ACT.154 魔王


『ヒルダンテス様、半数の魔人化が終了いたしました。
 本日はこれで終了致します。』

『・・・・・・ご苦労。
 アーベント様が来られる・・・お前も下がれ、カタルカス。』

『!
 魔王直々に・・・?!』

『・・・何のつもりかは知らぬがな・・・・・・』

『・・・・・・・・・お気を付けを。』


ヴンッ


『・・・・・・(・・・・・・。)』

‘何に気をつけるというのだ?’

『――――――!』


    ザ―――ッ。


‘・・・・・・余が何をすると思うておる・・・?’


闇に更に深く沈む黒い影。
ヒルダンテスですら威圧される魔力の圧力。


『・・・アーベント様・・・・・・』


声のする方向にいると思われるその人物は黒い霧に覆われ顔を見る事が出来ない。
今、視認出来るのは強烈な魔力だけ。


‘ヒルダンテス・・・
 ・・・貴様は何やら色々とやっているらしいな。’

『・・・・・・アーベント様には害の及ばぬ事・・・』

‘ほう・・・・・・
 今しがた、向こうの「金色の獅子」も同じ様な事を言っていたが・・・’


消える――――――


『―――。』

だが、焦りはしない―――。
今、ここで殺される事は絶対にない。

‘余の計画を知っていての行動・・・ではないのか・・・?’

『・・・・・・』

‘まさか、“世界の収斂”を阻もうなどと・・・考えてはおらぬか・・・?
 もしそうならば・・・本来生きられるはずの貴様はその対象から外れる事になるぞ。’

『まさか・・・恐れ多くもその様な謀反を私が・・・?』


この様な虚言が通じる相手では無い。
互いに互いの考えを分かった上で、偽り続ける言霊を発する。


‘・・・ならば・・・阻んでみるがよい。’

『―――・・・・・・・・・。』

‘まさか貴様は、黄金の獅子以下の三流では無かろう。
 貴様らは繋がりを持ちながらあり方が余りに異なる特異な存在。
 それが余を裏切るならば、それもまた意味があるだろう。’

『・・・・・・いいのですかな・・・?私はあなたを殺すかもしれない。』

‘・・・・・・正直でいいな。まぁ・・・’

背後から気配が次第に消えていく。

‘2度も3度も、あの小僧に殺されるような真似は避けておけ・・・
 幾ら互いに別人といえども、いい気はしないだろう・・・?’

『・・・・・・当然・・・次は私が殺す。』

‘・・・・・・・・・良い、心掛けだ。
 期待しているぞ、ヒルダンテス。’


ヴゥン・・・・・・


『・・・・・・・・・魔王・・・・・・
 貴様の秩序の1つ、ブロックワードを破った私が殺されはせんよ。
 思い通りにはさせぬ・・・・・・この世界は必ず解放する。必ず・・・』