ACT.118 ローテルダム危機/傍


見張り台

「今、里のバッシュが来た。
 ローテルダムに150、ユーリケイルに200送ると、父上が英断して下さった。」

「そか、お頭に感謝せーへんとなァ。」

リカードは現頭首の娘、ブラッドは現頭首の妹の息子である。
故にリカードは本家、ブラッドは分家となり男子ではあるが、
ブラッドは第二位の継承権を持つ。

「・・・・・・アレを使ったのか・・・」

「・・・あ、バレてもーた?まぁ、あと2回は大丈夫やし」

「ッ!」


ガしッ!


「本当に“使うべきとき”だったのか!?ブラッド!」

「・・・パンデモニウムっちゅう最悪な呪いの魔法を使われかけたんや。
 アレを喰らったら、大抵の人間は腐って死ぬ。しゃーなかったんや。」

詠唱自体にすら呪いの効果があるとさえ言われる死の魔法。
その分、術者への反動も大きいが、何より撃たれては確実に終わっていた。

「・・・・・・ったく・・・・・・取り敢えず、紋章だけ消しておく。
 その眼で話していたら、他が見たら不思議がるからね。」

「・・・もうちょい、女らしい喋り方せぇや。せやから、総隊長に」


ガ シッ!


「―――――――――。」

禁 句 。

「じょ、ジョーダンや。ハイ。」

「・・・――――――無遁・消架煉・・・」

左目の黒い物質が消える。

「・・・スマンな・・・」

「全く・・・
 コレで私が使う事が出来なくなってしまった。」

「・・・・・・まぁ、世話になった手前、余り言われへんけどや・・・」

「・・・・・・・・・何だ・・・
 ・・・っ!」


ブラッドが睨んでいる―――
殺気と怒気の混合―――


「リカード・・・お前・・・何、私情挟んでんねん。」

「!」

「お前はコーデリア姫の近衛や。絶対に傍について守る存在やろ。
 それを何や?ただでさえしんどい立場のソウジさんにその役目押し付けて、
 引退したハズのメノウさんまで担ぎ出して、自分は好きな男の傍で戦うか!?」


                   ぐっ!


「――――――っ・・・・・・!」

相手が女だろうが、これは従姉弟であり、いずれ自分の上に立つ女。
手加減などしない。胸倉を掴むだけで済んでいるだけマシだ。

「半年近く見−へん間に、忍としての何たるかを忘れてるんとちゃうか?
 総隊長の傍にはメノウさんを置いとけばエエやろ。
 あの人の方が騎兵隊の行動基準をよう分かってるしな。」

「・・・・・・私は・・・・・・」

「お前は・・・・・・俺と違って才能があるんや・・・次期頭首かてお前がなるべきや。
 そのお前が、何を考えてんねん。女の感情を捨てろとは言わんし、言えへん。
 せやけどな・・・そないな遊びは全部終わってからにしろや。」

「あ・・・遊びだと!?ふざけるなっ!!」

ガッ!!

「私は!」

「・・・・・・今のお前に否定出来るんか・・・?言い方は悪いけどな・・・
 カエデさんが死んでから、やっと自分の想いを伝えられる思うてるみたいやけど・・・
 今の中途半端なお前がカエデさんには勝とうやなんて片腹痛いわ!!!」

その言葉は全て

「―――――――――ッ!!」

全て、真実―――。

「コレが2つ目のお頭からの命や。」

「父が・・・!?」

「あの人は・・・何でもお見通しやで。総隊長もな。
 もうちょい・・・頑張れや。そうしたら、ちゃんと見てくれるんちゃうか?
 アホな奸計せんでも、ちゃんとした眼を持ってる人やったらな。そう云う人やろ?」

「・・・・・・・・・」

「・・・まぁ、今はとにかく姫さんの傍に居たりーや。
 姫さんはお前を一番に慕ってるんやからな。
 寂しぃてしゃーなかったハズやで?」

「・・・すまない・・・私はどうかしていた・・・」

「交代や。後は任しとき。」