ACT.34 抗争/挑発
「「・・・事件・・・・・・」」
「・・・・・・魔界の軍勢が国王派の部隊・・・
クライセント・クロウ現総隊長が所属する第一大隊に押し寄せて来ていた・・・
取り囲まれる前に打破するべく小隊を2つを第二大隊に送った・・・しかし・・・」
カラン・・・ッ!
「あ・・・・・・」
リノンのスプーンが落ちてしまった・・・
話を止めてしまったと思ったが、リカードは構わず続けている。
「しかし・・・その二小隊が帰ってくることはなかった。」
「・・・帰ってこなかったって・・・その小隊が部隊を見捨てて逃げた・・・?」
「・・・総隊長がそんな程度の低い事をする様な輩を下に置く訳は無い・・・
“国弟派の裏切り”・・・救援要請に来た第一大隊所属のその小隊を
国弟が指揮する第二大隊の者達が殺したのです。」
「「―――――――――!」」
まさか。
自分達も知っている、あの様な時にそんな事があったとは思えない。
「・・・残念ながら確証は無い・・・しかし、聞いた事や当時の詳細な資料から、
それしか考えられない上に全て『刀傷』による出血多量死・・・
確実に人為的な殺人であるのは明らか・・・
様々な条件、状況を考えても・・・国弟派しか有り得ない。」
本当にそんな事があったのだろうか・・・そう思いたい。
「・・・数で圧倒的に劣っていた第一大隊が敵う訳もなく撤退・・・
更に代償は大きすぎた・・・・・・その混戦の中でカエデは命を落とした。」
ギリッ・・・・・・
「もしも、第二大隊の増援さえあれば、カエデや優秀な者達も死なずに済んだ・・・
しかし・・・・・・私はカエデの腕を知っている。
カエデは恐らく今でも最強クラスの剣士だ。15で免許皆伝した程の・・・」
「「―――――――――。」」
一応に知っている。カエデ・イムラ。
ソウジの姉であり、神刀流総師範に17で就任した天才剣士―――
彼女に憧れて剣を始めた少女も多かったのをキッドはよく覚えている。
「だが、それ程の腕を持つカエデでさえも適わなかった敵・・・それがソウジの仇だ。
彼は見た・・・・・・無残に切り裂かれ、何とか清められたカエデの姿を。」
「・・・切り裂かれた・・・・・・魔物・・・・・・?」
「・・・魔物では無い・・・魔族・・・恐らく・・・鬼だ・・・」
「!魔界の中で最も強いとされる種族の1つ・・・・・・」
「・・・あのやり口からしてそうとしか・・・」
グ・・・・・・ッ
「・・・・・・・・・その後・・・戦争には勝利し・・・
皮肉にも総隊長は今の地位に就いた・・・愛していた人間を代償にして・・・」
「・・・カエデさんはあの人の・・・・・・・・・」
「・・・総隊長は今でも悔やみ続けている・・・
あの状況でもどうして共に戦ってやれなかったのか・・・と。
彼ほど、この醜い私利私欲の覇権争いを終わらせたいと思っている人間は居ないだろう。
それは・・・ソウジも同じ・・・2度と見たく無い・・・
愛する人間をそんな血みどろの中で失う光景を・・・だから姫を推しているのです。
そうせざるを得ない・・・とも言えますが・・・・・・」
苦しい、と思う。
自分たちもまた、その醜い争いの中にコーデリアという少女を巻き込んでいる事に。
「・・・・・・・・・」
「・・・姫を・・・女王様にする事でこの争いを終わらせられたら・・・」
「・・・・・・なら、私たちは決まってます。」
「俺達、全面協力するッスよ。個人的な話・・・俺のオヤジももしかしたら、
裏切りで殺されたのかもしんねぇし・・・・・・」
「・・・そだね・・・それに私もそんなのだけは絶対に許せない。」
「(・・・そうだ・・・スネイク師もカエデと同じ様に・・・)
お願いします・・・・・・」
2日後 7月15日。
「予定より多少遅れはしましたが、これより第一回王位継承会議を執り行います。」
ガタッ。
「さっさと決めた方がいいだろう・・・?しかし・・・コーデリア様はどうされた?」
でしゃばったのはラゥムだ。
「こんな所にあの様な方を呼ぶ訳には行きませんよ、ラゥム様・・・
しかし、彼女は前国王の意志を継ぐことだけはハッキリしています。」
「・・・ほほう・・・しかし、ラック議員・・・
たかが13歳の少女がそんな聡明な考えを持つとは」
「ゴホン・・・」
わざと咳を立てる場違いな少年―――。
「ん・・・・・・なんだ、君は・・・・・・」
「(・・・悪いが・・・攻めさせて貰う。)
神刀流免許皆伝・・・ソウジ・イムラ。
『あなたに殺された』カエデ・イムラの・・・弟ですよ。」
「―――――――――。」
(ソ・・・ソウジ君・・・!?)
「さて・・・始めましょう・・・」
ザッ・・・
「あなたが王になればどのようになってしまうのかも含めた議論をね・・・」