ACT.137 偽らぬ闇


キッドとロックハートを押さえ込んでお話は再開された。

「闇葬組・・・ですか・・・」

「隊長として情け無いが、俺は初めて聞いたんだ。
 もし、ラゥムと接触している君ならば、と思ったのだが。」

「・・・なるほど・・・あの人も厭な事を考える・・・・・・
 彼らは僕ら、閃迅組の裏に当たる部隊・・・と言ったところでしょう。」

「ああ。」

「俺もバッチリ聞いてるで・・・声聞いたら分かるやろ。」

指を二本、喉仏に当て、精神を集中させる。

「
 『・・・キッド・ベルビオス君ですか・・・私は組長のアルベルト・ラライです。』。
 ・・・やったかな。微妙にシャープってるんのは勘弁しといて。」

「うおお!」

「「人間録音機!」」

「そないな言い方すんな、ボケ。
 ほんで、あの場におらんかった連中は、さっきの声に聞き覚えはないんか?」

全員が首を横に振る。

「・・・もしかして、その人って黒髪で黒メガネだったんじゃ?」

「それや、ソレ。
 何やお前、知ってたんやな、シン。」

「いえ・・・直感ですけど・・・
 そうか、前にラゥムと何か話していたんですよ。」


ザッ。


「隊長、入編隊等の記録資料をお持ちしました。」

「ありがとう、リカード君。」

(って・・・)

(対応、速すぎだろ・・・)

「確か、スネイクさんとの関連もあると言っていたな?」

「そうッス。あの野郎が言ってる事が本当だとは思えねぇけど。」


パラッ。


「これは入隊、編隊、及び全ての志望者のデータが入っているんだが・・・
 文字順で楽だな。あったぞ。アルベルト・ラライ。受験は5年前か。
 入隊当時が二十歳だから、今は25・・・歳相応だったか?」

「そのぐらいやな。」

「・・・・・・これは・・・・・・
 ・・・適性検査で落ちている。」

「「「適性検査?」」」

「報国の志と民を守る意志がある者ならば、全てを受け入れるとは言っているが、
 実際の所は、給料面の良さに惹かれて・・・だとか、
 単に己の力の誇示・・・その場所を求めて来ただとか、そう云う奴もいる。
 だから、騎兵隊ならば剣術試験に加えて、一般教養試験のほかに適性検査・・・
 つまり、ローテルダムを守る者として本当に相応しいかを測るモノなんだが・・・」

クライセントがソウジに渡す。

「・・・剣術、一般教養は上級であるAクラス。
 けれど・・・適性検査は危険思想の持ち主としてマークされている・・・
 備考には、再び志願しても門前払いをするように・・・と。」

「それってかなりヤバイってコトじゃ・・・」

門前払いなど、本当に異常中の異常だ。

「単に“ヤバイ”んじゃありませんわ。
 このローテルダムにそこまでの事をされる程、人間性や性格が常軌を逸脱し、
 加えて危険な目的意志があるというコト・・・
 しかも、一般教養が出来ているというコトは頭もそれなりにあるのだから、
 適性検査で自分を偽ることも出来るハズなのに・・・」

それをしていない・・・
心理学を学んでいればある程度の虚偽の受け答えも可能。
それがないとなれば―――

「我々に対する挑戦状とも取れるな。」

「・・・なるほど。ラゥムにしてみれば、その男は自分に近い人間。
 利害が一致している訳だから、後で裏から引き込み、
 裏の軍人として扱えば、己もそしてその男の目的も遂げられる・・・か。
 つまり・・・シン。お前たち、閃迅組の裏の存在として闇葬組が造られたのではなく、
 そういった危険人物を集めて闇葬組が出来上がり、
 しかし、世間体では完全な裏の者をいつも使うのは非常に面倒・・・
 だから、閃迅組が表の存在として作られた・・・そう云う事だろう。」

「僕もロックハートと同じ考えだ。
 しかし・・・あのスネイクさんを殺すほどとは・・・」

「・・・・・・・・・」

「あ、すまない。キッド。」

「俺は信じて無いッスよ。あんな野郎のいうコトは。
 オヤジはもっと強い奴に―――――――――くそ・・・・・・ッ!」

「・・・・・・果たしてそうでしょうか。」

「「「え・・・・・・・・・?」」」

「いえ。戯言です。」

「・・・そろそろ散会にしようか。」