ACT.32 抗争/匂い
そうして、更に3日が過ぎた。
新聖暦2590年7月13日
「姫の様子はどーなんスか?」
「やっと・・・いえ、見た限りでは立ち直られております・・・
しかし・・・これで直系の肉親は全て・・・・・・」
「・・・居るとすれば、前国王(コーデリアの父)の弟・・・
国弟ラゥム・・・・・・か。
恐らく、今は後継者に関する最高機密会議の調整でもしているんだろう・・・・・・?」
ロックハートの言葉にリカードが頷く。
「・・・そうか・・・なら、暫くビサイドにでも消えていよう。」
ザッ・・・
「あ・・・?何でだよ・・・・・・」
「彼は今、ソーライト事件の最重要参考人として国際指名手配・・・
しかし、事が事であるだけに秘密裏にではあるけれど・・・」
あくまで参考人だが、無論、嫌疑もある。
「・・・別に居ても構わんが、変装は面倒なんでな・・・」
「あの・・・居場所を教えてくれるってことはこれからも協力を・・・?」
「・・・・・・あまり勘違いはするな。そのアホの中の龍の『監視』が役割でもある。
無論・・・コーデリア姫を連中の手に渡す訳にはいかん・・・
必然的に俺の刻印が必要だからな・・・・・・」
「・・・・・・・・・なにがアホだよ。バカヤロウ。」
ちゃリンっ! パシッ!
「――――――。これは・・・・・・」
「俺ん家の鍵だよ。テキトーに使っていいぜ・・・
どーせ、俺のデータ拾ってんだろうし、家ぐらい分かるだろ。」
「・・・・・・面白い奴だ・・・まぁいい。好意は受け取る。」
バタン・・・
「・・・どーいう心境の変化・・・?」
確かに・・・
「・・・どーったって・・・アイツも大切な人を守ろうとしてるみてぇだし、
アイツは俺の中の龍を危険視して、監視してるだけであって敵じゃねぇしな。」
「・・・大人になったじゃない。」
「まぁな・・・・・・って、テメェ・・・」
「そこでムキになったら、子供(キッド)決定ね。」
一枚上手でした。
「そーいや、先輩は・・・?」
(無理矢理話を変えた・・・)
「その会議に・・・コーデリア姫を推す国王派の1人として、
総隊長の嘆願と彼の希望から参加する事に・・・・・・」
「「ええっっ!?」」
「・・・ここでは人が多いので外で。姫は今、メノウが見ていますのでご安心を。」
「「は・・・はぁ・・・・・・」」
アルファン 控え室
「しっかし・・・こんなコトがあっていいのかね・・・」
「・・・レオン国王がこんな形で亡くなるとは・・・思いもしなかった・・・」
簡単なプロテクターやら魔力制御リングなど試合に必要なモノを身につけながら、
二人の選手があーだ、こうだと喋っている。
「・・・・・・匂うね・・・」
「「あ・・・・・・?」」
「・・・どうも、僕の第六感はこの事件の裏に巨大な陰謀が渦巻いていると感じているよ。」
金色の髪が靡くが、風があるわけでは無い。
もちろん、自分で靡かせているのだ。
それがクロード・ネフェルテムである。
「(また始まったよ・・・まぁ、当たるんだけどよ。)んで?どーなんだよ。」
ザッ。
「一般的に見て、国王派と国弟派の抗争が始まるのは目に見えている・・・
が、しかし、この魔物の大襲撃は人間によって仕組まれたモノ・・・だとかね。」
「お・・・おいおい・・・・・・」
「そりゃ、小説読みすぎだろ・・・」
「・・・勿論、僕も純粋に魔界の穢れた連中の仕業だとは思いたいけどね。」
「・・・・・・ま、行こうぜ。俺たちは俺達の方法でみんなを励まさねぇとな。」
「おうよ、全チーム一致で特別杯を開催する事になったしな。
守る為の武術の基礎を広められたレオン国王追悼の為にも。」
「フッ・・・・・・そんな事は百も承知さ。
さて・・・悲しみに打ちひしがれた僕らの子猫達が待っている。急ごうではないか。」
「「お、おう。(イマドキ、子猫はねぇよな・・・・・・)」」
ないな。