ACT.158 海渡/憤怒
「ふおおおっ?!」
セウラと名乗った魔人から魔力の弾丸が降り注がれる。
魔法ではない。しかし―――圧縮率が桁違いだ。
「フリスト、防いで!」
“了解ですっ!”
ド!!
ゴ ゴ ゴゴッッ!!!
『!・・・やるぅ・・・
言語処理が出来る具現魔法使いなんて、
人間で千人いるかどうかってぐらいなのに・・・』
クスクスと笑う。
余裕だ―――それでも他愛もない、と。
『もしかして、主席クラス?』
「・・・へぇ、よく分かるわね。」
『そのスカートに被せてるパレオタイプの腰布・・・
どこの学校か忘れたけど、
魔術系のトップしかつけることが許されない高次魔法媒介だっよねぇ?』
そうだったのかよ!とか、キッドは申しています。
「えぇ、全学の在籍学生でトップの証、総合主席―――
王立ビサイド学院魔術科のクイーン オブ クイーンズは・・・この私、リノン・ミシュトよ。」
(マジですか。)
(いや、何でお前が知らんねん。)
ザ・・・ッ
「魔力量的に相性は私が一番いいかもね。
さっき特に何もしてないし、ここは私がやっちゃうわ。
この子のダブルの力・・・対抗出来るのは私だけよ。」
『――――――。』
「・・・?」
一瞬、セウラの表情が曇った。
何か―――癇に障る事を言ったのだろうか。
「あーら、自分だけカッコつけてキッドたんへのポイント稼ぎ?」
「ポ、ポイントって・・・
大体なんでキッドの名前が出て来るのよ!」
「青いわねェ、それだから小娘なのよ。」
ジャキンッ!!
「相性が良い?
なら、さっきの防御で同時に殺しておくべきだったわね。
このコ・・・ただのダブルじゃない。」
『――――――また、』
「「?」」
「なんだ・・・・・・?」
何か―――おかしい。
『また―――わたしを―――――――――。』
何が―――、何か、違う。
『またわたしをダブルだと言って!!!』
ゴォオオッッッ!!!!
「空間歪曲―――?!」
両手を歪む空間にねじ込み、何かを引きずり出してくる。
「ほら・・・見てみなさい。
下らない自慢をしているからこうなるのよ。」
ビリ・・・
ビリ―――ビリ―――・・・
「ッ・・・これは・・・」
ド・・・んッ!
『お前たちは全員殺す!』
現れたのは二体の―――
「機械の・・・人形・・・?」
「傀儡師か・・・!
こら面倒な奴が来たもんやな・・・!」
チャキンッ!
「並の魔術師やないぞ・・・!
具現魔法と同等レベルの難易度・・・・・・」
「それを2体同時・・・
(今の私じゃワルキューレ3体が限界・・・
この子はその気になれば5体以上同時稼動が出来る魔力を持っている・・・)」
空間歪曲の魔法を使った時点でそれは明白だった。
リノンの魔力量は人間としてはトップクラスを誇る。
だが、セウラは魔族と人間の混血―――質からしてとてつもない。
更に問題は、混血となった魔族がどの種族かだ。
それによって大きく、戦況は左右される。特に―――
『わたしの中にエルフの血が流れているだけでダブルだなんて・・・言わせない。』
その血だけはあって欲しくない一つだ。
「エルフ・・・って、一番人間に近い魔族じゃねーか!」
「ヤバいョ!
間違いなく、光系統マスターしてるョ!」
そう、エルフは人間に最も近い魔族。
魔力の根幹をなす6つの属性(火・水・氷・風・雷・地)を
3つの系統に分けるのが光・闇・無の系統属性。
人間の9割以上が元来から、やや光〜無系統の属性を操ることが可能で、
魔族の8割以上が闇に偏った属性を操れる。
しかし、エルフは魔族でありながら光を駆る特異な種族。
「―――六大属性も何も無い、
完全な光だけの魔法を操れる魔族としては唯一の存在・・・
(私は六大属性全てを使えて、光系統寄り。
でも、光としては弱い・・・間違いなく、押されて負ける。)」
真逆の闇を使えても、同等の力でなければ意味は無い。
対抗手段は、無系統化した魔力による平均ダメージ狙い。
無系統なら平均ダメージを与えられ、防御も出来る。
『お前たち・・・人間がわたしにダブルなんて言って・・・
でも―――そんなお前たちは今、わたしに殺される!』
(何なんだ・・・この女の子・・・
何でこんなに憎いって感情が・・・)
『フフ・・・・・・
行け!!ガーディアンドールズ!』
ゴッ!!