ACT.129 再会/白銀の姫


半日後 ローテルダム城

「状況報告であります。各地で死者・重傷者多数・・・
 現在は各国の支援が始まり、魔物の軍勢もほぼ全て撤退もしくは撃退に成功。
 その他の情報もここに記載してあります。」

「・・・・・・・・・そうか。
 リカード君、休み無しですまないな。」

「いえ・・・
 何もし切れずにここまでの被害を・・・ですから・・・」

それは皆が痛感している。
もっと早く、敵の真意に気付いていれば―――。

「今はこれからの事だ。
 そして・・・・・・ソウジ君。」

鬼の一族がラゥムに化けていた―――という話だ。

「はい。間違いありません・・・
 ただ、取り逃がしてしまいましたが。」

「いや、いい。
 それが分かっただけでもな・・・それより、君は大丈夫なのか?
 相当な怪我をしていたと聞いたが・・・」

大量の血を吐いたという風に訊いていたが、
とてもそう云う風には見えない。

「・・・・・大丈夫です。
 少々、強く打たれただけですから。」

笑顔で答えるものだから、
クライセントもそれ以上の追求は出来ない。

「でも、先輩にそれぐらいのダメージを当てる奴って・・・相当なんだな。」

「鬼って言えば、魔族の中でも物理的攻撃力が凄く高いんだったよね。
 でも良かった・・・ソウジさんが無事で。」

「僕はそんなにヤワな男じゃないよ。
 こう見えて、結構鍛えているからね。」

サラッと言ってのける。
確かに見た目ヒョロヒョロなのだが、
腕をまくってみるとかなりの筋肉質だったりするから驚きだ。

「・・・シンの野郎たちは?
 アイツはちょっとブッ飛ばさねぇと気が済まねぇ。
 分かり難いやり方しやがってよ!」

「あー、接触したで。一応、城下周辺におるんやと。
 いつでも依頼しに来てくださいっちゅーてたわ。
 写真通り、ホンマにこにこ君やな。」

「イキナリ味方面かよ・・・・・・」

かちゃ。

「お茶が入りましたわ。
 取り合えず、これで落ち着いてください。」







「・・・ユーリケイルはどーなったんスか?」

「あ、あぁ。
 向こうも落ち着いたようだが、詳しい状況は今確かめる所だ。」

リカードが持ってきてくれた報告書に目を通す。

「―――――――――・・・な・・・・・・!」

「どうしました・・・?」

クライセントが止まっている。
その内容は――――――



「・・・トルレイト軍、全滅・・・
 さらに魔族侵攻を1時間足らずで撃退・・・だと・・・?」



「「「なぁっ!?」」」

「凄いとかじゃないョ!超凄いョ!」

敵勢の総数が全くつかめないのにその時間で倒せる訳が無い。
いくらローテルダムや周辺各国からの救援があったとて、
簡単に間に合う訳もましてや全滅など出来る訳が無い。

「・・・リカード君・・・
 今の天真忍軍でそれをしようとしたら、出来ると思うか?」

「・・・ユーリケイルに攻めて来た分のトルレイト軍を全滅させる事なら、
 今回派遣された200名前後でも上級技の連続使用ならば可能だと思います・・・
 ・・・しかし・・・そんな事は不可能に近い・・・」

「・・・魔物がおったら、まず無理や・・・
 て、隊長さん、続き書いてるで。」

「あ、本当だ・・・」

その続きがまた、とんでもない内容だった。


「・・・・・・所属不明の男とトルレイト軍人と思わしき女が、
 圧倒的な剣術と強力な魔力を放つ兵器で一掃・・・?」


「な・・・何だそりゃ。」

とんでもないというより意味分からん。

「っていうか・・・・・・」

「どうして、トルレイトの兵士が味方に・・・?」

リノンの言う通り、問題はそこだ。
離反したのだろうが、最大の問題はその女と、所属不明の男による大逆転勝利。
どれほどの戦力を有しているのか想像もつかない。

「・・・それ以外は書いていない。
 もしこの事実が本当だとしたら・・・」

「僕らやシン一派、トルレイト、魔界・・・
 それらとは別の勢力が介入してきている・・・?」

「別の・・・・・・」

「・・・勢力・・・」


そんな中、コンコン。というノック。


「あの、失礼します。」

「ん?ああ、構わないが・・・」



ガチャ。



「えっと・・・?君は誰かな?」

部屋に入ってきたのはトルレイトでは無い軍服を纏った大人しそうな女性。

「失礼します。
 私はソーライト王国騎兵・・・・・・・・・―――――――――。」


そう言いかけて―――止まった。

いや―――動き出した。ようやく、動き出したのだ。


「リ・・・・・・サ・・・・・・さん・・・?」



この場に居たクリスティーナの時もまた―――



「どうしましたか、リサさん・・・」



扉の向こうから現れた緑髪に緑色の瞳の少年を見て、本当に動き出した。



「・・・・・・あ・・・ぁ・・・・・・」


「・・・・・・クリス・・・ティーナ・・・・・」



彼が見たのは部屋の中にいる1人の少女。

白銀色の髪の少女――― 

半年間、探し続けていたその人―――



「・・・ロ・・・・・・ロック・・・・・・」



この時、ようやく2人の時は動き出した。