ACT.180 トルレイト/脱出考察


トルレイト城

「あーもう!
 私の魔法がこんな簡単に壊れるなんてありえないって!!」

ギャーギャーとリノンが暴れている。
アルベルトが部屋を去ってから、
ずっとS級クラスの魔法を使ってみたりしているのだが、
ものの見事に魔法の構成を壊されてしまっているのだ。

「ちょっと落ち着こうョ。リノーン。」

「ぁあああ!!
 これは私のプライドに関わる問題なのよ!」

「ダイジョブ、ダイジョブ。
 冥王と呼ばれる魔法少女だって、これはさすがに手こずるョ。」

それは色んな意味で危ないです。

「むぅ・・・・・・」

「魔力を分解する鉱石・・・
 って、なんか矛盾してるよーな・・・」

「何が?」

コーデリアの疑問に答えている時間は無いが、
とりあえず聞いてみる。

「だってさー、大気魔力って色々な物質に入ってるんでしょ?
 魔力があるから、抵抗・・・魔力干渉が生まれるんだよね。」

「そうよ。
 魔力を最低限量もしか持てないゼロでも、
 魔力干渉は多少にあるけど・・・・・・あぁ、なるほど・・・」

言われてみて気付いた。
魔力を分解すると言う鉱石の矛盾・・・

「鉱石自体の魔力まで分解しかねないよね・・・
 って、何にしても壊さなきゃならないんだから、どーでもいいでしょ。」

「アハハ、それもそーだねー☆」

振り出しに戻る。

「・・・・・・とはいえ・・・
 鉱石の中にある魔力・・・その隙をついてやれば、あるいは・・・」

ぐっと力を込める。

「あのぅ、リノンちゃーん?
 コーディ的にはもうS級は止めてほしいかなー、なんて・・・」

しかし、リノンの右の拳には極小の魔法陣が誕生していた。
あと、人の話は全く聞いていない。

「拳打を使うのは純然たる魔法少女じゃないョ!
 むしろ、勇者王とか呼ばれちゃうタイプの魔法少女だョ!?」

「私はオールラウンドの魔術士なの!
 やれる事は全部やる主義!だから・・・・・・っ!!」

引いた右手を一気に壁に撃ち立て、
魔法陣から魔力の弾丸を解き放つ!!

「はァアアッ!!」

拳と壁の間は僅かに数十センチ。
その隙間の間で魔力が放出されては、
分散されるというサイクルを繰り返している。

「無理だョ!
 いくらリノンの魔力量が桁違いだからって、
 そんな無茶をしたら・・・!」

「ふ・・・
 ぐ・・・問題・・・無し!!」

精一杯の強がり・・・
だが、結果は少しずつ出てきている。

「ッ・・・・・・
 (魔力放出と拡散の繰り返し・・・・・・
 勘違いしちゃいけないのは「拡散=全てなくなる」・・・
 っていう事じゃないってこと。)」

徐々に、拳と壁の間の魔力濃度が高くなっていく。
もちろん、その上昇率は微々たるものだが・・・

「(確実にこれが攻略の鍵になる・・・!)
 ・・・っと。」

ふっと手を緩める。
魔力の生成・放出も途端になくなり、静けさが戻ってきた。

「え?」

「・・・ちょっとした実験のつもりだったのよ。
 まぁ、実験が本気になるのが私の悪いクセなんだけど。」

(・・・・・・・・・。
 絶対、最初から本気だったョ。)

お察し下さい。

「と、ゆー訳で3時間ぐらいしたら、
 コーディにも手伝ってもらうから。」

「へ?」

「さっきのでしっかり攻略の糸口掴んだの。
 そのためには、別の人間の魔力があったほうが得策なのよ。
 まぁ・・・任せてよ。」