ACT.139 痛み
同刻 魔界
『只今、戻りました。
お久しぶりです・・・ヒルダンテス様。』
『ああ、長期任務ご苦労だった・・・アルベルト。
そして闇葬組よ・・・しかし、かなり数が増えたな。』
『ええ・・・
貴方への賛同者はどこにでも居ることの証明ですよ・・・』
『・・・なるほど・・・よくやってくれている。
・・・しかし、カヴィス。手酷くやられたな。』
ザッ。
『・・・言い訳をする気はありませんぜ・・・
イムラのガキは次に必ず殺す・・・』
『・・・相手がイムラの者とあれば、それも仕方が無いか・・・
まぁ、いい。カヴィスよ、2年間の激務ご苦労だった。暫く、その身体を休めよ。
既に次の作戦は動いているが、貴様はまず休む事だけを考えよ。』
『ハ・・・失礼します。』
ヴンッ。
『・・・・・・どう思う?アルベルト・・・』
『・・・何がですか・・・?』
『フン・・・・・・
貴様ほど分かりやすい奴も居まいが、私も同じだな。
嫌悪はあからさまに表に出す・・・・・・』
『当然でしょう・・・・・・
あのような鬼など・・・信用しすぎるのは危険・・・
カヴィス殿の事は私に監視を任せて頂ければ、ある程度は・・・』
『そうしてもらおう。
“あの女”とのつながりも気になるからな・・・・・・・・・』
数十分後 剣道場
「・・・・・・・・・」
誰も居ないその中で長髪の少年が一人禅を組み目を閉じている。
「・・・・・・・・・
(リカードさんの薬のお陰で吐血もなくなり・・・
痛みもそれほどではなくなっているが・・・やはり、痛いものは痛い・・・)」
何の意識もしないのが瞑想であるはずなのに考えてしまう・・・
人前で焦りを必要以上に見せたくないと言うのは緑髪の剣士以上なのかもしれない。
「・・・・・・・・・・」
瞑想は無になり、必要最低限の呼吸しかしなくなるという。
心を静めてやっと、少年もその領域に入ろうとしている。
痛みも――――――気にならなくなっていく。
しかし、得てしてそう云うときに限り、要らぬ邪魔が入る。
「だーかーらー、もっと分かりやすく教えろっての!」
「コーディもやりたーい!」
「せやからなぁ、イキナリどの音程でもやろうとすんのは無理やて言うてるやろ!?」
「・・・・(はぁ・・・)」
まぁ・・・元気がある方がいい事だ、とは思う。
声が反響しているから、遠くの部屋で騒いでいるのだろう・・・
「なんだ、ここに居たのか。」
「・・・・・・ロックハートと・・・クリス姫。
早速デートでもしてたのか?」
「そうとは言えないけれど、そんなところです。」
ロックハートは照れているのか明後日の方向を見ている。
「いやしかし、本当に良かったと思っている。
あなたと再会するまでは、どんな人間に対しても僅かな殺気を圧していたから。
なぁ、ロックハート。今のお前の目付き、良くなったと思うよ。」
「もう・・・
協力してくれている人にそんなコトしてたの?」
「フン・・・・・・」
ザッ。
「・・・・・・・・・イムラ。」
「・・・・・・何だ・・・?」
僅かに空気の流れが止まる。
「・・・先の俺とクリスに対する問い・・・・・・らしくないな。」
「・・・。」
「え?」
「そう云う事は、あのアホかその相手が言う事だが・・・・・・
どうもラゥムを殺したと言う魔族との戦闘後からお前の様子がおかしい。
・・・・・・何を隠し、騙している・・・」
「ちょっと、ロック・・・一体何のことを・・・」
何故、ロックハートがソウジに対して怒りを向けているのか全く分からない。
しかも、その怒りのあり方が仲間への信頼に基づいたものではなさそうで、
余計に不安になってしまう。
「大したことじゃない。流石にこの短期間でこれだけの戦いをすると、
身体も色々とダメージを受けていてね・・・
そして今の休みで疲れが一気にきたという感じだよ・・・
お前が思っている程、酷い事は無いよ。」
「・・・・・・そうやって・・・
・・・信頼する者を騙し続けるか。」
「――――――どういう意味・・・かな。」
「フン・・・・・・行くぞ、クリス。」
「え?え?」
「イムラ・・・・・・貴様には1つだけ忠告しておく。」
ザ――――――ッ。
「俺はヤツの事など真に認めては居ないが・・・
ヤツは貴様を信頼し、尊敬している。それを裏切るのは許さん・・・
信頼を受けながらも欺く者の末路・・・覚えておけ・・・・・・」
「ああ・・・
それは余程怖いものだね・・・僕には関係のない話だけど。」
「そうか・・・
・・・・・・もう良い。」
パタンッ・・・
「・・・そんな痛み・・・・・・関係、ないよ・・・」