ACT.156 海渡/吹込



1時間後 ソウジ隊 船上

「頭の悪い連中だ・・・
 襲うなら出航してからが定石だろうが。」

そう言って、緑髪の剣士の姿が一瞬にして三人の兵士の眼前に現れる―――。

『『『――――――!!!』』』

「散れ。」



ザ・・・ンッ!!!



「――――――頭も悪ければ、斬った後味も最悪だな。殺すのも面倒だ。」

『ひ・・・
 う、うああああああっ!!!!』

一撃で3人を瞬殺―――。
12人のチームで船内に潜んでいた彼らは既に半数以下になっている。
たった5分でこの現状。もう敗北は必死―――

「おや、襲ってきておいて逃げるのか。
 姫を狙っておいて、途中で逃げるのは反則だろう?」

だが、逃げようにも逃げられない。
今眼前に立つは金色の髪を靡かせる一人の戦士。

「奪うか完敗か、どちらかにしたまえ。
 負けを選ぶのなら僕が引導を渡してあげるよ――――――」

『コイツは確か――――――うばぁっ!』


ドポ・・・   ンッ!!!


「脆いね・・・
 あぁ、面倒だから海に蹴り落としてしまったが、
 あまり海を穢さないでくれたまえよ。海が死んでしまう。」

そりゃあんまりな言い様だ。

『く・・・・・・
 うおおおおお!!女ァアア!!どけぇええ!!』

別の一人が茶髪の女性に剣を振りかざす―――。

「はぁ――――――
 そんなに僕は女性に見えるのか・・・」

しかし、この集団の中で茶髪はただ一人だけ。

『ぼ・・・?』

「―――神羅極円刃。」



ドガアッッ!!!!
                ドパんッ!!


「ふぅ・・・・・・
 そんなに僕、女性に見えますか?」

結構、ソウジはこの事で悩んでいるらしい。
ロックハートやクロードではそれぞれ違う意味で当てにならないし、
メノウじゃ遠慮されてしまうから、残りの二人(クリスとリサ)に聞いてみる。

「えーと、下手な女の人より女の人っぽいというか・・・」

「女装したら私より綺麗だと思います。
 ソウジさんってスタイル良いし、体重軽そうですし・・・」

とかブツブツ言いながらリサさんはネガティブモードへ突入。

「君ィ!女性を傷つけてそんなに愉しいのかい!
 こんなに可憐なリサさんとクリス姫にそんな事を聞くとは・・・」

何気にクリスティーナには興味がないと言っているような強調である。

「い、いや、君じゃアテにならないし、
 遠慮されたりしないと思ったからであって・・・」

「この絶対美的感覚の所有者であるこの僕がアテにならないだとぅ?!」

(そんな能力あるんですか?)

(ヤツの妄言でしょう・・・
 アホだと思っていたが、コレは酷いアホだな。)

(ロックハートさん、酷いですわ・・・)

などと、戯れている間に残った敵は逃亡画策。

「あぁ、連絡されてはいけませんわね。」


ガガガガガッ!!!


『な・・・っ!』

『く、鎖・・・?』

地面から直立不動の鎖が何重にも絡み合い、逝く手を阻んでいる。
堅固なる進路奪取の魔法。

「私が繰るのは魔本唱術だけでは無いんですわよ?
 いわゆる普通の詠唱魔法も使えます。」


カツッ。


「これでも私、王立アルファン魔術専門学園の主席でしたので。
 このほかに二種の特殊詠唱法もマスターしていますわ。」

魔法とそれに付随する魔術を究める為の教育機関。
中でもこのアルファンの学園は国内最高峰のレベルを有している。

その主席。

「残念でしたわね。
 リノンさんもビサイド学院の綜合主席<クイーンオブクイーンズ>ですけれど、」


ゴ  ゴゴ・・・

 ゴ ゴ  ゴ   ゴ    ゴ――――――!!


『うあ・・・・・・』

『あぁあ・・・・・・・』


人間が放っているとは思えないほどの魔力―――。
一瞬にして、周辺大気に含まれる自然魔力を掌握し、
自己に有利なフィールドとして形成してしまう。


「ランクとしては私の方が凶暴ですわ。」


ただそれだけで、敵対者を持つものの意志を奪い取る。


「・・・あら・・・・・・気絶してしまいましたの?」


へ ん じ が な い 、た だ の  し か ば ね  の よ う だ 。


「おかしいですわね・・・
 この方々、対魔力兵装を身につけられているというのに・・・」

(・・・怖いです。)

素直におびえるリサ。

(・・・怖いよぅ、ロックぅ・・・)

ここぞとばかりに甘えるクリス。

(お、俺には何とも出来んぞ・・・!)

珍しく慌てふためくロックハート。
そもそも、ゼロなので魔力に対しては非常に脅威を感じている。

(な、ななな、情けないな。
 そそ、そそれでも一国の姫を守るものかいいい?)

ベタなバカ。

(み、見たまえ。
 ソウジなどありのままを受け入れ・・・・・・・・・)

(・・・・・・アレ・・・?)

(目元・・・光ってません・・・?)



この日、ソウジは心から涙したという。







ほぼ同刻 <リカード隊>
「・・・・・・・・・。」

“キプシャアアアアアッッ!!!”

「スゴイネ。」

何が凄いって巨大かつとても長い身体が
船の周りをグルグルまわっているのが凄いんです。
どこかの映画に出てきそうなサメ並にイヤな泳ぎ方をしています。

「アハハハハハハ☆
 ポ○モン・ゲットだぜー!!」

「ひ、姫・・・落ち着いてください・・・
 ここは私のピ○チュウで何とかして見せますから。
 こう見えても私、昔はバッジを全て集めましたから!」

こちらはこちらで思考力が欠落していました。
意外とリカードって精神的に弱いんだと思いました(コーデリア談)

「てゆーか・・・
 ・・・こんなんが、海の底にいつもいるんですか・・・?」

甲殻類と思われる見た目からして硬そうな巨大なそれが眼前に。
海老っぽいんだか、蛇っぽいんだか良く分からない。

「・・・私、魚介類・・・
 特に海老とか苦手だから、パスするわよん。」

「あんた最高戦力の一人なのに何言ってんのよ!
 凍らせたら終わりでしょ!?」

魔力の効率も一転的な破壊力も言うまでも無くリノンより刻印の方が上なのだ。

「うるさいわね、小娘!
 イヤなものには近付かない主義なのよ!」

「私だって嫌いよ!あんなグロい魔物なんて!
 でも、サラサだったら行けるわよ!案外、食わず嫌いなだけかもよ?!」

(リノン・・・お前が一番、後退ってる。)

(こらアカン、リノンの方が錯乱しとるやんけ。)


ザザ・・・・・・


「女連中はアテにならんわ。」

「まぁ、そうだけどよー・・・
 いくら魔力が凄くても、水に火はキツイぜ?」

火属性は水属性に弱い。
打破するには2〜3倍以上の魔力量や
圧倒する事が可能な魔法構成の技術が必要と言われている。

「キッドたーん。」

「協力してくれんのか?」

「頑張ってェん☆」


ダメだこれは。


「ッ、オメーも協力し」

「ちょお待ちーや。」


トコトコ。   ←何かワザとらしい。


「姐さん、姐さん。」

「厭よん。私、魚介類とか甲殻類」

「まぁ、そう言いなや。」

以下、多分小声。

「キッドはな真面目で頑張るコが好きやーいう話やで。
 クラスメイトの俺が保証するから、ちょっと頑張ってくれへんか?」

「・・・それ・・・ホント?」

「ホ・ン・マ。」

と言って、ウ・ソ、と書く。

「ぐずぐずしとったら、リノンに先越されると思うけどなぁ?
 それとも何や、キッドの事はお遊びやその程度っちゅうことかいな?」

「う・・・」

「その点、リノンは本気やで・・・
 見た目ケンカしてばっかりやけど、内心はそらもう一直線や。
 小娘に負けてええんかなぁ・・・いや、俺はどうでもエエねんけども。」

「・・・・・・冗談、なに言ってるのかしらねえ!
 やるに決まってるでしょうに!」

「な、なんなんだ?」

(何か吹き込んだんじゃ・・・)