ACT.152 兵器


「僅か1発の弾頭で数千人を一瞬にして神経毒によって殺す事が出来る兵器よ。
 “メテオ”っていうのはその名称。」


神経毒兵器―――
つまり、着実に確実に殺して行くということ―――。


「着弾後数十年に渡り土壌に残り、汚染し続けるわ。
 流石のトルレイトもそこまでやってしまっては、
 奪う対象である領土を数十年放棄しなければならなくなるから、
 それはないと思っていたけど、逃げる最中にその情報を手に入れてね・・・
 どうやら本気らしいわね。それでここに来る前にユーリケイルに向かったのよ。
 ・・・・・・ま・・・」

ロックハートの方を少しだけ見る。

「そこのボウヤ達が解体しちゃったみたいだけど・・・よく出来たわねェ。」

「・・・氷魔法で凍結し、俺の刻印で粉砕し更に爆破し完全に塵にした。」

ある程度の妨害は解除した上でだが。

「・・・なるほどね。」

「それほどまでに危険な兵器を使うトルレイトだ・・・
 僕らが向かった際に、何を使ってくる可能性があるのか。
 ある程度の対策が必要だと考えている・・・だから、サラサさん。
 あなたのその布の中にあるもの・・・見せていただけますか・・・?」

「・・・・・・別にいいわよ。」


ゴどんッ


「・・・これは・・・」

巨大な金属の塊。
サラサの身長は165cmと女性にしては高いが、それとほぼ同じぐらいの長さだ。

「大剣搭載型魔道砲携帯式・・・通称、シューティングスター。
 個人の魔力をこの媒介のボールに込めることで、圧縮して放つのよ。
 圧縮する事により局部破壊力が、圧縮前の最大20倍にまで出来る優れモノ。」

通常、人間が行なえる圧縮の最大値が9倍。
もちろん、微小魔力になればなるほど、容易にはなるが例外である。

「見た感じ、刻印の魔力にも耐えられそうね。
 圧縮は大気魔力を取り込んで結合力を増してるんじゃないの?」

「あら、ホントに頭良いのねェ。
 抑え目には撃ってるけど、7割ぐらいまでは耐えられるはずよ。」

耐えられるだけで、圧縮が20倍までいけるかは別だ。
撃てるか撃てないか、そういうレベル。

「・・・もしかして・・・これって大量生産されてたりとか・・・?」

「無いわよん。これは私専用に創られたヤツだから。
 この大剣がパーソナルアーツでこっちの銃は遠距離支援目的のメイン武装。
 これ、大気魔力だけでも活動可能だから、魔力の扱いが下手な私でも使えるの。
 で・・・グラちゃんと出会って、直ぐにこれを貰ってね・・・
 私が脱走する時に試運転がてらにコレの生産ラインは潰しておいてあげたから・・・」

これ以上増える事は無く、あったとしても数が知れている。
対処も砲撃自体は大振りでチャージの動作があるから、見切りはかなり楽らしい。

「・・・ほかに問題の兵器は?」

「後は雑魚よ。破壊力があるのはメテオの改造型とコレぐらい。
 あとは駄作だとか、試作品ばかりで実用性はあまりないし、
 だいたい単なる銃なんて魔力に対して無意味だから、使ってこないだろうし。
 まぁ、猛毒をそのまま発射するなんて酷いモノがあるから、それは気をつけなさいな。」

さらっと言うな。
むしろそれが一番怖い兵器だろうに。

「よし・・・次、刻印のことだ。」

「第一次適合覚醒はここに居る3人とも終わっている様だが、ロックハート。
 お前は今2段階目と考えていいのか?」

「・・・ああ。」

「第一次適合覚醒・・・というのはいつ頃だった?」

「・・・事件後、1ヶ月してからだ。」

キッドと比べれば遅い。
紅の刻印は1週間程度で第一次適合覚醒となった。

「更に1週間後に第二次適合覚醒だった。」

だが、逆に第二次まで間が空いている。
やはり、刻印や術者によって時期が変わるのだろう。

「可能となるのは魔力による造型。
 つまり、俺の“風の翼”の様に自分の想像力で魔力の何らかのモノを創りやすくなる。」

「・・・俺よく覚えてねぇけど、
 二次ってのも意識飛んだりすんのか?」

「いや。刻印の魔力が暴発を起こす。それを押さえ込めば、第二次は終了だ。
 あの風の翼も暴発するほどの魔力を押さえ込み、且つ加減して創り出している代物だ。
 刻印で特徴は違えど、覚醒段階は全て同じだと思われる。
 今のうちに押さえ込む為の創造物をイメージしておけ。随分楽になると思う。」

「だってさ。
 でも、アンタあんまり美的センス無いわよね。ネーミングとかもそうだし。」

それはつまり作者にネーミングセンスが無い事と同意です。

「う・・・うっせーよ。」

そうだ、うっせーよ。

「・・・で・・・・・・何だ、イムラ。
 ヒルダンテスがどうやって自分の刻印と繋がる鍵以外の存在を、
 つまりクリスをプリンセスとして断定した理由が知りたいんじゃないのか?」

「・・・・・・知ってて黙ってたのか・・・?」

「いや、最近考えた末の話だ。奴は既に適合覚醒を終わらせている。
 その中でプリンセスを見つける眼を手に入れたハズだ。」

「・・・でも、どうしてそんな必要が・・・」

「刻印自身が刻印自身を守る鍵を見つけ、それを守る為だ。」