ACT.13 緑髪の剣士
「刻印を・・・」
「殺す・・・?」
意味が掴めない。
刻印を消すという事なのだろうか。
『・・・消すのでは無い。刻印とは強大な精神エネルギー体となった存在だ。
故に刻印は刻印でしか殺す事は出来ない。
人間は人間を殺せるが、人間を殺しただけでは刻印は殺せない。
だから、俺の刻印の力で殺す。それが魔を葬るデーモンバスターである俺の役目。』
「デ・・・デーモンバスター・・・」
「北の国一般的な・・・魔物と戦う事を専門とする騎兵隊の1つ・・・」
『目の前にある以上、“紅の刻印”は殺さなければならない。
その力を含め、全ての刻印は世界そのものを破壊しかねない力だからな・・・』
チャキッ・・・
『大人しく、差し出せ。血が流れる訳でもない。合理的だ。』
「イヤだ。」
『分からないのか?お前の持つその力が・・・』
構える鞘ごとに風が撒きついていく。
『どれ程強大で凶悪なのかを・・・』
「うるせぇっつってんだよ・・・」
『・・・まだ事の重大さが分からないのか・・・?』
さらに風が勢いを増し、一体の気流を支配する―――!
「・・・おいコラ。テメェのやった事は棚に上げんのか?リノンに魔法を使いやがって。」
(キッド・・・)
『・・・それは悪かったな。だが、近しい者の血が舞うのを見て喜ぶ奴がいるか?』
「・・・やっぱ、俺を殺す気満々じゃねぇか。」
『それはお前の性格を分かっての事だ。必ず抵抗するだろうからな・・・』
「ブッ飛ばす・・・」
『誰をだ?』
「なッッ!(速ェッ!!!!)」
ギャガッッッ!!!
「ぐああっっ!!」
剣閃が見えなかった・・・!
それどころか、動きさえ分からなかった。
「キッド!!?」
『・・・大人しくやられた方がいい。
その刻印だけは人間に扱えるような代物ではない。』
何とか立てる・・・
「っ・・・年も変わらねぇボケに何でそこまで言われなきゃならねぇんだよ。
テメェだって、刻印を持ってるんだろーが!」
『分かってないな・・・それは破壊の力。俺の刻印に宿る風は守りの力だ。
お前の持つ破壊の力は己が身をも滅ぼす諸刃の剣・・・』
「知らねぇよ・・・貰っちまったモンは仕方がねぇんだ。
破壊だろうが・・・俺は守る為にこの力を使う。」
『・・・口では容易いが・・・お前はいずれ、その龍に己を飲み込まれるぞ。
その刻印を消す為には、龍を飽きさせる他ない。その為には戦う他ない。
だが、戦えば戦うほど、その力に飲み込まれていく・・・
どう見てもお前にはその力に抗する精神力が有るとは到底思えない。加えて弱い。』
再び一閃!
「がはっっ!!(風の・・・塊・・・っ!)」
ドサァ・・・ッ!
『だが、ここで大人しく殺しておけば、
お前は平静のまま血みどろの戦いに巻き込まれずに済む。だから・・・!』
「止めて・・・・・・」
リノンが立ちふさがり、剣士の動きを止める。
『・・・・・・そいつを殺すとは言っていないだろう。』
「それでも嫌よ。」
「バカ・・・リノン・・・前に出るな・・・ッ!」
『・・・・・・最終的に龍の力に飲み込まれた時、君は殺されるぞ。
飲み込まれれば、その者は死ぬまで何かを殺し続ける。
人間であった時の記憶など忘れてな・・・そして、その身は消滅する。』
「キッドは強いわ・・・絶対に飲み込まれたりしない。」
『その言葉の何処に確証が、根拠がある?それに君には耐えられるのか?
そんな姿になった時の事を。人を殺す姿を、そして』
「キッドを誰よりも一番長く見てきた私が言うんだから・・・間違いない。
あなたは何も知らないのにどうして、弱いとか言えるの!?」
『・・・・・・・・・』
チャキ。
『・・・今日は止めだ。暫くは様子を見る事にしよう。
だが、無理だと判断したその時は殺す。
抵抗すれば、お前も君も、共に死ぬ事になる。覚えておけよ。』
「偉そうに・・・・・・」
『・・・言われたくなければ、強くなるんだな・・・
心が弱った時、そのときが最も危険である事を留めておけ・・・命拾いしたな、火龍。』
フッ・・・
「・・・・・・消えちゃった・・・」
と言っても、風の力で高速移動したのだろう。
魔法の瞬間移動術ではなかった、とリノンは判断する。
「絶対・・・・・・今度会ったら見返して・・・・・・
龍を俺の守る為の力に使ってやる。絶対にな・・・」
「・・・無理だけはしないでよね。あんなこと言った手前なんだから・・・」
「・・・リノン・・・」
「な・・・何よ。」
↑ちょっと照れる人。
「・・・ありがとな。お前の一言で、頑張る気持ちが強くなったぜ。」
「・・・・・・ま、この私が保護者してあげるから、安心しても」
「んだと!?テメェ!」
「何よー!『キッド(子供)』なんだから、言われたって仕方ないでしょ!?」
刻印を破壊する者・・・そしてデーモンバスターのロックハート・クラウン・・・
この時はまだ、アイツが何者で・・・本当の目的が何だったのか
俺達は知る訳もなかった・・・