ACT.116 ローテルダム危機/遺したもの


同刻

「――――――!?」

「?どーしたのよ。」

「いや・・・何かスッゲー強い力が・・・」

かなり遠いがそれでもキッドはそれを感じ取った。
人間の気迫なんてものじゃない。

「・・・僕も感じた。
 物凄い覇気と殺気・・・只者の出せるモノじゃない。」

「何やそら・・・せやけど・・・」



カカッ カカッ カカッ カカッ!



「コレでホンマに隊で一番速いクラスの馬なんか?」

「ああ、そうだよ、コレでも俺の愛馬だ!悪かったな!
 というか、横で自力で走りながら嫌味ったらしく言うな!」

((さ、さすが忍者・・・))

(一晩で山二つ越えるって言うのは本当なんだな・・・)

ちなみに途中で合流した別部隊の馬を借りて移動中である。
ってか、取り乱してるクライセントを誰か止めろ。

「つーか、もっとすげぇのって・・・」

「?私に・・・何か?」

(姫様を背負って走ってるリカードさんはどうよ!?)

(に、忍者って色んなトコロで凄いですね・・・)

リノンが言いたい色んなトコの大半が美人だという点だと思う。

「クソッ!
 どんなに速くても1日半はかかってしまうぞ!」

「メノウさん、移動魔法はどうです?」

「この人数を運ぶにはそれ相応の魔方陣を作らなければなりませんし、
 恐らく今のローテルダムにはそれに対しての対抗魔法がかけられているハズです。
 私とリノンさんで協力してもリスクが大きいだけですわ。」

そのリスクとは例えば、
対移動魔法壁に衝突し四散したりとか・・・そういう事である。

「んー・・・・・・
 そーいや、魔人の奴らが逃げる時に消えてっけど、アレもッスか?」

「アレは魔道よ、魔道。魔族には魔道を開く力が備わってて、
 自分サイズの道を開いて消えてるってワケ。魔法じゃないわよ。」

「そうなのかよ・・・・・・」

「魔力を込めるだけで効果を発揮するアクセサリーなら、
 個人個人で移動出来ますけど・・・あんな高価なモノは普通は・・・」

「チッ・・・無理か・・・」


カカッ!


「なんとしてでも早く!」








十数分後 ユーリケイル城

「やはり、ローテルダムに。」

「タイミングが悪かったねぇ。
 でも、説明する手間が省けてよかったさね。」

「・・・・・・・・・」

ロックハートたちも一秒でも早くローテルダムに向かいたかったが、
最新の情報を手に入れる為にはここに戻る他なかった。

「ロックハート。」

「・・・何でしょうか・・・」

「・・・君がこの国を去ってしまって、渡せなかった物がある。」

「――――――・・・!」

小さな宝石の付いたネックレス―――。

「・・・アリス・・・旧国麗兵団アリス・エルハイム中佐の唯一の遺品だ。
 今更、君を苦しめる事は分かってはいる。
 だが、コレを持つ者は君しかいない。」

「・・・そうか・・・・・・」

(ロックハートさん・・・・・・)

「あの時の違和感・・・・・
 せっかく贈ったのに“勿体無い”と言ったが・・・
 付けていなかったんだな・・・・・・」

ぐっ。

「・・・・・・感謝します・・・・・・“父上”。」

「!―――――――――。」

「・・・ヴィンセントのこと・・・宜しくお願いします。」


ザッ―――


「行こう。時間が・・・ない。」