ACT.107 罠
1時間後
「チッ・・・解体に手間取ってしまった・・・!」
ダダダダッ!
「ええ。あれほどのものとは・・・
ですが、あの後休んだのも正解だと思います。」
「全く!
トルレイトは一体何を考えているんだ!弾頭1発で1千人が死ぬモノを!」
「だが、言っている場合じゃない。ユーリケイル城下町の人口は40万人だ。
あの場にあったのは3発。多くて4千人を殺せる程度。」
「数発はアレと同式のモノが他の部隊にあると考えた方がいいかもしれません。
その部隊を探し出して、発射前に止めなければ!」
「しかも今日は城に向かってこの時期特有の風が吹き始めている。
この数日の停滞行動はこの季節風を待つ為・・・
そして、第一波の攻撃数が少なかったのは第二波が強力になりうるという事の布石。
つまり、城周辺に守りを更に固めさせる事で・・・」
屋外にいる兵が一瞬にして消滅する―――。
そして、二次被害―――火災によって更に多くの命が奪われる。
「ッ・・・予想以上の被害になるね。
君の凄い魔力でどうにかならないのかい?」
「・・・・・・出来る限りの事はやる。
いや・・・・・・あの国だけは・・・必ず!」
ザムッ!
「!アレは!」
「見つけたね、トルレイトの分隊だ。早速やるかい?」
「・・・ああ。
だが、数人取りこぼしただろう昨夜の連中から既に連絡が行き届いているハズ・・・
もしかしたら、俺達を警戒して砲弾は別の場所にあるかもしれん。首尾よく運ぼう。」
同刻
「よし。向こうにラゥム派の拠点がある。」
予め様々なルートを決定していたお陰で予定以上の速さで到達した。
「っしゃ!合流前にブッ壊せばよかったんスよね。」
『・・・何、アンタら・・・
捕虜連れてそんなコトすんの?バッカじゃない?』
「ハハ。バカは承知の上だよ。戦争やってる時点でね。
たとえば、こう言うのも」
断っていた気配をむしろ、外に放出し、
いきなり立ち上がり音を立ててみせる。
「「な・・・っ」」
ザッ!
「バカのすることだろうね。」
『う、うわっ・・・!て、敵兵発見!』
((なにやってんのーっ!?))
(ソウジさん、それはやりすぎや・・・
まぁ、エエ・・・それでこそ“後々の道具”がゲットできる。)
「やぁ、第二大隊所属の部隊だね。」
とかなんとか、物凄い余裕で敵の前に立ちはだかるソウジ。
『その容姿・・・国家反逆罪の3人だ!』
「・・・いつの間にそんな法律が出来たんだろうね。まぁ、取り敢えず。」
ガッ!
『あう・・・?!』
(((んなっ!!)))
唐突にユリを掴み、後ろから首をキメに入っている。
「一応、捕虜扱いだけどね・・・こちらも護身の為に彼女を使わせて貰うよ。
もちろん、君には戦後にちゃんと非礼は詫びるよ。」
カチッ。
『ぐく・・・・・・
(コイツ・・・・・・下手したらホントに殺される・・・!)』
先日、ソウジの眼を見たユリにとって、
彼の一挙一動が恐ろしくてたまらない。
悪態もそれを振り切るための虚言なのだ。
「僕らは出来れば、平和的に解決したい。同じ国の人とは争いたくない。」
『何を勝手な・・・!囲め、囲めェッ!』
『ちょっとぉっ!
アタシがいるのよ!?妙な真似したら!』
『特別編成部隊だか知ねぇが、構うな!』
((うわ・・・・・・))
味方を見捨てた―――。
この一件が始まった時からラゥムの配下がどうしようもない連中だとは分かっていたが、
まさか味方まで簡単に捨てるとは思わなかった。
『こいつらを殺れば、二階級特進は確実だ!』
「なるほど・・・・・・」
「ちょっと!ソウジさん!?」
カチッ
「コレでエエんやろ?ソウジさん。」
「録音ありがとう、助かったよ。」
「「? ? ? ? ? ?」」
訳が分からないキッドとリノンに
ブラッドから小さな長方形のモノを見せびらかされてようやく理解した。
「魔力動力式録音機。
アンタらの非道ッぷり・・・ぜーんぶ、録音させて貰ったで。」
『『『―――――――――!』』』
「お前ら、ホンマにアホやな・・・
ソウジさんのしょーもない口車とも言えんモンに乗せられよって。」
「うーん、しょーもないっていうのはちょっと酷いかな。
これでも結構頑張って騙し打ってみたんだけどね。」
とりあえず、彼女の事は気にしてあげるべきだと思う。
『何よ、それーっ!
アタシをダシに使ったってワケ?!ふざけないでよ!?』
「まぁ、いいじゃないか。君の仲間が迎えに来ている。」