ACT.132 疑念・二
「どういうコトッスか・・・?
それじゃ、まるでシルフィードが嘘を付いているかもっていうコトに・・・」
「ああ・・・その可能性だって無いとは言えないよ。」
無いとはいえない。あくまで仮定だ。
事態がますます急展開している現状、全ての事を真実として受け入れるのは危険である。
「ブラッド君・・・刻印にまつわる話だが、
殺戮を繰り広げた雷と水に対して他の4つの力が対抗したという話は知っているか?」
「いや・・・里のモンは実はそこまでは知らんねん。
俺ら天真忍軍が知っとったのは、伝説になってる力が剣やのーて刻印、
それが6つある事と散らばったオリハルコンの話しか知らん。
そんな具体的な戦いの構図までは・・・・・・・・・おい・・・」
「ソウジさん・・・・・・」
あくまで仮定だ―――
が―――。
「・・・ブラッド君が、僕らがこの話をした後に言ったな。
“忍はあらゆる情報に対して懐疑的でなければならない”と・・・
それ以来、ずっと考えていた。あくまで憶測だ。それでも・・・
大昔の更に昔の話を僕らは知らない・・・
つまり、“それなりの話として言えば、僕らが信じる”というコトだ。」
「・・・嘘・・・・・・付いてんのか?
でも、ロックハートが俺たちに付いてるとは思えねェ・・・
アイツはそんなヤツじゃねェから・・・って事は・・・」
「・・・あくまで可能性の話だ・・・ロックハートもバカじゃない。
どこかで僕らと同じ様に考えているだろう。
戦いの構図が正しいとしても、シルフィード自身にも闇があったら・・・?
実はオリハルコンに刻印にされ封印する力があるとまでは分からなかったとしたら?
クリス姫がワームホールによって助かったのは、
ヒルダンテスの刻印に形勢を奪われない為だったとしたら・・・・・・
臆測は絶えない・・・けれど、僕はあの刻印のいう事を真実として
受け取るのは危険だと思うんだ。」
「でも・・・」
「いや、ソウジさんの判断は正しいで。
正直俺も少しは疑ってる。せやから、キッド。
お前の刻印が喋ってくれれば、ホンマかどうか分かるんやけど・・・」
「悪ィ・・・・・・」
応えない。
応えてくれない。
「ダメなんだ・・・」
ぐっ・・・
「・・・・・・コイツ・・・俺の前に現れた時以来、全然反応無しなんだ。」
「まぁ、そらしゃーないな。」
「でも、取り敢えず、現段階では私達に対して危害は及んでいませんから、
余り心配しすぎる事は無いかもしれませんわね。」
「・・・ええ。ただ、分かっておいて欲しいのが、
これから僕らが手に入れる刻印にまつわる事・・・
それを聞いた時、直ぐに真実だとは思わずに置いておくべきだという事だ。」
「了解ッス。」
ザッ
(って言う事は・・・
あんたの言葉も鵜呑みにせん奴がおってもエエっちゅうコトやな・・・
ソウジさん。)
同刻 中庭
「・・・これが、俺がユーリケイルからソーライトに向かうまでの事・・・
そして、事件後の事だ・・・・・・・・・」
「・・・・・・うん・・・・・・」
「・・・全て話したのは・・・・・・今日が初めてだ。」
「・・・ゴメン・・・・・・」
「何を言ってる。俺が話すべき相手だと思ったからだ・・・」
首からかけている石―――アリスが遺したものを取り出し渡そうと思った。
何もかも奪われかけたこの人に何かを渡そうと―――だが、コレは違う。
(・・・違う・・・
・・・コレを渡したら代わりにしてしまうじゃないか・・・)
「ロック・・・?」
「・・・何でもない・・・
ただ、必ず守り抜く・・・お前は俺にとって“全て”だ。
だから世界を敵に回そうがどんなことになろうが、
最初に交わした誓いはお前が俺を必要としてくれる限り守り続ける。」
「うん・・・
けど・・・そんなセリフ、他の誰にも聞かれたくないな。
恥ずかしすぎて死んじゃうよぅ・・・」
「う・・・・・・」
特にあのバカに聞かれたら何と言われる事か。
「気をつけておこう・・・」
同刻 ユーリケイル城
「待て!何だお前は!」
「オイオイ、まーだオメーらは門番やってんのか。」
「あ・・・・・・あなたは・・・!」
「ま、暗いからな、分からなくても仕方ねぇか。
とかく、王に会いてぇ。伝えてくれるか?
“焔帝の剣聖”、閃迅組の真の組長が戻ったってな。」