ACT.33 抗争/根底


城下町 喫茶店

「・・・ここなら心配ないと思う・・・」

「だ・・・大丈夫なんスかね・・・」

「いつもと雰囲気違えてるし(やっぱり美人だし。)」

改めて負けた。

「・・・無論、怪しい動きをしている輩は私の権限で捕えるので安心していいですよ。」

かちゃ・・・

「順序立てて話しますが・・・分からない事があれば、直ぐに聞いてくれれば。」

「「お願いします。」」

「・・・王族が第一子筋の『国王派』と兄弟筋の『国弟派』が対立している事は、
 恐らく幾度となく記事で取り上げられている故にご存知でしょう。」

「確か・・・国弟派のリーダーはラゥム・・・だったっけ?(あの胡散臭い奴・・・)」

二、三度テレビで見た事があるが、
レオン国王やコーデリアの父などとは全く違うタイプだったのを良く覚えている。

「・・・そう。コーデリア様の叔父にあたる方で、
 前国王・・・つまり、コーデリア様の父上とはご兄弟。無論、向こうが弟君。」

聞くので精一杯なのでコーヒーを飲む暇すらない・・・
というより、飲む為に来たのではなく、聞くために来たのだ。

「今になってこの対立が浮上してきましたが・・・
 実際の所・・・このローテルダムの元となった国家が
 建国された数千年前から続いている・・・」

「は・・・はぁ・・・?そんなに長い間アホな勢力争いを・・・!?」

「・・・一般人から見れば、確かに愚かに思えるだろうが・・・
 ある時代の国王派は無茶をやらかす連中であったりと様々・・・
 一概にこの行為が悪とは言えない・・・・・・しかし・・・ラゥム様は違う・・・」

『様』をつける事に多少の不快感があるように、
いやあからさまにそう見えるし、そう見えるように話している。

「彼は・・・・・・この国を根底から覆すつもりだ。」

「根底から・・・・・・・・・?」

少し分かり辛い。

「先日お亡くなりになられたレオン国王の父君の代・・・
 つまりコーデリア姫の曾祖父の代から、騎兵隊は対人を主とした軍隊ではなく、
 デーモンバスターの様に魔界に対抗する部隊として再結成された。
 この百余年・・・国に攻められる事は有ったが、攻めたことは無い。」

この国の基本・・・絶対平和・・・攻められない限り争わない。

「・・・・・・しかし・・・」

カチャ・・・ん。

「彼は・・・・・・それを潰すつもりで居る・・・」

「なっ・・・・・・!」

「絶対平和に準ずると言う事はすなわち、
 この国の今有る領土だけを守ると言う事・・・裏返せば・・・」

「・・・・・・・・・今の領土から大きくなることは無い・・・
 むしろ、減る危険性の方が高い・・・っていうコトですか・・・?」

ローテルダムの存在する東大陸の隣、中央大陸に存在する国家などは常に狙っている。
こちらの理念など関係なく、領土侵犯、挙句の略奪は考えられる。

「その通り・・・いわゆる『合法的』な手段を使わない限り増えることは無い。
 そもそも、国の財産とは国土が先ず第一にある。
 例え、支える民が居たとしても更にその基盤となる大地がなければ意味が無い。
 言い換えれば、領土が増えれば民はそれだけ増え、単純計算でも得られるモノも。
 もちろん相応の歳出もあるが、生産力があれば補える。それが意味すること―――」

・・・戦争――――――?

と、キッドとリノン、2人同時に口ずさむ。

「・・・もし彼が次期国王になれば、その軍事的権限を以って
 準備が整い次第・・・そうなるでしょう・・・・・・」

バンッ!!

「ふざけんなよ・・・!」

「ちょっ・・・店の中なんだから、落ち着いてよ!」

「わ・・・悪ぃ・・・・・・」

回りを気にしてみるが、少し驚かれたぐらいで怪しそうな人間は居ない。

「・・・だからこそ・・・国王派の政治家や騎兵隊の総隊長を始めとする者たちは、
 その愚行を未然に防ぐ為にコーデリア様を何としてでも女王にせねばならない。
 それは姫を利用している・・・しかし、許していてはならない。」

「・・・姫を推さなきゃならない理由だとかはちゃんと分かったッス・・・
 けど・・・先輩がどうして、加わらなければ・・・?」

「・・・・・・ソウジ様・・・いや・・・ソウジの姉カエデは・・・」


・・・―――。


「2年前のトルレイト帝国及び魔界との大戦という三つ巴の中で死んでいる・・・」

「・・・ソウジさんのお姉さんと・・・知り合い・・・なんですか?」

「・・・・・・私とメノウとカエデは同期の入隊です。」

「そうなんスか・・・・・・」

(・・・メノウさんも“入隊”・・・・・・?)

「話に戻りましょう。さっきの言い方では・・・ただの戦死と思われてしまう・・・が、
 実際は違う・・・総隊長・・・当時は国王派の大隊第一中隊の隊長だったか・・・
 ともかく彼が指揮する部隊の中に彼女は居た・・・ある戦場で事件は起こった。」