ACT.124 ローテルダム危機/闇にて葬る者



「おかしい。兵がいなさ過ぎるって!」

「ああ・・・ラゥム自身を守る為にそれなりに数を置いてあるハズ。
 この襲撃を仕組んだ者とラゥムが結託しているのなら、
 私達を妨害する為に戦闘を仕掛けて来るハズ。」

なのに、オマケ程度の妨害しかない。
誰かが既に倒した訳でもない。

「・・・なぁ、リカード。
 お前、閃迅組っちゅうんは知ってるんか?」


タンッ!


「確かに話には聞いていた。けれど何だ、そんな話は今。」

「関係あるから聞いてるんや。」

全員の動きが止まる。

「・・・シンっちゅうヤツが俺らに情報提供したってコトは、
 前々から少なからずそう云う行動を取ってるハズや。準備ってヤツやな。
 せやけど、ラゥムもそれを簡単に許すほどアホやない。つまり・・・」

「他にラゥム直属の部隊がいるとでも・・・!?」

「はぁ!?」「ワケ分かんないョ!」

と、自分たちの位置がバレバレな声を上げるバカとお姫様。

(この2人って発想だとか、結構似たり寄ったり。)

(だ、だね・・・)

「閃迅組っちゅうんが、表向きのラゥム直属部隊やとしたら。」



『やりますね。天真忍軍の方・・・』



「!」

          がキンッ!!

「ッおっ!」

簡単な投擲物。
本気ではなく、自分たちを気づかせる為だけのものか。

その投げてきた方向―――民家の屋根を見上げる・・・―――

「・・・・・・敵・・・!」

「・・・ローテルダムの軍服とは少々、違う仕様ですが・・・
 あの蛇の紋章・・・ラゥムのモノですわ。つまり、その手の者・・・」

『初めまして。そこまで分かられてしまっては、
 隠し立てする必要は無いというコトですね・・・』

10人前後の統一された軍服の集団の中心に居る男―――
黒いメガネをかけたそれが言う。

『我々は闇葬組(アンソウグミ)・・・』

と。

『あの方の新の直属特別編成部隊・・・
 あなた方にしてみれば裏の部隊です・・・』

「やっぱ、この襲撃はラゥムの野郎の仕業ってコトだな。」

キッドを始め、全員が一気に戦闘体勢に移る。
数の上では不利だが、刻印の力を利用すれば一気に逆転できる。

『・・・君がキッド・ベルビオス君ですね?
 私は闇葬組組長のアルベルト・ラライです。』

「名前を知られてるってー事は、俺も結構マークされてんだな。
 組長様自ら俺と戦ってみるかよ?」

いや―――戦ってただでは済まないのは分かっている。

けれど、このアルベルトと言う男を見た時から酷く気分が悪い。


どうしてだかは分からない。




どうしてだか




『スネイク・ベルビオスとのゲームは楽しかったですよ。』




――――――――――――?


「え・・・・・・な、なんだよ・・・ソレ・・・」

「キッド君。まだ、前には。」

「ゲームってどういう事・・・だよ・・・!?」

クライセントの静止は聞こえない。
他のソレも聞こえない。

『彼にはこんな傷を付けられましたね・・・
 腕一本やられる所でした。』

「おい・・・・・・コラ・・・テメェ・・・・・・」


まさか――――――。


「テメェ・・・・・・」


アルベルト以外の数人は笑顔を見せている。
お前の考えて居る通りだ、と。


「「まさか・・・・・・・・・」」



『スネイク・ベルビオスは私が殺しました。』



ダ         ンッッ!!!!



「らああああああああああああっっっ!!!!」


「「キッド!!」」
「キッドさんっ!!」


「嘘ついてるんじゃねぇっ!!!」


普通ではありえない跳躍―――
全ての魔力を込めて飛び立ち、一足で屋根の上に居る男に斬りかかる!


『遅いですね。』


その言葉通り、全ての斬撃を避けられる。


『全くもって、剣閃のクセが同じだ・・・』


ブオ            ンッッ!!


「なっ・・・!!!」

空振り―――そして、待つのは―――

『面倒です。早々に死んでください。』

「アホッ!!
 土遁、昇龍貫刃!!」


『おっ・・・!!』



ズ  !!   ガンッッ!!!



『・・・む・・・
 ・・・・・・一対一に横槍を入れるとは・・・・・・』

「何が一対一や・・・激高させてケンカ売って正々堂々とは言えへんやろ。
 キッド・・・落ち着け。まだ、アイツが言うてる事が本当かは分からんやろ。
 お前の言う通り、お前の親父さんは強い。敵がおるとしたら別や。」

「そ・・・そうだな。悪ィ。」

『・・・困りましたね・・・
 信じていただけないとは。しかし・・・』

『うんうん、面白いなぁ・・・・・・』

「・・・・・・?」

『一国の姫君が2人もお揃いとは・・・
 何かの舞踏会でも始まるのでしょうか?
 その変装からして、仮面舞踏会か何かでしょうかね・・・
 是非、私と一曲御相手して頂きたい。』

(―――な・・・!)

(クリスちゃん、バレてるョ!?)

『なるほど・・・・・・なるほど・・・任務変更ですよ。』

『『『ハッ。』』』

『ここまで事が進んでしまっては、黙る必要も無い。
 その二人を奪うのです。』