ACT.143 血判
「・・・バカなコ・・・
自分の程度を測られている事にどうして気付か」
言いかけるサラサの胸倉を思い切り、掴む。
「・・・貴様が本当に逃亡者かどうか、実際の所分からんからな。
もしかしたら、ヒルダンテスの手の者かもしれんだろう・・・?
俺の程度を測ろうが、関係ない。質問に答えろと言っている。
もう1度だけ言う、その刻印をいつ手に入れた?」
ロックハートの目的は二つのみ。
クリスティーナを守る事、ヒルダンテスを殺す事。
それ以外は全て捨てている。
その部分を突かれた所で痛みなど無い。
「・・・面倒ねェ・・・」
(おいおいおい・・・・・・)
(凄まじい勢いで険悪ムード・・・)
「・・・今月、7月19日よ。
ラゥムが国王になった日だったから良く覚えているわ。」
「・・・約2週間か・・・俺の“蒼空”が目覚めて半年、
キッドの“紅”、その2週間後にお前・・・か。刻印の名は知っているのか?」
「・・・・・・あなた、偉そうね。」
「・・・貴様、いい加減にしておけ。こっちは」
「ロックハート、止めろ。
僕から質問させてもらいます。」
どうにもロックハートとサラサの相性は悪い。
というか、サラサがワザと振り回しまくっている。
「刻印の精霊に会いましたか?」
「・・・今のところ5回は話してるわ。」
手を組み、両手の周りに小さな氷が生まれ、
その中から小さな水色の精霊が現れる。
「このコよ。
(かなり疲れるんだけどね・・・)」
「「「カワイイーッ!!!」」」
悶える女性陣。
カワイイは正義とよく言ったものだ。
(両手を組む・・・これが碑雹の発動条件か。)
“は・・・はじ・・・はじめまして・・・
碑雹(ヒヒョウ)の刻印の・・・グ、グラソンです。”
「・・・氷の精霊だな・・・・・・
グラソン・・・と言ったか。」
“は・・・はい・・・”
ビクビクしまくっている。
これで属性の最大精霊クラスだったとは到底思えない。
「俺はお前の仲間であるシルフィードの刻印を持っている。」
“シルフィードさん?!本当ですか!?”
「ああ、後で会って話をするといいが、
まずはそこの少女の石を確かめてくれないか?」
(・・・やはり、ロックハートも疑っているか。)
(カマをかけたんですね。
ちょっと気が弱そうだから、シルフィードの名を告げてどう反応するか。
ただ・・・まだ、分からないとは思いますけど・・・・・・
それこそ、キッドの方の名前だしたらビビッちゃいそうな感じ。)
(って・・・俺が悪いのかよ・・・)
「コーデリア姫、少し前に。」
「う、うん。」
“・・・ぼ、ぼくの力には反応しません・・・あるかどうかも分からないです。
シルフィードさんのともちがう・・・んですね?”
「・・・その通りだ。」
「待ちなさい。ある程度の事はこのコから聞いているわ。
けれど・・・何がどうなっているのか、教えてくれないかしら?」
一度、グラソンを戻す。
「特にヒルダンテスの力のこととか・・・」
「何言うてんねん、アンタ・・・
トルレイトの裏のボスがヒルダンテスやて知ってるんやろ?」
「・・・ええ、私はそこの生意気なボウヤとお姫様の元居た国・・・
つまり、ソーライトの事件を調査していたのよ。
トルレイトは何の情報も流さなかったから、妙だと思ってね・・・」
「・・・どうして妙だと?」
「あの国は人の国の不幸を大々的に広報する性質の悪いガキみたいなものなのに、
あの一件の事は噂でしか知りえなかったのよ・・・
そして、手に入れた情報の中にヒルダンテスが居たから、気になってね・・・」
・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・どうします?」
「・・・俺はその男に直接あった事が無いからな。ソウジ君に任せる。」
「・・・分かりました。それじゃぁ、ハルダイトさん。
あなたの持つ力、それらに関わる事を全てお話しましょう。ただし・・・」
ロックハートほどでは無いが、ソウジの威圧―――。
「僕もロックハートと多少同意見でしてね・・・
少しでも不穏な行動があればあなたを斬ります。」
「・・・・・・カエデと同じね・・・」
「・・・姉弟ですから。」
「そう・・・・・・・・・
・・・・・・紙、あるかしら?」
「?」
ぷチッ。
「なにやってんの、アンタ!
自分の指なんか切って・・・・・・」
「こういうときはコレが一番・・・でしょう?」
ズッ。
「血判。最も分かりやすい忠義の証じゃない。
まぁ、あなた達に仕える気なんて毛頭無いけど、協力させてもらうわ。
ダメかしら?」