ACT.12 蒼空の刻印
翌日 ビサイド近郊
「覇ァッッ!!!」
『―――――――――――――!』
カッ!!
「ちょっとー・・・バカ力出しすぎ。」
ボランティア的に魔物の退治を行なっている。
治安維持を司る騎兵隊に協力する市民団体と言うのはどの町にもある。
学生が買って出る事もままあり、珍しいことでは無い。
「そりゃ、分かってっけど、加減が難しいんだよなぁ。」
少しでも力を入れすぎると爆発的に大きくなってしまう。
かと言って、その逆では精神力を無駄に削る・・・
「もうちょいで上手くいけると思うけど・・・どーも、“炎”って奴のイメージが・・・」
「んー・・・じゃあ、私がファイアでも使うからそれ見て、イメージ膨らましたら?
魔法っぽいトコあるし、要は形を掴めば扱えそうだし。」
ボウッ!!
「ハイ、大体こんな感じね。」
「・・・詠唱省略でよく出来るな・・・」
「最下級魔法ぐらい出来て当然でしょ。私、上級でも詠唱省略できるし。」
「ヘイヘイ・・・どーせ俺は何でも詠唱しなきゃ出来ませんよ。」
「ほら、さっさと真似してみて。」
「んーと・・・・・・」
燃える炎の流動する形を目に焼き付けていく。
少しずつ、体の中の自分のものとは違う魔力がその形を成していくような気がする。
「こうか!!」
指を鳴らす!これをする事で発動出来る事を知った。
「出ろ、炎!」
ボウッ!
「!凄い・・・一発で無駄なく出せたじゃない・・・」
「ああ。お前のお陰だな。本物見れば結構、楽みてぇだな。」
赤々と燃える炎。それが・・・
「「え・・??」」
かき消される―――魔力の炎が普通の風に消される事は殆ど無い。
魔力に対しては魔力でなければ効果は殆ど無い―――
「何で消えて・・・」
『・・・消したの俺だ。そして・・・
その程度なら、人に言われようが言われまいが出来る様になる・・・』
風・・・・・・そして・・・
「「え・・・・・・?」」
『・・・お前が力を使ってくれたお陰で、速く見つける事が出来た。』
タン・・・ッ
「な・・・何だよ・・・お前・・・」
「空から・・・降りてきた・・・?」
緑色の髪に緑色の瞳、そして刀を帯びた世間一般で言う二枚目が眼の前に現れた。
(ホントに・・・カッコいいけど・・・)
『・・・右手に“紅の刻印”・・・間違いないな。
最初に力を感じたのは2日前・・・思ったより、刻印が侵攻してないのは
この辺であったという魔物の襲撃を“正しき使い方”で蹴散らしたからか・・・』
「あ・・・“紅いしるし”を知ってる・・・?」
「何でお前が・・・そんな事・・・」
『(・・・女友達か・・・面倒だが、仕方ない。)
どうやら、力について余り知らないようだな。その方がやりやすい・・・
・・・どうしてお前が“紅の刻印”を持っているのかは知らんが・・・
その刻印は殺させてもらうぞ。抵抗すれば、お前も斬る。』
抜刀の構え―――
「は・・・・・・はぁ!?何言ってんだお前!?」
全く訳が分からない。
この男が刻印を知っている事も、何故斬ると言われるのかも。
『お前の為を思っても言っている。そいつは俺のとは違い扱いにくい。
殺すと言っても体に直接の痛みはない。が、精神ダメージは覚悟しておけ。
その龍は精神エネルギーの一種だからな。直結している術者にも多少の痛みは出る。』
「わ・・・訳の分からないこと言わないでよ!?突然現れて、斬るとか何よ!?
(顔が極端にいいのに限って性格最悪なんだから!)」
↑ソウジは別。キッドは論外らしい。
『・・・・・・・・・』
ォぉんっっ!!!
「ぁっっ!?これは・・・っ!」
「リ、リノン!?」
緑色の輪がリノンの手足を束縛する―――
『・・・魔力の縄だ。30分もすれば解ける。
余り、女にこんな事はしたくないが、直接見せるのはもっと嫌だからな。』
「テメェ・・・・・・ブッ殺されてぇのか・・・!?」
『・・・大人しく従っておけ。お前が殺されるぞ。』
「待って、キッド・・・・・・ハッ!!!」
パンッ!!
『!(瞬時に解いたのか・・・!?)』
「自慢じゃないけど、私・・・これでもビサイド高等学校開校以来の天才なのよ。」
『・・・・・・まぁ、いい。』
ドォッッ!!!!
「な・・・何だ・・・!?人間の魔力じゃねぇ・・・」
「キッドのそれと同じぐらいに強力な魔力・・・」
緑髪の少年から流れ出る緑がかった魔力―――!!
コレがさっき、炎を消した原因―――・・・!
『・・・同等で当然・・・
俺もお前の“紅の刻印”と同等の力“蒼空の刻印”を持つ者だ・・・』
「な・・・に・・・?」
『名をこれ以上、偽るつもりはないから名乗っておく。
俺の名は“ロックハート・クラウン”。刻印を殺す為に戦っている。』
「「!?」」
『つまり、お前の持つ刻印を殺す、と言う訳だ。』