ACT.151 編成


会議場
「まず、作戦開始・・・つまり、出立は3日後。8月3日にローテルダムを発つ。
 行動メンバーは2チームに分かれ、トルレイトにて合流する。
 尚、コーデリア姫とクリスティーナ姫は我々本隊が」

「いえ、クライセント・クロウ総隊長。」

クリスが静止した。
続く言葉は一つだけだろう。

「私はロックハート大尉及びリサ中尉と共にトルレイトに向かいます。」

「いや、しかし・・・・・・あなたは彼らに狙われている。
 自ら死地に飛び込むような真似をするべきではない。」

「ですが、ヒルダンテスは元は我がソーライトの特務大臣。
 自国の者の犯した罪、それも大臣ともあろう者の責任の所在を追及するのは、
 更に上に居る者・・・つまり、私がせねばならない事です。」

「・・・・・・。」

それは、理想だ。
立場上、そうでなければならないが、
彼女は今の状況が真に見えていないように思える。

「姫はご自身がどのような立場に居られるのか」

「分かっていることです。
 何より私は正式では無いとはいえ、一国の元首です。
 将軍級であっても、この緊急事態だからこそ私への意見は無意味です。」

「姫・・・それは権力の濫用です。
 そんな風にしていれば、いずれ・・・・・・」

「・・・」

その通りだ。
クライセントの言う通り、独裁的な立ち振る舞いになる。

「んー、クリスだけが行っちゃうのがマズイんだったら、
 コーディが行くって言えば、クーちゃんは絶対に逆らえないよね。」

「ひ、姫ェ!?」

そこでコーデリアが出るとは思わなかった。
本気で空気を読んで欲しい。

「姫、隊長も仰るように」

「ソウジ様でも却下だョ。
 こう見えてもコーディは自分の死ぐらい覚悟してるんだから。
 守られているだけの高見の見物なんて出来ない。」

「いや・・・しかし・・・」

唸るクライセントとソウジ。
きっと折れない。部屋に閉じ込めたところで抜け出されるに決まっている。

「いやいや、良いんじゃないのかい?
 ボクは彼女たちを確実に守るという自信があるんだが、
 どうやら君たちには無いみたいだね。」

「クロード、僕らにケンカを売ってどうする。」

ケンカは売ってないんだが、そうとしか取れない。

「――――――そんな逃げ腰でどうするんだとボクは言っているんだけど?」

「俺も同感だ。俺は確実にクリスを守る。同時にヒルダンテスを討つ。
 クリスは俺とリサさんで守りぬくから、
 貴様ら腑抜けはコーデリア姫を取り囲んで守ってやればそれでいいだろう?」

こっちは間違いなくケンカを売っています。
ロックハート君は言葉を選ぶのが本当に下手な人です。

「・・・・全く・・・議会の承認も意味が無いな、君たちは。
 分かった、全責任は俺が取る!やるしかないのは同じだ。」

「はぁ・・・仕方ないですね。組み直しですか。」





そして編成表の改編。


Aチーム
隊長:リカード・クイテッド、副隊長:ブラッド・クイテッド
隊員:キッド・ベルビオス、リノン・ミシュト、サラサ・ハルダイト
護衛対象:コーデリア姫
順路:国境南西から

Bチーム
隊長:ソウジ・イムラ、副隊長:ロックハート・クラウン
隊員:メノウ・クルスト、リサ・クランバート、クロード・ネフェルテム
護衛対象:クリスティーナ姫
順路:国境北西から



「以上だ。これらのほかにももちろん、別働隊が居るが我々はこの編成で行く。
 シン達、閃迅組には今連絡を取っているところだが、捕まっていない。」

「って・・・何で、先輩がそっちなんスか?!」

「しかも、隊長さんの名前が無いし・・・
 (てゆーか、何でサラサが居るのよ・・・)」

(フフっ、リサさんが同じチーム・・・流石、ソウジ・イムラ。
 音に聞いてはいたが、ここまで気を配ってくれるとはね・・・)
↑や、違いますから。


「それは僕がここに留まって欲しいと頼んだんだ。
 やはり、隊長自身がこの作戦の戦闘に立ってしまっては色々と問題がある。
 というより、全体を見渡せる人が本国に居なければならない。」

「それは理解できるッスけど・・・」

なーんか、納得できないというか、なんというか。

「・・・いつまで先輩とやらに頼る気だ、アホが・・・」

「あぁ?!」

「クリスはコーデリア姫に比べて戦闘能力がある。
 魔法は既にSクラスを使いこなす上級魔術士だ。
 刻印使いは俺だけで十分。そもそも、不測の事態になど陥らん。
 だが、お前の方はコーデリア姫が体力的に劣るという事から、
 刻印使いであるお前とサラサの2人を当て、確実に守れるようにした。」

刻印ならば大多数戦闘でも非常に有利になる。
それが2人居て、忍が2人、魔術士が一人居れば十分。
ロックハート側は物理的な殲滅力を優先したに過ぎない。

「まぁ・・・何だ。お前は既にトルレイト側に面は割れている。」


ポンッ


「!」

「つまり、マークされるほどの人間という訳だ。
 俺と同じく、上級のブラックリストに載っているだろう。
 マークされ、しかも先輩が別チーム。期待されていると言う事を分かれよ。」

「・・・お・・・おぅ。任せとけ・・・
 つーか、お前より上手くやってやんよ!先輩居なくても大丈夫だっての!」

((((た・・・単純―――!))))

(やはりアホだな・・・)

ああ、頭は大丈夫じゃなかったようです。

「それで・・・
 もう1つ話がある。トルレイトの使用する兵器の事だ。」

ばさッ!

「現在、我々が確認したトルレイトの兵器・・・
 亜種を含め現在、使用可能と思われる約200種について特徴を載せている。」

「「―――200・・・・・・」」

「サラサ君。ロックハート君からの報告で聞いてはいるが、
 メテオが再び使われているようだが・・・?」

「だから、わざわざユーリケイルに行ってあげたのよ。
 まさか、ジェノサイドアームズを実用化するとは思いもしなかったから慌ててね・・・」

「「「ジェノサイド・・・?!」」」

「その名前の通り、大量殺戮兵器・・・
 魔力を利用した毒物系の兵器よ・・・・・・」