ACT.110 進化の炎
「どないするんや・・・
ソウジさんを襲えた辺り、ちょいと面倒かもしれへんで・・・」
巨大な方はともかくとして、大量の手を持った方はかなり危険だ。
リーチという概念が通用しないかもしれない。
「・・・僕とキッドでこの妙な魔物の相手を。
隙を見てリノンさんとブラッド君であの小悪魔を。
どちらかと言えば、小悪魔が一番厄介だからね。」
「レギン。聞いたわね。」
“承知。攻撃動作の準備に移る。”
(何や、システマチックなヤツやな。
にしても、意思付きの具現魔法を発動するとは流石は学内トップやな・・・)
ザッ!
「まずは様子見をするんだぞ。
どうもこの魔力・・・不快感がある。」
「ウス。まずは小手調べ!火炎弾っ!」
『グゥ・・・・・・』
アームモンスターの手が3本伸び、3つの火炎の球を受け止め火炎を消し去る。
「んなっ!?伸びるのかよ!?」
危惧した通り、見た目のままのリーチは考えてはいけない。
そして、小手調べとは言え、火炎を消し去った魔力防御・・・侮れない。
『グシャグシャにしロォっ!!』
『グゥゥゥウウウッッ!!!!』
ゴッッ!!
「来たッ!」
巨大な方が覆いかぶさってくる―――!
「神刀流、神羅極円刃。」
『グギイイイイイッッッ!!!』
だが、ソウジの素早い見切りと斬撃で腕の“行動を消去”する。
そこへ、一気に畳み掛けるキッドへの連携―――!
「新技その3っ!ジュストォッ!!」
刀を抜き、火炎を纏わせる。
その状態で半身を引き、“刺突”を撃ち出す!
「ストッカーレ!!!!」
ドウッッ!!!!
『グギイイアアアアッッ!!!』
ゴォオオオオオオオッ!!!!
『ガぐアアあっ!?』
ソウジの一撃で弱っていた為に容易に右腕が焼け落ち、消える。
『な・・・火炎の剣を飛バシた!?』
たかだか刀身ほどの魔力だというのに凄まじいほどの火焔質量・・・
魔力の隙を埋める動作を覚えただけでこの進化―――。
「凄いけど・・・
センスなさ過ぎ!何よ、そのネーミング!」
「“ジュスト(正義の)ストッカーレ(突き)”て・・・
ダサすぎやろ・・・それにこれ、文法合うてんのか?」
「うっせーよ!」
合っていないかもしれない。
「キッド!前を見ろ!!」
「へ・・・・・・?って、うおっ・・・おおおおおっ!?」
巨大な魔物が後退すると同時に手だけの魔物が襲い来る!
「ビビッたけど、甘いぜ!!連続で潰すッ!」
刃に炎を纏わせ続け、連続で突き出し、
その一撃ごとに火炎の刃を放出し、襲い掛かる手を吹き飛ばしてゆく。
「らああああああああっっっ!!!!」
『ぎガッ!?グギュッッ!!』『ギュ!!』『なニッ!?』
ボ! ボ! ボ! ボボ! ボボボ! ボボ ボ! ボ!!!!!!
「す・・・ごい・・・!」
急所には当たらないものの、連続の刺突による火炎の刃で
敵の装甲やパーツが次々に削がれて行く。
「体積や質量が大きければ大きいほど、威力は高まるが、
それだけ魔力をその形に生成するのは時間がかかる。
キッドの武器である刀をその形成の媒介とすれば魔力を刃状にしやすい。
何らかの固形体にすることにより魔法でなくても魔力は威力を発揮する。
つまり極限まで生成スピードを高め、刃状にする事で火炎+突きのダメージ。
連続で撃てるのは、最低限の魔力で作っているから。
魔力の隙間もそれなりになくしているし、元より小型だから壊されることは無い。
ただ・・・・・・問題が1つ。」
ォオオオオォォ・・・・・・
『・・・・・・?』
「ハーッ・・・ハーッ・・・・・・」
必要以上の鍛錬を積めていないキッドでは腕への負担が大きすぎる。
『何ダ!?疲れテルぞ!!
まだ腕は残ってる!ナインティーン!!』
『ギィイイッ!!!』
「くっそっ!!ふざけんなっ!」
刀を襲い掛かるアームモンスターに向ける。
精神力を極限まで高め、集中し、火焔を高速で生み出す。そして、
「あ、アレって・・・!みんな下がってください!」
リノンが叫ぶと同時に紅き咆哮が大地を翔ける!
「フレイムバスターッ!!!」
『―――――――――!!!!!』
ドォッ!!!シュッッ!!!!
『な・・・ナインティーン!!』
完 全
「な・・・・・・何なんや・・・」
消 滅。
「超巨大火炎砲・・・・・・
とんでもない威力だ・・・一瞬にして塵にした・・・」
ザッ!
「どーしたよ、一体目もう撃破だぜ。」