ACT.149 反撃
「あぁ・・・アレね。一応、私もそれは1回あったわ。
意識飛んだけど、グラちゃんに聞いたから一応分かってるけど、それが何?」
あまり“アレ”を重要視していないのが恐ろしい。
もしかしたら、キッドの場合は特殊すぎたのかもしれないが。
「・・・刻印の力は本来、人間が扱える代物ではない。
その全ての力を一気に渡してしまっては、
放出できるようになってしまっては、その人物が死んでしまう危険性がある・・・・・・
逆に言えば、扱える量を少しずつ増やしてやれば、慣れも生まれて扱える様に。
第一次適合覚醒はその第一段階・・・」
「・・・要するに、あの厭な男はそれらを全て済ましてるか何かで、
そこで得た能力を使って石の存在を確実に知るようになった・・・?」
そう、刻印を扱う為のスキルが増えて行く―――というコトだ。
「ええ・・・そう考えるのが妥当だと。」
「・・・じゃあ、少なくとも既にそれらが済んでいたとして、
どうして姫や貴族クラスの女のコが実際に必要な数より多く誘拐されている訳?」
「確かに・・・・・・」
そんな便利な力なのなら、ピンポイントで狙えばいい。
むしろ、そこまで多く抱えていては面倒この上ない。
「いや、その能力が使える範囲が自分の目視出来る範囲なら説明がつきます。
何も行方不明になっている女性達全てをヒルダンテスが直接、さらったのではない。
可能性がある女性達を手下がさらって来て、その中から探し出せばいい。
そして、プリンセス以外の女性は恐らく、そのまま捕らえられていると考えられます。」
「あら・・・
言いたかないけど、魔物に食わせちゃってるんじゃないの?」
抱えていれば面倒だが、魔人は魔物をある程度使役できる。
それらに食わせてしまえば、負担は軽くなる。
「いや、ここまで世界を混乱させる男だ。簡単に捨てるような真似はしない。
人質として万が一の場合に備えていると考えられます。」
「なるほど・・・各国が奴の事を突き止め、襲撃しに来たとしても、
娘達を盾にすれば危機を脱することも可能だな。
もっとも、刻印の力で殆どが死んでしまうだろうが・・・」
「ええ・・・それで聞きたいのが、囚われた女性は人質にする為にも
人間界に居ると思われます。魔界では苛酷な環境に耐えられず死んでしまうからです。」
「・・・聞いた話だけど・・・あるわよ・・・
トルレイト城の地下には巨大な空間があって、そこには色々な人間が住んでるって。
多分、そのコ達もアンダーグラウンドに居るんじゃないかしらね。
ただ、あくまでも噂だから、断言は出来ないわよ。」
「それが分かっただけでもいいんですよ。」
「・・・ふぅん・・・・・・
それで・・・」
ザッ・・・
「本題。作戦の方はどうする訳よ・・・とりあえず言っておくと、
城下には常に30名前後の巡回兵士、城門には5名ほど、城内には言わずもがなね。
あと、魔曉忍軍が結構な数で出向してきてるわ。これ、一応3ヶ月前の編成表ね。」
脱国もかなり入念に準備をしてきた事が良く分かる。
編成表の他にもトルレイトや周辺各国の状況について
調べられた資料も持ってきているのだ。
「・・・どうする・・・ソウジ君。
いざとなれば、ユーリケイルへの軍事行動に対して不満を持つ国は五万とある。
彼らの協力も借りる事も可能だが、俺はしたくないな。」
「・・・ええ、それではラゥムと同じですよ。
ローテルダムは攻める事を禁じる国家・・・
但し、我々は既に先制されています。」
トルレイトは先日までに大軍を率いてローテルダム領を横断、
同盟国であるユーリケイルに攻め入っている。
その報復ならば、大義名分は成り立ち、憲法にも関わらない。
「・・・それしかないな・・・姫に進言しよう。
無論、通るかどうかはその時次第だが。」
「ええ。ですが、これが通ればシン達・・・閃迅組も協力してくるハズです。
ここからは僕たちが反撃する番です。」