ACT.109 噛
「上ぇっ!?」「鳥獣系!!」
頭上という死角からの超高速の飛来―――!
それに対抗する為に即座に呼び出したワルキューレの一人、
レギンレイヴに命じ、術が発動する―――
“サンシャイン・ストーム!”
ズガガガガガガッッッッ!!!!
『ギャアアアアアアッッ!!』
炎では無い“灼熱”の嵐による一撃。
レギンレイヴから放たれたそれは巨大な鳥に突き刺さり、霧散させんとするが、
「!あのデカイ鳥の上にまだ・・・!」
更にその上空に何者かが居る。
「メチャクチャ尖った強力な魔力!
こんなんに気付かんかったんは、さっきのゾンビのせいやな!」
「嗅覚が潰れて魔力の臭気に気付かなかったのか。
(それにしても、リノンさんの魔法技量は凄まじいな。)」
魔力感知には五感が必要になる。
先ほどのゾンビによる嗅覚の破壊による撹乱は絶大だった。
『こノ匂いの中、狙っテクルとは凄イね。』
「「小悪魔・・・!」」
全員が一斉に構える。
小悪魔―――悪魔と呼ばれる魔物でも呪いや破壊の魔法に長けた種族。
破壊魔法はそれこそ、避けることが出来るが、
呪いに限ってはゼロであろうが優れた魔術師であろうが、
有無を言わさずその効果を発揮することさえある。
構えることで戦意を向上し、集中し、負けぬようにせねば一気に殺される。
「・・・・・・わざわざ、ラゥムが魔物を使うとは思えない。
ヒルダンテスの差し金・・・か。」
『くスクす。君がソウジ・イムラ・・・ダネ?
君の事だケはヒルダンテス様、評価シテたよ。
ツマり、君を殺セばボクの評価は上ガる。トゥウェルブ。イケっ!』
ドッッ!!
「―――!(地面から爪!?)」
「前だけじゃない!先輩ッ、後ろだっ!!」
「!」
ズバ・・・ッ!!!
『ギ・・・・・・・・・・・・む・・・?』
『刺しタノニ消えたっ!?』
「・・・・・・神羅鏡崩刃。」
タンッ。
「・・・助かった、キッド。」
「たまには俺もやるッスよ。」
「そうだな、頼りになるよ。
(・・・・・・反応が遅れた・・・・・・なのにキッドは分かっていた。
直感か・・・それとも、先日の戦いでシンを倒したという・・・・・・)」
動体視力のようなものじゃない。
それなら自分の方が絶対に上だし、経験もある。
だが・・・これは感覚的なものだ。
「・・・それにしても・・・」
「で・・・デケェ・・・!」
「3メートルは軽くあるよ・・・」
地面から現れた2体のそれは、どんな魔物とも違う姿・・・
『ギガアアアアアアアアアッッッ!!!!!』
『まだソンなに暴れルナよ・・・』
そう呼ばれた方もまた通常の魔物とは一線を画す姿。手だけの魔物。
「な・・・何だよ、テメーらは!」
『ボクはヒルダンテス様直属の部下、獣使いのビュビ!!
こッチの大キイのが、トゥウェルブで手がいっぱいのがナインティーン。
僕ら三にンで君タチを殺シニ来たよ。』
「はあ?何が殺しに来たよ、だ。
俺らがお前らブッ飛ばすッつーの!」
とかなんとか、キッドが挑発に乗っている間に
(どーいう事や・・・ヒルダンテスの部下て・・・
ラゥムと手を組んでたりするんか?)
(分からないよ・・・ラゥムならやりかねないけど、
あの男って相当な魔族嫌いだって聞いたことあるし・・・)
状況を整理するブラッドとリノン。
『ぼくラガ殺すヨ、あははハハはは!!
「んだと、コラァッ!直接来やがれ、ヒルダンテスの野郎!!」
(うん、まぁ・・・今はいいかな・・・
全然、そんなコト考えもしないバカが居るし・・・)
「落ち着け、キッド。」
チャッ。
「・・・僕には到底理解出来ないな。
ヒルダンテスは頭の悪い男ではないハズだ。」
『そーだ!ヒルダンテス様はコの星の全てを統ベルお方ダよ!!』
「・・・理解出来ない。
ここで僕らを襲撃しに来て、果たして意味はあるのだろうか。
あるとしたら・・・・・・お前たちは噛ませ犬、もしくは陽動では無いのか?と。」
『か・・・かませ・・・?』
「何に対しての陽動かは皆目検討は付かないけどね・・・」
明らかな挑発。
『・・・か・・・ませ・・・?』
「どっちにしたって、あの野郎は他に何か考えてる・・・
けど、俺らは倒すしかねェ!ブッ飛ばしてやるよ!」
戦闘体勢に移るが、一体豹変する存在―――。
『かませ・・・かマセ犬なンカジャないぞーっ!!!思い知らセテやルッ!』
『ギガ・・・。』『グゥ。』
『殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せッッ!!!』