ACT.120 ローテルダム危機/判断


翌朝 出発3時間後
「あ・・・!城だ!」

「やっと着いたな。望遠鏡を。」

覗いてみるが、変わった様子は無い。
平和そのものに見える。

「・・・・・・これは・・・どうなっている。」

「まさか、僕達の行動を察して撤回した・・・?」

「あれは幻術魔法です。
 あの程度でこの私を騙そうなんて、ホントなめられてるわ。」

と、リノンがサラッと言ってのける。

「「「え・・・・・・?」」」

言ってのけてくれるが、一般人には全く分からない。
メノウでさえその違和感を感じただけだった。

「アレって、予め手に入れておいた、
 “いつもの城下町”の映像を記録魔法によって完全に記憶し、
 それを城下町の周囲に映写魔法で映し出してるのよ。」

「!じゃ、じゃあ・・・・・・」

既に“始まっている”という事―――。

「・・・・・・この感じですと
 魔法の効果が発動してから30分〜1時間程度・・・ですわね・・・」

「遅かったか!
 だが、シンがもし本当にローテルダムを守るつもりならば。」

「ええ。
 率いた部隊を使って何とかしているハズです。急ぎましょう。」




同刻
『カイ、状況はどうなってる?』

『何とか民は救い出せてはいますが、やはり厳しいですぞ。
 既に死者が10名、負傷者も多数。魔物は西の丘に出来た魔道から、むっ!』

 “ギルアアアアッッッ!!!”

『いいよ。僕が斬る。』



        ザンッ!!



“―――――――――ァァッ!!”

『面倒だね。チュージ!
 君はそこの20人を連れて、南地区を少しずつ解放していってくれないか?』

『了解。聞いた通り、行くぞ!』


                     だだだっ!


『やっぱり、直接言っちゃった方が良かったかな。』

『しかし、それではヘーハンを通じてあの男に。』

『だから、私がワザと捕まってあげたんじゃない。
 それもシンちゃんの案。間違ってなんかないよ。』

『だといいけどね・・・・・・来たよ。』


““ギギ・・・・・・””


『さぁて・・・・・・ショータイムの始まりだね。殺すよ。』






ほぼ同刻 ロックハート分隊

「お前達は第一大隊のか?。」

「良かった。
 総隊長に命じられて、あなた方が来るのを待っておりました。
 ローテルダムは既に襲撃を受けているとの事です!」

「チッ・・・・・・」

「我々はこれより、ロックハートさんの指揮下に入ります。そう命じられております。」

「・・・・・・いや。俺とリサさんは先に行く。クロード。
 お前のお陰でかなり助かった。俺の代わりにこの小隊を率いて、追走してくれ。」

右手の刻印に力が込められて行く。

「・・・その凄い魔力で飛んで行くって感じだね。
 でも、どうして今までまともにそう云う使い方をしなかったんだい?」

「重力に逆らう程の魔力を使うのは、精神力を多いに削るんでな。
 だが、今はそうも言ってられないし、距離的には可能だ。
 だが、俺とリサさんの体重を支えるぐらいが限度・・・」


ザッ。


「スマンな。お前の力は非常に惜しいが」

「フ・・・僕は気にしていないさ。というよりも当然の判断だね。」

そう、この小隊をクロードが担当するのは当然の判断である――――――。

「クロードさん。気をつけて。」

「フッ・・・・・・この僕が負けるなどという事は有り得ませんよ。
 リサさん。さぁ、行きたまえ。ここは任された。」

「・・・・・・シルフィード、ウインド。」



ゴッッ!!!



「・・・・・・さて・・・魔界の諸君。
 汚らわしい君達は僕が粉砕してあげよう。」

当然の判断であり、担当―――というのはそいつらを倒す役目ということ。
ここにロックハートら3人以外に純粋な人間など誰一人いない。

“くクッ・・・一人でどうにか出来るかよ・・・?”

人間の身体をしていた者達が、流動体の透明な魔物に変わる。

“こっちは10人だぜ・・・・・・?”

「・・・全く関係ないね。死にたまえ。」