ACT.115 ローテルダム危機/白色の鬼


『どうしたのかな・・・・・・?今更ビビッた?』


ヴォンッ!!!


『――――――速!!!』

『唇眼使わないと、君すぐに死ぬよ???』

正に神速―――
神が与えた究極の移動―――。

『オオアアアアアッッッ!!!
 ふざけるナァッ!!!造反者がァッ!リップスアイ!!』

フードを取り払う。人間ならそこは口と言われる部位。

だが、この男は違う。その口にあたる部分を開く。
違う。そこにあるのは血走った1つの瞳。

『先から聞いていれば、ふざけた事ばかり!!!』

言葉を発するのは両掌にある口。

『でも、そうこなくっちゃ。殺し甲斐が無いよ。』

『リップスアイ!!瞳術、ミラージュ(蜃気楼)!!!』


ズォッッ!!!


『・・・・・・・・・』

視界が白み、次いで乱反射が起こりだす―――。

『唇眼族は人間や通常の魔族における瞳術使いとはあらゆる点で違う。
 単純に元来からある眼を使う瞳術は精神力と共に術の発動を乱発すれば、
 眼も開けていられなくなってくる。つまり視界がなくなり、危険に陥る。
 だが、我々誉れ高き唇眼族は口に第三の眼を仕込み、平時はそれを隠し力を抑え、
 更に発動を幾ら行っても元来の2つの瞳には何ら影響は出ず、戦い続ける事が出来る!』

『あぁ・・・そうなんだ。
 それでその瞳術の1つかな?コレが。』

『今の貴様には我が体がいくつにも連なり見得ているハズだ。』

『あぁ・・・そうなんだ。そんな感じで“本当は見えているんだね。”』



――――――――――――。



『何・・・・・・?』


チャキ・・・


『とんだ肩透かしだよ・・・・・・発動直前に眼を閉じて、
 念の為に菊姫の刃でその術を防いでみたんだけど・・・』

『―――?!』

なんてサラッと言ってのける。
だが、そんな事が出来たとて全く影響を受けないなんてありえない。

『瞳術使いの使う精神攻撃っていうのは、その瞳を相手に叩きつける事で効果を発揮する。
 一方的瞳術は爆破などの物理的破壊攻撃。
 でもそれは、自身にも多大な影響を及ぼす。
 知ってるかな・・・?瞳術って言うのはね、』


ザ               アァアアアッッ!!


『―――――――――ァ・・・・・・?』


ココロが崩壊するイメージ―――

        イメージする刃がココロに刺さり崩壊する様子

     次々に刺さり、穿つ刃


『ぐうううあああああ・・・・・・っ!』

『僕も一種の瞳術使いさ・・・
 殺気という名の最も純粋たる生命体にとって究極の眼・・・』

ドクンッ!!

『ガアッッ!!!』


     次々に刺さり、穿つ刃

  ココロが    アタマが     シンケイが潰れる

 すりつぶされて  切られて、 嬲られて     粉々にされる―――!


『もっと、空を仰ぐんだよ。クスクス。』


『うごっ!!がヒュッ!!!あぎゃああっ!!』

  どうして眼だけで        それだけで
 こんなにも痛い    凄まじい         痛みが―――?

『どうだい?苦しいだろう?こっちは嬉しくて仕方が無いね!
 また1匹、俗悪なる存在を殺せるんだから。ほらァッ!!
 お前らに食われる人間はこんな感じで死んでいくんだ!これでも温いくらいだね!!』


バギッ!!!ゴスッ!!


『が・・・・・・』

ようやく本当の痛み―――

『何を勝手に気を失いかけてるんだ?』

『うあ・・・・・・!』

胸倉を掴み上げ、笑顔で語りかける。

『君にはそれなりに働いてもらったからね、特別に白刃流奥義で殺してあげるよ。』

胸倉を放し、斬り上げる。

『うああっっ!!!ああああっ!!!』

『そう、その声だよ。
 人間が君たちに喰われる時の悲痛な叫びって言うのは。
 さぁ、最後の時間だ。思いっきり叫んで死ぬんだね!!!』




キィ――――――――――――・・・・・・・・・ンッ!!!



『――――――――――――!!』

『白刃流奥義・・・』


『―――――――――ァ
 ああああああアアアアアアアッッ!!!!』




ホウ ジン  セン   ガ   リュウ セン ザン
鳳 刃 千 臥 劉 閃 斬 。