ACT.101 呼ぶ名


「チィッッ!!」

ず ガンッッ!!!

「何者なんだい!?この男は!トルレイトの将の誰かか?!」

「知らん!
 だが、この動き・・・只者では無い!」

斧による凄まじい打撃と連撃、そして斬撃―――。
スピードならば負ける気がないロックハートでも翻弄される。
ロックハートが引き付ける間に、サクが小さな本を取り出し何かを調べている。

「な・・・勇将名鑑にハーバード・ライクリッフの名なんてありません!
 全くの無名です!ライクリッフと言う名すら存在しません!」

『サイ・・・リゲル・・・ゥゥゥ!!!貴様なら、知っているだろうッッ!!
 ベルモット・アノーはドコだ!!?答えよォッ!!』

「チッ!シルフィード!!」 

右肩から風の翼が現れ、ロックハートを包み斧の一撃をいなす。

『グオオオオオッ!!!
 教えろ!!そして殺すゥッ!!』

「(身体能力が優れている訳ではない!この違和感が問題だ。)風魔!!」

ザギッッ!!!

『ヌムッッ!!』

抜刀でまずは敵の動きを往なし、防ぎ、

「壱紋穿!!!」

『!?』

刺突の一撃と共に吹き飛ばす!

「・・・・・・ーッ・・・・・・ハァ!!!」

『ぐご!!』


ズ!! ドシャアアアッ!!!


「抜刀術で牽制して、そこから突くなんて凄いね。
 まぁ・・・起き上がってくるだろうけど・・・」

「・・・ああ。寸前で微妙に切先がずらされた・・・」

『ぐ・・・・・・オオオオオオッ!!!』

無傷・・・?!
血が、蚊に吸われた程度しか出ていない。

「・・・バカな・・・掠り傷だと・・・!?
 ズレたとは言え、感触はあった!」

「ロックハートさんの抜刀刺突が効いていないなんて・・・!」

『この・・・程度・・・カァッ!!サイ・リゲル!!!』



ズ・・・オッ!!       バンッ!ドガ!!ァアア!


「クッ!!」「冗談じゃないね!」

「ここは私が!無遁ッ。」

敵兵達が落として行った刀剣類に手を当てる。

「崩劉鏡鎖(ホウリュウキョウサ)!!」

それらの刀剣類が鏡に形を変え、敵の周りを囲み捕縛する。

「続いてッ!無遁・・・・・・なっ!!」

何かに気付く―――

『ヌグウウウウッッ!!!何だ、この面妖なッ!!!』

「み・・・見てください・・・」

月明かりが再び現れ、ようやく見えにくかった顔が見えてくる。

「・・・・・・これは・・・・・・・・・」

同時に、殆ど見えなかったその顔が違和感の意味を―――

「私達が感じていた違和感・・・・・・コレだったんですよ・・・・・・!!」

違和感がその顔にあったと言う事を教える。

『カアアアアアアッッ!!!!』

「顔が・・・
 いや、体全体が鏡に映った方がバランスよく見える・・・」

「き・・・君は一体何者だ!
 そして、サイ・リゲルだとかベルモット・アノーが誰なのかを答えたまえ!」


べギッッ!!!バリンッッ!!!!


『オオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!』

「私の鏡封じが!」

一撃での崩壊―――。
中級の下段忍術であるが、それでも素手だけで壊せる訳がない。

「魔力を使わずに強固である忍術が破られるだと・・・!?」

『・・・ウゥゥウウゥウウゥゥゥ・・・ッ・・・・・・』

魔力を使わずに、ではなく、
魔力自体も感じ取れない・・・?

「でも・・・
 多少は疲れてるみたいだね・・・・・・さぁ、答えてもらおうか。」

『無理ダヨ。
 ハーバードは、戦闘ニなルト興奮しテ、周りが見えナクナるかラ。』

「!?」

ハーバードという大男の後ろに小さな物体が中に浮いている。
黒い羽に紅い眼、小さな身体。

「・・・小悪魔・・・・・・という事は、魔界の手の者か。」

『君たチが、ロックハート・クラウンとリサ・クランバートだネ・・・?
 ヒルダンテス様、凄く嫌っテルよ、君たチの事。』

(・・・ヒルダンテス・・・それが大元締めの名前・・・
 ・・・つまり・・・僕の町を・・・・・・)

『でモ・・・』

『グオオオオオッ!!!死ね!!!死ねぇッ!!』

「風刃・・・デスサイズ!」


バギッッ!!!


『ッ・・・はぁ・・・!』

「な・・・!」

まさか、サクの忍術のみならず―――

「物理攻撃だけで刻印の魔力に耐えるだと・・・!?」

『ゴオオオオオッッッ!!』

「くァ・・・っ!!!」

風の翼をも撃ち通すほどの衝撃!

『アハハハハハ!!
 ハーバードはネ・・・クすくス・・・異世界の人間だヨ。そンナの効かないョ。』

「「「―――――――――!?」」」