ACT.157 海渡/既視感
“ギュぷ・・・・・・”
「焼いてヒルダンテスにプレゼントフォーユーや!火遁、」
手を組み、指を左右2本ずつ立てたその場所に大気中の酸素が収束する。
これから放つは火炎ではなく、大気爆発―――
「喪爆天!!」
ゴ!!
ガァアアア!!!!
“ピグアッ?!”
火によるダメージではなく、大気爆発による温度上昇。
熱射病によるダメージの強化版と言ったら良いだろう。
「(動きが鈍い、だったら!)
貫け――――――ッ!フレイムバスターッ!!」
船上から巨大海蛇(っぽいもの)めがけて、紅い閃光が炸裂する。
熱によって外殻が弱っていそうだから、とか頭のいい考えの末ではなく、
単純に一番ダメージが与えられそうだから撃っただけだとは言えない。
「アーンド、キッドたんと愛のコラボレーション♪」
ガチャンッ!!
「砲撃シークエンス移行。
大気魔力濃度調整、正常―――
魔力装填完了―――ガンバレル・ロック。
システム・オールグリーン。」
何だかどこかで聞いた事のあるような雰囲気でお送りしております。
「セーフティ・リミッター解除。
OS最終調整―――完了。稼動確認。」
Shooting
Transfix of
Advanced compression magic
Roar Operating System…
(・・・なんかすっごい、既視感が・・・)
(き、気のせいですよ・・・多分。)
「S.T.A.R.システム起動!!
シューティング――――――バスターっ!!」
ズ・・・・・・・ァアアアアアッッ!!!!
“ピギャアアアアアアアアアアッッ!!!!”
強烈な氷の弾丸が、火と熱で弱まった大海蛇の腹を貫通し、
更に傷口から凍結が始まっている。
海水にも負けない速度の凍結力。
「やぁん!
大ダメージ。愛の力に勝るモノは無いのね♪」
(・・・・・・誰が愛だよ・・・)
「・・・アカン!来るで!!」
煙の中から大量の水の刃―――!
「うおおっ?!」
自分たちはもとより、船に当たりすぎれば沈没するのは必至。
「ハイ、はぁい。
もう、勢いに乗っちゃうわよん。」
サラサの刻印が輝き、大気が徐々に熱を下げて行く。
「そんなに熱いなら、避暑なんていかがかしら?」
シューティングスターの砲身の反対側にセットされたブレイドを取り出す。
「斬っちゃって運びやすくしようかしらね。」
“!!”
もう、凍結は止まらない。
先ほどの砲撃による内部からの凍結によるダメージ。
そして、外部の気温低下によって海水温度が極端に下がりつつある。
そこへ剣を媒介にした一撃を当てれば、
「雷鳴轟かせ、穿て!フリスト!!」
「なっ?!」
全て終わるはずだったが、
氷の上に光の塊が生まれ、雷鳴と共にワルキューレの1人が姿を現す。
「あなたの力見せてあげなさい!」
“フリスト、行っちゃいますっ!
クイック・ライトニング!”
バリィィイいいイイッッッ!!!!!
“ピギャアアアアアアアアアアアッッッ!!!!”
フリスト―――雷を司るワルキューレ。
その力によって氷となった身体が粉砕されて行く。
「(このまんまやと、横取りやとか言うてモメそうやから、ここは俺が。)
土遁――――――昇龍貫刃!」
海底の軟らかい砂が通常の土壌では見せない、
美しい龍となり襲い掛かる。そこに
「砂龍に纏え、火遁、業火劫炎!」
火遁の術で生み出した炎を纏わせ、攻撃力を倍増させる。
“ギャプッ?!”
「フィニッシュや。火遁・喪爆天。」
ドォ・・・・・・ンッッ!!!!
「浄化完・・・・・・」
「どうしたんだよ、ブラッド。」
そう言って、キッドも気付いた。
現れたのは新たな闖入者―――。
『へぇ・・・わたしの気配に気付いたんだ。
隠遁の魔法は得意なんだけどなァ。』
「「?!」」
黒い隊服を纏った小柄な少女が宙に浮いている。
間違いない、これはローテルダムのモノを改修した特殊な隊服。
「闇葬組・・・!」
『正解。』
(これが、闇葬組・・・・・・特殊部隊。)
リカードは初見だ。
だが、わざわざ隊服まで用意されている事だけで、その異質に気付いた。
『わたしは闇葬組副長―――セウラ。』
副長――――――?
つまり、アルベルトに継ぐ実力を持っているというのか。
「お前みたいな子供が副長って・・・」
『そっくりそのまま返すよ。
ただの人間とわたしは違う。みくびらないでよ、下等生物。』
「何ィ!」
チャキ・・・っ
「待って、キッド。
この子、“魔人”でもなければ、“魔族”でもないけど・・・
ただの人間でもないわ・・・・・・」
「え・・・?
って・・・あ・・・!」
セウラと名乗った少女の眼の色を見て分かった。
「この子の眼の色は赤紫・・・・・・
紫から赤の範囲内の色の眼は全て、
人間系魔族と人間の混血・・・・・・ダブルである証よ。」