ACT.130 時間
ローテルダム城 中庭
「・・・話はある程度聞いた。
ワームホールが開いた先が天真忍軍の里だったんだな。」
「・・・うん・・・その後はずっと、あそこに匿われてた。
私があそこに着いて直ぐに事のあらましを伝えて、
忍軍の人が調査に向かったけど・・・」
ソーライト城は無残な姿に成り果て、
その余波で近隣の町は荒れ放題になっていたと言う。
「・・・俺とリサさんは、この事件の首謀者がヒルダンテスである事を、
詳細に書き記した書類を城に残して早々に立ち去った。」
ヒルダンテスという男が絡んでいる事だけは
全世界に知らさねばならなかった。だが、
「心苦しかったが、俺達があの場で行動していれば確実に重要参考人として、
捕らえられ、お前を探す所ではなくなっていたからな・・・」
「話じゃ、リサさんは死亡って形になってたけど・・・・・・
やっぱり無事だったんだね・・・ホントに・・・良かった・・・」
「あくまで追わせる相手を俺だけにする為に、ワザとそう云う痕跡を残した。
お陰で、彼女の周りに不審な影は現れなかった。」
「・・・そうだったんだ・・・
・・・・・・デーモンバスター隊の事だけど・・・」
「・・・・・・気にするな。
俺は全てを覚悟の上でソーライトに仕えていた。
奴らも同じ・・・道を決めた奴らもそれを覚悟の上でだ。
でなければ、軍人として失格だ――――――」
「それでも・・・・・・仲間を斬らなければならなかった
あなたの気持ちを考えたら・・・苦しくて・・・痛くて・・・・・・」
この人の
「――――――。」
涙だけは見たくない。
かつてユーリケイルで失った時の“あの再来”を怖れている訳では無い。
ただ、純粋にこの人のクリスの涙だけは見たくない。
「・・・お前が悔やむ必要など何もないし、
泣かなくて良いんだ、クリス。」
「!・・・うん・・・ありがとう。」
「いつも笑っていて欲しいとは言わんが、泣かれると困る。
俺は人の心の守り方というヤツは未だに良く分かっていないから余計にな・・・」
「あと、フツーに笑うのも下手だよね。」
「――――――それは・・・言うな。」
ローテルダム城 騎兵隊総隊長室
「改めまして、私はリサ・クランバートと申します。
ソーライト騎兵隊王族特務機関所属ですが、姫の侍従を承っております。
階級は中尉で大尉であるロックハートさんの直接の部下でもあります。」
(ロックハートが大尉って・・・クワ○ロかよ!)
(誰よ、それ。)
華麗にスルーしてください。
「ソウジ・イムラです。
前に聞いていましたが、協力者というのはあなたの事だったんですね。」
ちなみにこの場に居るのは
キッド、リノン、ソウジ、メノウ、コーデリアに加えサクだけである。
「はい。キッドさんと接触するまでは、
同行していましたが、私の存在は公には消滅しているので・・・」
「なるほど。
極力、その存在を秘匿にしつつ、情報提供などを・・・ですね。」
「はい。」
確かにロックハート一人での行動にしてはフットワークが良すぎた。
複数名の協力者がいるのは最初から考えていた事だが、
まさかたった二人での行動だったとは思わなかった。
「・・・少し話は変わりますが・・・
・・・やはり2人はお互いに。」
「はい・・・・・・
私たち侍従はみな、ロックハートさんの事を信頼していましたし、
彼ほどの人ならば、姫の御相手に相応しいと・・・
恐らく、国王もそう想っていらしたでしょう・・・その2人がやっと逢えた・・・
これほど・・・・・・嬉しい事はありません・・・っ。」
「・・・涙を拭いてください。」
スッ。
「す・・・すみません・・・」
(紳士だ・・・)
(ああ、紳士だな。)
(紳士ね。)
(さすが、ソウジ様だョ。キーちゃんには無理だね。)
(うっせーッスよ!
どーせ俺には出来ねーよ、チクショウ!)
お前がやると頭を怪我したんじゃないかと疑われるしな。
「っつーか・・・・・・あれ・・・?
さっきから、ビミョーに気になってんだけど。」
「何だ、キッド。」
「・・・メノウさんと・・・
リサさんってちょっと似てる様な・・・って。」
絵が無くてすみません。
「私とリサさんは遠い親戚ですよ。
私の母方の家系が小さな忍の里からで、
今日初めてお会いしましたけど、クランバート家はその本筋ですわ。」
「あの有名なメノウさんにお会いできて嬉しいです。」
「いえ、そんな・・・
私なんて中途半端な人間の事をそんな風に仰らないで下さい。
照れてしまいますわ。」
(―――やっぱりメノウさんはかなり強い剣士だったんだ・・・)
「あ・・・横道にそれてしまいましたわね。
そろそろ、本題を・・・」
「ええ、よろしいですね、リサさん。」
「はい。」