ACT.178 トルレイト/思惑
『ぐが・・・っ!!』
ゼロ距離爆破!
しかも指向性を持たせているから、
リカードには何ら影響が出ない。
「考えを改めろ。殺すのはこちらの方だ。」
爆破で吹き飛ぶはずのローズを追いかけ掴む!
そして、後ろ手に持った短刀に魔力を込めて行く。
『!』
「雷遁―――」
テンライコウ
天 雷 吼 ! !
『か・・・っ!』
切先から放たれた雷の刃!
一瞬にして感電し、意識を失
『なもん、この私に効くかよ!!クソがァッ!!』
「!?」
いつの間にか右手にトンファーを持っている。
トンファーは超近接兵装・・・・・・
撃たれればひとたまりも無い!
『殺すッ!!』
ドゴ・・・ッ!!
「ぐ・・・・・・っ!」
何とか受け止めて見せるも、左手が麻痺している。
しばらくは動かせそうに無い・・・
「リカ!」
「――――――先に行け。
このぐらい、私で十分に戦える・・・・・・時間を無駄に使うな。」
「そうねぇ・・・
せっかく代わってくれたんだし、
ついでに時間稼ぎもお願いしたいわ。行きましょ。」
タンッと一足先に駆けて行く。
「ったく、あの姐さんは・・・・・・
しゃーない!俺とキッド、その他大勢は行くで!
閃迅組のオッサンは5分後や。」
「心得た。
そこまでに、リカード殿が勝っておられるだろう。」
その言葉に見事に反応する。
『テメェらナメやがってェッ!誰が行かせるかよ!!』
こちらの動きを止めようとするが、リカードが立ちはだかる。
「お前の相手は私だ。
あと4分50秒で殺すから、覚悟しろ。」
『ッ・・・・・・!!』
本当にバカ丸出しと言わんばかりの反応・・・
よくこんな女を差し向けてくるものだと、逆に感心してしまう。
(・・・・・・。
そもそも、ここにきて襲ってくる意味は何だ・・・?)
誘い込んできた訳でもないだろう・・・
ブラッドたちの先行隊に何かを仕掛けるというのも、あまり効果的では無い。
となれば・・・
「・・・・・・なるほど、そういう事か・・・・・・」
『ッ、何が言いたいんだよ!』
「頭の悪い奴が独断で行動を起こさない方が良いと思っただけだ。」
カッとローズの顔が紅潮する。
『テメェッ!!』
あぁ、もう本当に隙だらけの攻撃だ。
余りにも頭の悪さを露呈しすぎていて呆れてしまう。
どうにもリカードとは性格が真逆すぎて、
余計に動きが分かってしまう。
あとは、こちらが油断さえしなければ勝てる相手だ。
『うらァッ!!!!』
「土遁・鐵柩刺(クロガネヅキ)。」
ガバ―――と、
飛び掛るローズの両脇から岩石の壁が現れ、喰らい尽くす!
『な・・・これは・・・っ!!』
内側から何度叩いても意味が無い・・・
それどころか、トンファーは砕け、
手から血が流れている事に気が付く。
『ぐ・・・!』
「もう、終わりだ。」
徐々に内部壁にトゲが生まれる。
『!』
暗闇でよく分からないが、
この手の痛みはそれのせいだとようやく気付く。
『クソ女がァッ!
“砕け、爆(は)ぜろ”!!!』
「!」
「リカード殿!魔法ですぞ!!」
一瞬にして岩石の棺から魔力が溢れ出している。
これが魔人の底力という事か・・・!
『ルガテファイズ!!』
閃光が迸り、棺は跡形も無く消え去る・・・
「っ・・・・・・
(危なかった・・・・・・)」
『ぐ・・・
この女・・・・・・また邪魔しやがって・・・!
テメェのせいで、紅のガキを殺し損ねたじゃねーか!!クソが!!』
(紅・・・・・・
キッド殿のことか・・・?!)
『チクショウ・・・ッ!』
自信の魔法の影響を受けたのか、口から血が流れている。
それをプッと吐き捨て、踵を返す。
『――――――今回はアタシの負けにしておいてやるよ、クソ女・・・ッ!
次に遭ったときは、確実にバラバラにしてやるから楽しみにしてな!』
そう言い残して、去って行った。
その諦めの良さが、逆に不気味になるように・・・
「・・・・・・何だったのでしょうか。あの女は・・・」
「・・・どうやら、キッドくんに用があったみたいだが・・・
あのローズと言う女は、ヒルダンテスの命令でやって来たとは・・・」
そう・・・・・・キッドを狙うならば、
ヒルダンテスと初めて戦ったあの時に、あの男が殺しているハズなのだ。
「・・・何か、
別の思惑が動いているように思えてなりませんな・・・」
「・・・・・・ええ・・・」