ACT.159 海渡/一枚上手
「何や、俺狙いか!」
ガキィイイッ!!!
「ッ・・・」
凄まじく重い一撃―――。
ブラッドの忍者刀が悲鳴を上げる。
「は・・・・ァアアアッ!!!」
ドガァッ!!!
『――――――・・・へぇ、忍者にしてはやるんだ。』
吹き飛ばされた人形を見て笑う。
『どっちかっていうと体術が得意とか?』
「・・・(このガキ・・・・・・
俺が人形に忍術をブチ当てる事を見越してた・・・
それをせずにわざわざ吹き飛ばした事で得意なものも・・・)」
判断力、観察力が見た目とは違って、かなりある。
コーデリアぐらい(見た目10歳)の幼さが残る少女が、
こう激昂しながら冷静に対処する様は異様だ。
「な・・・何なんだよ・・・この子は・・・」
『魔人名セウラ。言ったでしょう?
そしてお前たちが言う、ダブルなんて忌まわしい存在だよ。』
憎しみと悲哀が混濁する感情・・・
そこには“負”しか存在しない。
『そんな忌まわしい呼び名でわざわざ、この私を呼んだ・・・
だから、バラバラにしてやる。行け!!』
もう一体の巨大ノコギリを持った人形がリカードに向かって襲い掛かる。
間違いない・・・コーデリアを奪う気だ。
「姫には触れさせはしない。」
思い切り砕き裂かんとするノコギリに恐れを抱かず、右手を差し出し受け止める。
刀とはまた違う破壊力を持つこの凶器・・・だが、
「土遁。」
リカードの魔力質上、最も得意な土の属性―――
土遁の忍術を活用できる金属兵器ならば、
一瞬にして切れ味の鋭い凶器から、愚鈍な塊へと変化する。
『!―――・・・』
「流石に人形全体をこうする事は出来ないが・・・
私がこの場に居る限り、所有者の魔力が行き渡らない金属系凶器は効果を薄める。」
ザ・・・ッ
「忍が派手に暴れないとでも思ったか。」
『いいえ・・・
予想以上に魔力伝導が上手いなァ・・・って。
でも・・・無理矢理にでも壊さなかったのは失策だよ。』
人形が動―――
「動けないだろう。
この一体は壊せなかった代わりに既に動きを留めている。」
『!!
(鋼鉄線・・・・・・手癖が悪いんだ。)』
ギシ・・・ッ
「フフ・・・じゃ、これとはお別れよ。」
合図を読んでサラサが現れる。
ソードを逆手に持ち、半身を引いて斬撃箇所に意識を集中・・・
「戒天止血斬。」
ズ・・・んッ。
『1つ・・・台無しか・・・』
「いや、2つともだぜ。」
『・・・やっぱり、予想以上にやるんだ。』
みれば、最後の魔力を使って、
ワルキューレ・フリストがもう1つの人形を取り押さえている。
あとはキッドがフレイムバスターを放てば、全てが終わる。
『・・・ふふ・・・・・・
良いデータ取らせてもらったよ。』
「何?」
残りの一体から宝石が飛び出し、セウラの手に乗る。
輝きが通常とは異なる・・・何らかの媒介だろう。
『海蛇との戦闘、わたしとのデモンストレーション。
これに大体の事は入れさせてもらったよ。
少しは対策を練らないと、だからね・・・
まぁ・・・でも。ヒルダンテス様や隊長には誰も適わないかな。』
「なんだと・・・!」
『アハハ!
悔しかったら本土まで辿り着いてみてよ!
着いたらそうだねぇ・・・誰か一人はわたしが確実に酷い殺し方をしてあげる。
じゃあねぇ・・・』
ヴ・・・んッ
「・・・・・・くそ・・・」
「・・・・・・負け・・・やなぁ・・・
相手が姫さんみたいな女の子やから、どっかで手ぇ抜いてもーた。
次に遭ったときは・・・・・・やるしかないなぁ。」