ACT.164 海渡/都合
「立場って・・・・・・」
「私たちは戦いを終わらせたい、
そのために戦っているただの学生よ!?」
いや、違う。
学生は正当防衛のために戦えたとしても、
「敵性国家に対する軍事行動に参加できるわけが無いわよね。」
「「―――――――――!」」
そうだ。
今回の行動に限った事ではない。
コーデリア暗殺未遂事件の時も、
ユーリケイルでの戦闘の時も、
本来なら戦えない、戦ってはいけないハズだった。
「総隊長は、お前らに罪を着せない為に
お前らを騎兵隊と魔術士団所属の特務隊員にしたんや。」
「で、でもそれは・・・」
「クライセント・クロウ総隊長が勝手にした事・・・っちゅうんか?
それは都合が良すぎるんとちゃうか?」
本当に――――――都合が良い話なのか。
少なくとも隊長は、2人に殺人を求めてなど居ない。
あくまで保身の為にそうしてくれた。
「それは、隊長の善意よ。
けど・・・アナタ達がそれを行使している以上、
最低限の軍人としてのくくりには」
「待て、それは極論ではないか?
隊長はそんな事決して望んではいないし、
それに従う必要もないとお考えのハズ。」
そう、リカードが言う通り、クライセントの想いはそれなのだ。
だが・・・戦場という現実で、果たしてそれを貫けるのだろうか。
サラサはそれを言いたい。
『ふむ、しかし我々は殺そうが殺されようが、
特段、罪を問うつもりはありませんけれどね。』
「「「!!!!」」」
ザ・・・ッ!!!
「お前・・・!
アルベルト・ラライ・・・!!」
いつの間に、船に乗り込んできた。
気配など無かった。いや・・・こんなに滅茶苦茶な状況で、
そんな正確に測れるわけない・・・か。
『お久しぶりですね、キッド・ベルビオス君。』
黒眼鏡の奥で僅かに瞳が光る。
こんな事で悩む暇があるのか?と笑っている様に。
「ッ・・・・・・」
『まぁまぁ。
私は船の上で戦うつもりはありません。
足が無くなるのは嫌でしょう?逃げられなくなるのですから。』
ザッ・・・
『拒否は認めません。
基地に上陸して頂き、コーデリア姫を賭けて私と戦って頂きます。
アナタ達全員にそれなりの者を用意していますのでね・・・』
「・・・・・・」
話に乗ってはいけない。
だが、キッドは今すぐにでも殴れるのならば、それを飲む気だ。
しかし・・・・・・ここで乗るのは余りに危険すぎる。
「いいでしょう。」
「姫・・・?!」
コーデリアの口調が違う。
いつもの、子供の彼女ではない。
“本気”―――なのか。
「コーデリア・ウィル・ローテルダムの名に賭け、
この場での戦闘、望み通り受けさせて頂きます。」
『おや・・・それは嬉しい誤算だ。
やはり獅子王国の血筋は違いますねぇ・・・
あなたに敬意を表して、我々も正々堂々戦いましょう。』
サラサへのあてつけの様なセリフだが、
当の本人は気にしていない。
「アナタがアルベルト・ラライなのねぇ。
ちょっとは知ってるわよ。」
『おや・・・
その様子ですと、色々とありそうですね。』
「まぁ・・・噂程度だけれど。」
『フ・・・・・・・
貴女にも良い相手を用意していますよ、さぁ、どうぞこちらへ。』