ACT.117 ローテルダム危機/トモダチ
夕刻
ユーリケイル〜ローテルダム道中 臨時宿営地
「やっと、ローテルダムの領土に入れたが・・・
ここからが正念場だな・・・ソウジ君。」
「ええ・・・そうですね。」
もっとも、大分前から入ってはいたのだが、
ローテルダム城の守備範囲に近付いたという意味である。
「・・・・・・・・・」
「・・・隊長・・・・・・?」
「・・・すまない・・・・・・君が何の為に剣を振るっているのか、
痛い程、分かっている・・・・・・すまない・・・あの時、」
「あなたの所為じゃありません。」
ザッ・・・
「殺した存在が全て悪なんですよ。
守れたとか、守れないとかそんな事ではなく・・・略奪者が悪なんです。」
「――――――ソウジ君・・・・・・君は・・・!」
その道だけは駄目だ―――と、言いかけるが言えない。
そんな無責任な言葉を吐くことなど出来ない。
「・・・あなたの事を怨む理由なんてどこにもありません。
あなたが姉さんのことで悔やむ意味も今となってはもうない。
これは“僕ら”が背負い、やっていけばいい事なんですよ・・・」
「そうなんですか・・・
ロックハート君ってそんなに・・・」
「はい。誰からも信頼されていました。父も同じ様に。」
「コウニンの仲とかー?」
分かってて聞くのは酷いイジメだと思う。
「そ、そんな訳じゃないけれど・・・」
(よくよく考えれば、
ここに居る2人ってお姫様なんだよね・・・アハハ。)
プラス、美人で魔術センス抜群のお姉様までいるとなれば、立場がないリノンさん。
まぁ、ここでそのお姉様が会話に参加していないだけマシかもしれない。
「けれど・・・
もし、あのまま何も狂わずに時間が進んでいれば・・・」
「・・・・・・大好きオーラが出てますね。」
「そ、そんなの出てますか?!」
「「そりゃもう遠い眼しながらかなり。」」
あと一歩で実体化かもしれない。
「・・・・・・好きですよ・・・好きだと思える初めての人です。
みんなよく言うんです・・・ロックハートは冷たいって・・・
でもそんなの嘘・・・彼の事を全然分かっていないからそんな事が言えるだけで、
あの人は誰よりも人の命を重く感じていて、誰よりも優しくて・・・だから・・・」
ぽたっ・・・
「かつての・・・ッ・・・仲間だった人達を・・・
斬らなければならなかった時の・・・私を助ける為に斬った時の・・・
彼の気持ちを考えたら・・・」
苦しくて・・・辛くて・・・
痛くて・・・哀しくて・・・
全てが無力に思えて――――――。
「クリスティーナ姫・・・」
「それに・・・
今もソーライトの人達は苦しんでいて・・・私だけ、こんな・・・」
「・・・それは違うと思う。」
「・・・リノンさん・・・」
「うん、あなたが今、守られているのが
彼らへの裏切りだと思うなんて・・・それは違うわ。大きな間違い。」
絶対にそうだと断言できる。
「だって、あなたが死んでしまうことこそ、ソーライトにとって一番悲しい事で・・・
あなたが帰ってくる事がソーライトにとっての希望だと思う・・・
辛いけれど、苦しいけれど、その先には必ずソーライトにも光が戻ると思うよ。
じゃなくて・・・思います。」
「―――――――――ありがとう・・・・・・
あの・・・リノンさん。」
「何ですか?」
「その・・・私・・・
同い年ぐらいの人に余り知り合いが居ないというか・・・その・・・
敬語じゃなくて・・・タメ口で喋ってくれませんか?」
「友達・・・・・・」
そういえば―――
「はい。」
ほんの少し前まで、もっと多くのそういえる人たちに囲まれていた。
「・・・うん・・・・・・私も・・・そうしたかった。
私も・・・たくさん亡くしちゃったから・・・凄く寂しかったんだ・・・
私でよかったら。ヨロシクね、“クリス”。」
「はい。こちらこそ、“リノン”。」
「ね、ねね。コーディも、タメ口がいーなー。
様付け飽きちゃったっ。ソウジ様は別だけど☆」
「「飽きるものなんだ・・・」」
「ケッコー飽きるよ。
その場のノリで言っちゃうんだけどー、ソウジ様だけは別格になっちゃったんだー。」
「何や、賑やかやなァ。」
「リノンは喋ったヤツとは大抵、友達になるからな。
でも、姫様と友達って・・・度胸のあるヤツ・・・」
「でも、“そんなオメーが好きなんだ、リノン。”やろ?」
「また、テメー、俺の声真似しやがって!
前、授業中にもそれやっただろ!」
数学の時間に唐突に告白させられたりした事があったり。
その後、3日間はイジられっぱなしだったが、
結局、このエセ忍者の犯行だという事が発覚し、
キッドではなくリノンの強烈な魔法を浴びせられていた。
「(あー、アレは痛かった。)
そんなん覚えとらんわ〜。寝ぼけてお前が言うたんちゃうんか?」
「言ってねぇよ!つーか、言わねェよ!」
「さよか・・・
(ホンマ・・・・・・ガキやな。)」
ザッ。
「なんだよお前・・・ってか、どっか行くのか?」
「ちょっとだけ散歩や。」