ACT.104 剥


「がはっ・・・・・・っ?!」

攻撃を仕掛けた直後に別人からの一撃がクライセントを撃つ。

「隊長!」

「大丈夫だ・・・少々、脇腹を打たれただけだ・・・」

ザッ!

『・・・何やってんだ、カタルカス。
 10分で片を付けるハズだったろう?』

その一撃を放ったのは魔人の女―――ローズ。

『予想以上だ・・・ヒルダンテス様でも手こずる。』

『フン。あのお方なら5分もあれば殺せるよ。バカにしてんじゃないよ。』

「ぐ・・・・・・あの女は・・・・・・!」

「国王を殺した魔人(おんな)!シッ!」

リカードが10本の手裏剣を投げるが、

『・・・何だ・・・』


   パシィッ!


『あん時のくノ一じゃないか。』

片手で払いのける―――

「・・・・・・(あの程度なら見切るか・・・)」

『・・・面倒だねェ。』

『貴様が出て来るほどの事ではない。拙者一人で殺す。』

『五月蠅いんだよ、ヒルダンテス様直々に力を頂いたかは知らないけどね、
 下っ端がこのアタシに貴様呼ばわりするんじゃないよ。』

「・・・(この女の方が階級は上・・・)」

『まぁ・・・そっちの男はアンタにやるよ。それがヒルダンテス様の命だったしねェ。
 このくノ一はアタシが5分で狩る。テメェもそうしな。』


チャッ・・・・・・


「隊長・・・こちらはお任せ下さい。」

「すまない。皆は・・・?」

「問題ありません。」

「・・・よし。」


間合いを取る。


「・・・・・・指名通り、私が相手をしよう。」

『天真忍軍か・・・・・ここんトコ、名前付きの奴らが相手だねぇ。
 この前はハルダイトの末裔だったかねぇ。逃がしちまったけどさァ・・・』

(な・・・ハルダイト家・・・!トルレイトの上級武家!
 という事は・・・トルレイトとヒルダンテスは敵対関係にあるのか・・・!?)

『あー、それから、このアタシがあのジジイだけを殺したって?
 アンタらは何にも見えてないんだねェ、アハハハハハハ!!』 

「?(・・・どういう意味・・・・・・)」

『まぁ、いいか・・・・・・とりあえずさぁ、
 お前は逃がさねぇよ!!!ブッ殺すとする、カァッ!!!』


ヴッッ!!!


「・・・右・・・左上空。」

『―――――――――!!
 (さすが、忍だねぇ!動きに無駄がない!)』

鉄の一撃を見切る―――

「・・・トンファー・・・か。
 宣言しておく。私にトンファーじゃ当てる事は出来ない。」

『嘗めた事言ってくれるねぇ!!』

「・・・反応は良いけれど、眼は悪い。」

『――――――!?』


バキ・・・んっ!!


『ア・・・アタシのトンファーが!』

少しばかりリカードが触れただけで粉々に砕け散った。

「・・・天真流忍術は魔力である一定割合以上、
 支配したあらゆる物質の分解、結合あるいは形質、硬度変化する事が出来る。
 金属・非金属、有機・無機関係は無い。故に・・・・・・生物の分解も可能だ。」

『うっ・・・!!』

「私をただの天真忍軍の忍と思って魔力もロクに使わずに攻撃したのが仇になったな。
 私はコーデリア姫の唯一の忍。そだけの自負はある!」

『テ・・・メェッ!!!』

魔力の拳打をすり抜け、身体を落す。

「(地質が余り良くない。腕を破壊出来る強度で限界か。)土遁。」

『――――――!?』

「鐵柩刺(クロガネヅキ)。」


ズオッッ!!!


『なァッ!!!私の腕がっ!?』

盛り上がった土に包まれ、土が急速に硬質化する。

「利き手は破壊する。」



         べギッッ!!!!



『アギャアアアアアアアアッッッ!!!腕ッ!!腕がぁっ!!
 グアアアッッ!うううっ!テメェッ!!あぐあああっっ!!』

「・・・私も伊達に姫の近衛をやってはいない。」

周辺の大気に靄(もや)がかかる。
霧へと姿を変えてゆく―――大気中に存在する水分の変換―――

「水遁、霧消崩陣。」

『がっ・・・!?
 あぐ・・・!?息・・・・・・ガハッぁ!!』

「極限まで大気に対する水の飽和を進め、更に含有酸素量を極限まで落している。
 もがけばもがくほど、苦しくなるだけだ。」

『ゲホッ!!やめ・・・でっ!!死・・・』

「・・・死ね。
 姫をどれだけ哀しませたのかも理解出来ないだろう。死を以って・・・!」


バリ・・・・・・ッ!!


「な・・・っ!?」

ローズから生々しい何かを剥がす音が―――・・・
共に人間では到底考えられないほどのドス黒い魔力が溢れ出る。

「リカード!どうした!?」

「隊長・・・この女・・・!」