ACT.113 ローテルダム危機/芯意
十数分後
総隊長分隊とコーデリア護衛隊合流
「姫さんら、連れてきたで。
2人とも軽ぅて助かったわ。」
お前、それは物凄く失礼な言い方だって。
「おばあちゃんは何と?」
「ここは任しとけ、て言うてはったわ。
せやけど、例のプリンセス・・・やとか言うのんの確定者と候補者がここに集まってしもーてええんか?
しかも、戦場へ連れ出すやなんて・・・
クリスティーナ姫はここにおる事はバレとらんやろうけど。」
「ユーリケイルに残してしまった方が危険だよ。」
ザッ。
「移動しながら、僕が推測した真相を話しますが、その前に隊長。」
「ああ。」
予定よりも急展開になったが、クライセントたちと合流できた。
どう考えても“彼”の手回しがあったからだ。
「俺に付いて来るのは第一大隊の第一及び第二中隊だ。
後はユーリケイル軍と共にこの国を守れ。指揮系統は三番隊隊長に任せる。」
即座に分隊し、命令通りに動いていく。
ローテルダム騎兵隊の中でも優秀といわれるのが第一大隊所属の第一中隊、第二中隊である。
彼らは総隊長直属の部隊であり、騎兵隊の象徴的存在だ。
隊長がいなくとも期待以上にやってくれる。
「よし、ソウジ君。こちらは大丈夫だ。」
「ハイ。」
「ちょっと待てよ!
ロックハートはどーすんだ!?」
そういえば、見当たらない。
クライセントたちと接触した事は知っているが、
まさかそのまま離れるとは思わなかった。
「恐らく、彼も僕と同じ事を考えている。
向こうに着くまでには会えるハズだ。」
「そうですわね。彼ならきっと気付くハズですわ。
それに念の為に国王様にその事を伝えておきましたし。
ですから、クリスティーナ姫。申し訳ありませんが・・・」
「構いません。ローテルダムが危機に晒されているというのなら、
私情を挟む事など出来ません。急ぎましょう。」
「これから話す事の首謀者を“対象”と言う事を最初に断っておくよ。」
そう前置いて、ソウジが推論を語る。
「・・・コーデリア姫の暗殺未遂事件。
アレは姫を殺そうとは全く思っていないものだったんだ。」
「「「?」」」
「現場を見たと思うけれど、
外部からの破壊、要人暗殺であるにもかかわらず下忍レベルの暗殺者・・・」
(あ、アレって下級だったんだ・・・)
(アンタ、結構必死っぽかったよね。)
それでも倒せたのなら大したものよね・・・
なんて素直なセリフは本人には言えない。
「そして、余りに早すぎる上に強引な理由での王位継承。
アレは全て、僕らを唯一この大陸で頼れるユーリケイルに向かわせる為だった。
そして、一件自然と思われるシンを始めとする閃迅組による追跡。」
?
―――その言い分は気になる。
「むぅう〜・・・?
アレっておかしいの?ソウジ様。」
「姫を殺すなり、連れ戻すなりする追跡作戦で
・・・一対一の勝負なんて、挑むと思いますか?」
「「「――――――!」」」
あ、と現場に居合わせた人間は全て声を上げた。
「あの時から、少しずつその疑念が生まれたよ・・・
しかし、あれはラゥムの意思ではないだろうね・・・」
つまり・・・シンの独断・・・・・・
「そう。恐らくシンは僕らを殺す気は無かった。
だが、それを悟られてしまっては、“対象”を罠にハメることが出来ない。
シンにはシンの考えがあり、それを乱されないためにキッド。
お前の刀を折って、ラゥム派が敵である事を強調したんだ。」
本気で来い、
でなければ全てが無意味なる―――と。
「じゃ、じゃあ。あの人は・・・」
「味方とは言いがたい。だが、ラゥム派への敵対遺志は確かだろう。
さて、僕らをユーリケイルに向かわせ、邪魔者をローテルダムから1つ追い払った。
次にラゥム派のユーリケイルへの出陣。それは僕らが予期していた事ではあったけれど、
世界情勢を考えれば愚行としか言いようが無い。それでも、出陣させた。
残るは隊長。あなた達です。確か、シンからトルレイトの情報を手に入れた、と。」
「ああ。
ローテルダムから最も近い接触ポイントで潰す事が出来た。」
「・・・そうして、全ての邪魔が消えた。」
「ちょっと待ってください。
それじゃ、シンは敵になるんじゃ?」
そうだ。
本部から全てに近いコーデリア派が消えてしまえば、ラゥムの思い通りになる。
だが、絶対な敵では無いとソウジは言い切る。
「・・・隊長、教えられたポイントはドコでしたか?」
「ドコって・・・
だからローテルダムから最も近い・・・あ・・・」
「「―――――――――!!」」
「そう・・・いつでもローテルダムに戻れる様にしておいたんですよ。
そして、さっきの撤退。あの時どうしてシンではなく、カイという男が来たのか。」
「ローテルダムを守る為に退いた・・・?」
来たのがカイだったのは、最も強いシンがいち早くローテルダムに戻る為に。
「そうです。ラゥム派の攻撃手順が妙だったのも、
命令が行き届いていないからではない・・・
シンが命令の情報操作をし、直ぐにローテルダムに戻れる様にする為だったんだ。」
ただ、第一波の後に戻ってしまっては“対象”に怪しまれてしまうから―――
その時期は本当の混乱が始まる今の他にない。
「その通りです。」
「それで・・・・・・やっぱ、その“対象”ってのは・・・」
「・・・・・・ラゥム・カー・ローテルダム・・・
あの男は、魔界にローテルダムを売るつもりだ。
あの男の本当の狙いはコーデリア姫では無い。ローテルダムそのものの崩壊だ。」