ACT.170 海渡/卑怯



『私の剣技は“千崩”と言います。』

ザッ・・・

『色々と種類があるのですがね・・・
 技の一つ一つは全て、千の刃と同じだけの力を持ちます。』


ズバッッ!!!


「――――――ァッ!!!ってぇっ!また・・・・・・!」

『君の火炎斬や火炎突きと同じ、
 魔力を武装に纏わせて放つ飛翔系・・・
 私の場合これを千崩の壱之太刀と名付けています。もちろん・・・』


バシュッ!!


「アッ・・・・・・っ!!!」

次は左腕から血が流れる。

『不用意に間合いに入れば、実態の刃で斬ります。
 まぁ、安心して下さい・・・私は魔力の扱いには長けていない。
 君の扱う飛翔斬撃とは威力が異なります。』

「・・・威力が下なだけで・・・速さは上だろーが・・・!」

『おや、冷静な分析ですね。その通りです。
 抜刀術ですから、通常の斬撃よりは幾分か・・・
 ほんの些細な差ですが・・・とても、速いですよ。』

その些細な差が、視認出来ない速さの斬撃を創り出している。
絶妙な力加減と身体のバランス・・・その上に剣の技術があってこそ成り立つ妙技。

「―――――――――く」


対抗策を練る・・・か?


バカ言え・・・
こんな巧すぎる相手に何の小細工を仕掛けるっていうんだ・・・!

さっき見切れたのも偶然・・・
今度は分かっていても次の瞬間には斬られてしまう。


『・・・フフ・・・親子ですね・・・
 まぁ、彼と違って君はまだ、分析というモノが出来るようです。が、』


ザ       
     ンッ!!


『なんにしても死にますがね!』

「うぉおおおおおおおっ!!!!!」

『!!!』


身体中から焔が吹き荒れる・・・!
刻印の力を解放しているのか・・・

飛び込むアルベルトめがけて、焔が駆け・・・
爆破によって吹き飛ばす!


『ぐ・・・本当に君は面白い・・・!
 馬鹿正直に剣だけで挑んでくると思いましたが、これでこそ真の殺し合いですよ!』

ザ・・・ッ!

『何も気にする事などありません。
 偶然であれなんであれ、自分が扱う力ならばそれはあなた自身の実力なのです。
 君はその力を使わなければ私には勝てない。命を守れない。ですが、』



そ の 力 さ え あ れ ば 敵 を 殺 す 事 が 出 来 る 。



「―――――――――。」

『さぁ、その力を存分に使って初めて私と互角ならば、
 更に力を示してください。私は見たい。君が操る力の全てを!』

「・・・勘違いすんな。俺は誰も殺さない。」

不殺なんていう大きすぎるモノを堂々と掲げる事もしない。
けれど、わざわざ殺す気で戦う事なんて絶対にしない。したくない。

「命を奪えば、誰かが泣く。
 それが殺された人を大切に思う人かもしれないし、その人自身かもしれない。」

『・・・それが不殺の信念なんですよ。
 前提があろうが無かろうが、敵を殺さない時点で不殺なのです。
 君は今、自分の命を奪われようとしているんですよ・・・?』

「ああ。俺が死んで誰が泣いてくれるかは分からないけど、
 俺はアンタに殺されるつもりなんて無い。アンタを殺すつもりもない!!」


ザァ・・・ッ!!!


「全力で!!ブッ潰すだけだ!!!!」

全身の焔が猛り、渦巻く。
今までに無い状態だが、キッドの身体は耐えている・・・
龍の焔を扱いこなそうとしている・・・

『・・・・・・良い気迫です。
 そして、刻印の力を短期間で操ろうとしている君の精神力・・・
 それだけ揃う敵が相手ならば、私もお応えしなくてはならない。』


千崩の弐之太刀で。


「―――――――――!!!」


抜刀ではない――――――だが、


「速――――――!」



が――――――ッ!
   キィィイインッ!!!



『――――――!』

「サシの勝負中、悪いなァ・・・・・・
 コイツを殺される訳にはいかんのや・・・」

ブラッドが割って入り、連続斬撃を食い止めてくれたのか・・・
けど、そんなの必要ない!

「バカ野郎!お前・・・!
 コイツとは俺が戦ってるんだよ!邪魔すんな!!」

「スマンな・・・俺は忍や・・・
 武士道やら、騎士道やらは持ち合わせとらんねん。
 それに親友のピンチに手ェこまねくほど、薄情でもないんや。」

『・・・・・・よく言いますねぇ・・・
 キッド君が倒された後、自分が相手をする事になっても、
 一対一では限りなく勝算が無いから、二対一に持ち込もうという魂胆なのでしょう?』

チャキ・・・ッ

『いけませんねぇ・・・
 だから、忍者は嫌いなんですよ・・・
 何でもかんでも邪魔をする・・・』

「何とでも言え。これは戦争や!
 弱いモンを一方的に殺したり、利用したりならいざ知らず、
 この程度卑怯でも何でもあらへんやろ・・・クソが。」

『・・・フム、それもそうですねぇ。
 いいでしょう・・・・・・2人まとめて死んで頂きましょうか。』