ACT.146 姫の勅命
「ロックハート。
あなたこそ、自分が一番正しいと思ってない?」
「・・・・・・誰がいつ、そんな事を言った。」
「言って無くてもそうじゃない・・・!?」
「チッ・・・・・・」
ザッ
「逃げるの?」
「・・・・・・何・・・?」
その言葉は聞き捨てならない。
(おいおいおい・・・・・・!)
(ちょっと、本当にヤバイよ・・・)
「捌く様な・・・ううん、逃げる様な言い返ししか出来なくて、
それ以上の事が言えないから逃げるの?って訊いてるのよ。見損なったわ・・・」
「・・・俺の正義は、俺にとっての悪から人を守り、斬る事だ。
俺にとってトルレイトは生まれながらの敵だ。幾度と無く、殺されそうになった。
生まれて17年、7度も襲撃を受けた。どうしてそんな奴らに手を差し伸べろと?」
「・・・・・・・・・」
それは言い返せはしない。
サラサに強く当たるのも幼い頃の恐怖があるから―――。
自分とてトルレイトに対しての敵愾心は、言葉で言い表せないほどある。
「・・・止めておけ、クリス。お前には分からん事だ。
それにお前とは言い争いはしたくない。」
だが、だからこそ分かっていることもあるのではないか。
少なくともクリス自身はそうやって行かなければ、
この無意味な連鎖は止められないと考えている。
「・・・・・・子供は・・・・・・どうするの・・・?」
「・・・・・・・・・。」
「善悪の区別もつかない子供まで助ける必要が無いの・・・?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「あなたにとって好きな人だけ守ろうとして、
子供達を守らないなんて、そんな!」
「クリス、落ち着いて・・・!」
ぐ・・・!
「!
離しなさい―――リノン・ミシュトさん。」
「!」
今のクリスは―――友人のそれでは無い。
「貴方は私の友人ですが、今の話は我が国の問題。
例え、あなたの制止でも、私を止める事は出来ない。」
一国の長としての存在として今、ここにいる。
「・・・ロックハート・クラウン大尉。
ソーライト王国王女として、あなたに命じます。」
「・・・・・・・・・」
「サラサ・ソルダイト女史の救援要請に応え、
ローテルダム王国騎兵隊及び関係各国と協力、共闘しなさい。」
(・・・クリス・・・・・・)
「・・・・・・・・・了解した。」
「「「―――――――――!」」」
「・・・恋人のクリスとしてではなく、
一国の主・クリスティーナ姫からの申し出だ・・・俺に拒否する権限は無い。」
ギィッ・・・
「・・・サラサ・ハルダイト。
貴様に協力してやる。だが・・・1つ―――」
「・・・・・・何よ・・・・・・」
「・・・一国の姫がお前を信用した。裏切るなよ。」
「・・・・・・勝手な男・・・」
バタンッ
「・・・はー・・・っ・・・何とか終戦したョ・・・」
主にクリスの迫力に気圧されっぱなしだったもう1人のお姫様。
「クリス・・・」
「・・・大丈夫。ロックは素直になれてないだけ。
自分にとってトルレイトがずっと敵だから、サラサさんの事を信じられないだけで、
“助けたくない”なんて本当は微塵も思って無いよ。
“見損なった”は心にも思っていないような事を言ったから・・・」
「本当に好きなんだね・・・」
「うん。
だから、変な意地張らないで欲しかったんだよ。」
「取り合えず、俺たちはサラサ君の要請に応える事にするが、
各方面に物資の面などで許可を得る必要がある。」
「ちょい待ち。そら、マズイやろ。
表向き、ラゥム派は排除したように見えるけどや・・・
もしかしたらこっち側に連中の刺客がおるかもしれへんし、
そうでなくても、事が事や・・・口外せーへん方がええやろ。」
「・・・それもそうだな。ソウジ君、サラサ君。
今後の行動について更に練りたい。1時間後、再びここに集合でいいか?」
「はい。」
「2人の姫は、キッド君、リノン君、ブラッド君で頼む。」
「了解ッス。」