ACT.166 海渡/第三の存在


「俺の相手はお前か・・・さっさと始めようやないか。」


チャキ・・・ッ


『・・・―――――――――殺す。』

「・・・・・・何や・・・?」

背が高くなっているように見える・・・いや・・・
手足も首と同じ様に長くゆっくりと伸びてゆく・・・

『我が名は・・・“ナイン”。
 666の献体の最高位、サタンナイツの名を冠する者。』


ザリ・・・ッ


『・・・我々は魔物とも人間ともダブルとも違う新たな存在。
 命により・・・お前を殺すぞ、下等生物!』


グオ――――――ンッ!!


「――――――!(腕が伸びる―――!?)」

リーチが変わり、間合いも変化するが忍者らしく軽々と避けきる。
ある程度の計算と感覚でイレギュラーな攻撃にも対応できる。
が―――

『ハアアアアッ!!!』

首が高速で伸び―――――――――

「がっ・・・・・・!!」

捻り込むように穿つ―――!

「ぐ・・・」

『質量の軽い手などでハなく・・・!
 身体でも最モ重い頭なラばスピードもあり、当たるだろう!!』

「ナメんなアホ!」

吹き飛びながら、魔力を両手に集中させ口元にその手を揃える。
更に攻撃範囲を固定し、一気に放つ!

「ハ・・・ッ!」


            ゴ ウ    カ   ゴ ウ  エ ン
火 遁 ・ 業 火 劫 炎!!!


『ムゥ・・・ッ!!!』

長く伸びすぎた首に焔が纏わり付き、焼き尽くさんとする。
だが、

『それがドウシタ!』

「!」

有り得ない程の大量の魔力放出―――!
ただの魔物でもなければ、本当に人間でもない。

『忍者とはコンナものか!!!』


追撃に次ぐ追撃―――、
果ては乱打乱撃となり軽々と吹き飛ばされる。


「ぐは・・・っ・・・!」


ドシャッ!


「・・・っ・・・ぐ。
 (何・・・なんや・・・リーチも間合いも読みきられへん・・・)」

間合いでは無いと迂闊に飛び込めば、
伸びるだけでなくしなやかに運動する腕に殴られ、
完全に間合いの外から攻撃しても、さっきのように魔力放出だけで爆散される。

「・・・。
 (忍術は魔力を練り上げ、分子・原子レベルに働きかける術。
  魔法とは根本的にちゃうし、魔力で対抗する事が可能。)」


つまり、魔術士に対しては圧倒的に不利な術。
そもそも、天真の忍術は暗殺や電撃・奇襲戦において最大の効果を持つ。
こんな風に正々堂々、面と向かってやるには向いていない。


「――――――さてと、どないしたもんかな。」

『諦メろ。』

「・・・んー、それは出来んなァ。」


チャキッ―――


「まぁ、フツーの斬撃や打撃は効き目は薄そうやけども。これなら。」

忍者刀に風属性の魔力を付加する。
元々、斬撃に優れるこの属性に刀を媒介とする・・・それによって更に鋭さが増す。

『来い。殺す。諦メろ。死ね。』

両腕を大きく後ろに振りながら走ってくる。

「――――――!」

『死ねェエエエエエエッ!!!』

疾走による加速で腕の振りが強化され、
ブラッドの頭を叩き潰すように、ハサミの如く二つの拳打が迫る!

「ス――――――ッ!!」



     バ    ンッ!!!



『避け・・・!?』

インパクトの瞬間にしゃがむ事で簡単に避ける。
が、拳は組み合わされ、そのまま叩き落される。

『かぁアアアッ!!!』

「そんなもん、分かってこうしてるんや。」



風遁――――――風刃!



『ぐが・・・っ!手が・・・ッ!!!』

風の刃が、刀の刃によって形状を良質化させられている。
斬撃の強化――――――!

この一瞬に全てを賭けた斬撃で、両手を組まれたまま斬り捨てる。

『あぐあああっ!!?』

余りに伸び縮みする体だから、神経など通っていないと思ったが、
どうやら可哀想に図太く繋がっていたらしい。

「今度こそ、喰らえ。」

『火・・・ッ!』

「正解。」




火 遁 ・ 業 火 劫 炎