・・・」
悪寒に襲われる、と実感出来る衝撃―――。
「・・・この男から感じる違和感は・・・・・・一体・・・」
『・・・見ぬ顔・・・見ぬ顔・・・・・・』
「・・・・・・・・・?」
『・・・・・・お前・・・は!!
サイ・・・・・・リゲル・・・・・・!!!!!!』
「何・・・だ・・・・・・?」
ロックハートを見るなり、襲い掛かる!
『鬼刃(キジン)め!!!!!殺ス!!!!!』
「!?」
グオッッ!!!! ず!!バンッッ!!!
「―――――――――ッ!!」
寸前のところで避けきるが、大地が真っ二つに裂けている。
「何て破壊力・・・!!」
「魔力の負荷無しでやるとは、凄まじいね・・・しかし・・・」
「・・・・・・サイ・・・リゲル・・・?
誰だそれは・・・一体、何のことだ・・・・・・」
『我が名はハーバード・ライクリッフ!!サイ・リゲルよ!!
かつての戦争で我が右腕に付けたこの傷の恨み晴らしてくれようぞ!!!』