ACT.123 ローテルダム危機/微笑
『どうした・・・・・・?震えているな・・・・・・』
「・・・震えるさ・・・・・・」
ニ ヤァアァ・・・・・・ッ!
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!
やっと会えたんだからな!!!!クク、アハハハッ!!!」
この姿を、先輩と呼び慕う彼が見たらどう思うだろう―――。
「嬉しくて、気が狂いそうだよ!!」
その幼馴染はどんな想いで見るだろう。
「やっと念願が・・・!
嬉しいよ、カヴィス・・・やっとお前を殺せる。」
『ククッ。魔族よか厭な笑顔だ・・・・・・』
それは事実―――
端正な顔はその笑顔で面影を失っている。
『そういうの、俺は好きだぜ?』
「・・・・・・ほんの少し前、2年前・・・新聖暦2588年。」
『ん・・・・・・?
――――――――――――!!』
ソウジの体が完全に消える。
『何処だ・・・・・・・・・』
「雨の降る10月17日。」
『―――!チッ!!(体がまだ重い。)』
ザ がッッ!!
「殆どの葉が紅葉という名の血染めを終えた時に。」
無理矢理、斬り上げる。
『フッ!!ぐ!!』
更に押し上げ、鬼から一撃も出さずに打ち上げる!
「一人の女性が戦争で殺された。」
『ぐっ!!おっ!!!』
「誰にだ?」
カヴィスを叩き
落す。
『がっ・・・!!!』
「・・・・・・鬼にだ。
どうして分かる?傷だ。鬼族特有の爪。
その爪でまだ18のその女性は死んだ。」
ドガ! アアッッ!!!!
『――――――――――――!!!!』
鮮血は噴水の如く、
振るう刃は鬼の如く、
振るう青年こそが血染めの鬼の如く―――迫る―――。
「無残に斬り割かれたその姿は正に紅葉と同じだった。
白い肌が紅色に染まっていた。」
『ゴボッ・・・・・・』
「やっと会えたな・・・姉さんの仇。
姉さんと同じ様に髪を長く伸ばしたのは、仇を炙り出す為・・・
見た目は似ている方だったから、食いつくと思ってな・・・
そして・・・王位継承に関する会議で貴様に初めて会った時のあの動揺・・・
あの時確信してたよ・・・何かを知っていると・・・」
『アァ・・・・・・
驚いた・・・一瞬、殺した女に見えたからな・・・・・・』
「・・・・・・・・・」
チャキッ・・・
「何故・・・姉さんを殺した・・・
(内臓を狙って打ったのに・・・効いていない・・・)」
『・・・魔界にとってイムラ一族は脅威の存在だ・・・
神刀流を創始した時にそれが絶頂を迎えた。その時からだ・・・
イムラ一族を一人ずつ確実に狩って行くという計画(ゲーム)が始まったのは。』
与えたダメージは微々たるもの・・・
強靭すぎる鬼の肌は刃を通しても切れていないのと同じ・・・
「・・・・・・なら・・・
父さんと母さんを殺したのも・・・・・・」
『俺じゃねェ・・・が、魔人か何らかの種族の誰かだろうなァ。クックック。
その成果が実って今じゃ、ババア一人とテメェだ・・・
テメェさえ殺せば、正統血統は途絶える。後はババアが勝手に死ぬのを待つまでよ。』
「・・・・・・そうか・・・
なるほど・・・・・・一族の仇として討てば・・・」
『まぁ・・・そうだな。
責任者ってのは俺だからなァ。』
ヒュンッ!!!
『―――?!』
ギシ・・・っ!!
『は・・・(速いじゃねぇか・・・)』
「一族・・・?関係ないな。
僕は姉さんの仇を討つためだけにお前を殺す。
父や母が殺されたことなんて今はどうでも良い。」
『ハ、甘ェッ!!』
ガキッ!! ガキッ!!
「――――――!ッ・・・」
弾かれ後ずさる。
腕が痺れて一瞬動けない。
『その細腕でよく二刀流なんざ出来るなァ。
執念から生まれる力ってトコロか?小せぇな。テメェ・・・』
「何・・・っ!?」
『しゃしゃり出て来なけりゃ、あと数年は生きれたかも知れねェのによ。
もしかしたら、俺たちの計画が完遂していれば、天寿って奴を全う出来たかもな。
それが、下らねぇ感情に流されて、』
ドゴッ!!
「ごふっ!!
(速いッ!遅かったのは体が慣れていなかったから・・・っ!)」
ド・・・シャ。
「ぐ・・・」
『勝てもしねェ戦いに乗り込んでくるから、死ぬんだよ。
人間ってのは面倒だな。感情の起伏、それによる暴走・・・
魔物の本能的行動にも劣る反吐が出そうなオプションだ・・・』
「僕は・・・人間だからな・・・
感情によって動く・・・僕はお前が憎くて仕方がない。
殺したくて、潰したくて、消し去りたくて仕方がない。
これは当然の感情だ。ならば、それで以って殺すのもまた当然。」
『クックック・・・
開き直りやがって・・・まぁ、いい。』
爪が強大に鋭く伸びる。
『何処かの馬鹿が計画を多いにズラし、
加えて貴様自身にもそれだけの力があるというコトだ。それなりに相手をしてやるぜ。』
「・・・・・・殺す・・・・・・必ず。」