ACT.35 抗争/詰問


「・・・何・・・・・・?」

「・・・2年前の戦争のあなたの責任を問うだけですよ・・・」

「・・・・・・責任だと・・・!?」

「ソ、ソウジ君・・・!」

クライセントが止めに入るが構わない。

「2年前の戦争の終盤・・・救援要請を行おうと貴方の指揮する大隊に
 第一大隊所属の2小隊が向かったが帰って来なかった・・・
 下手人はラゥム大隊の者であるという・・・戦後に広がった噂・・・
 国家中枢のここに居る皆さんはご存知だと思います・・・」

バンッ!!

「ソウジ・イムラ君・・・とか言ったな・・・?何を根拠に言っている。
 神刀流の免許皆伝ならこの場に居ることは認めよう・・・だがな・・・余り無礼な」

「・・・証拠無しで僕がこんな事をすると思いますか?」

30枚程の写真と書類を机にバラ撒く。

「これはその殺された『9人』の司法解剖の書類とその際に撮られた写真です。」

「「「―――――――――。」」」

(どうして・・・こんなモノを・・・まさか・・・メノウ君が・・・)

「あまりにグロテスクなのでモノクロにしていますが、大体は分かるでしょう。
 さて・・・僕がここで言いたいのは、彼らに付けたれた『刀傷』です・・・
 致命傷の殆どが急所を一突きされています。」

「・・・確かに刀か傷は無数と言っていい程についているが・・・
 これが一体どんな根拠になるんだ・・・ソウジ君・・・?」

白々しいというか、潔白を示そう、というかよく分からない態度だ。

「・・・第一大隊第三中隊隊長・・・あなたもご存知でしょう・・・?
 トルレイト軍の標準装備・・・彎曲刀・・・シュテルを・・・」

とても斬りやすい剣。
“刀”もやや湾曲しているが、このソードは三日月に似ている。

「・・・ならば彼らは皆・・・どうして『一突き』にされているのか・・・?
 しかも、『後ろから』不意を付く様に・・・・・・」

会議場が少しざわめく・・・
どちらの派閥にとってもソウジのこれは予想外だ。
しかし、コーデリア派にとっては武器になる。

「それに関する事は司法解剖の書類に全て記載されています・・・」

「・・・何が言いたいのかね・・・?私にはサッパリと理解出来」

「分かりやすく言いましょう。
 中隊長の発言通りシュテルは“斬り裂く事”を絶対とした剣・・・
 しかし、その彎曲した形の為・・・突く事は絶対に出来ないんですよ・・・」

「「「―――――――――!」」」

「ならば・・・補助武器のナイフか・・・?いや、それも有り得ない・・・
 心臓を貫いた時に同時に骨も傷つけていた・・・
 明らかにローテルダムの標準装備である両刃剣や片刃剣など直線の刃による物だ・・・
 ナイフの刃渡りと司法解剖の結果とは大きな差異が見られますしね・・・」

そう言ってラゥムを僅かに睨む。

「・・・ハ・・・ッ!話にならん!もしかしたら、その装備をトルレイトが奪い、工作」

「ローテルダムの標準装備は丈夫では無いんですよ。
 ただ斬った場合なら刃毀れで済む場合が多いが・・・
 あなたが思っている程、人間の身体は柔らかく無いんですよ・・・」

「奴らが、その刀の強度を知っていて、」

「そこまでする事に、つまり偽装する事で
 トルレイトに想定以上の利益があると考えられますか・・・?面倒この上ない。」

「・・・・・・!」

「加えて、混戦の中でそんな計画を立てられると思いますか・・・?
 いや、トルレイトにそんな面倒な事をする意味など皆無。
 むしろ、一斉に攻めた方が得策。違いませんか・・・?」

答えが返ってこない―――。

(このまま押せば・・・行ける・・・!?凄いぞ、ソウジ君!)

「無理でしょうね・・・と言う事は、魔物か?
 いや違う・・・魔物はそんな回りくどい事はしない。人間は喰す対象・・・
 四肢がこれほど残っている時点で間違っている。つまり、内部犯行しか有り得ない。
 しかし・・・こんな他言無用の話がなぜ世に出てしまったのか。」

ビッ!

「答えはこの写真の隊員に有る。彼は小隊長が異変に既に気付いていた為、
 少し離れた場所に居たと・・・現場を目撃したと自筆の書に記している。
 だが・・・小隊に属しているコトが戦後直ぐに発覚し、
 行方不明と言う形で処理された・・・・・・そうですよね・・・?第二大隊隊長?」

「・・・・・・・・・(この小僧・・・カエデ以上に曲者だな・・・)」

「そして同時期に数名の騎兵隊員・・・もちろん、第二大隊所属です・・・
 その5名が脱隊という形で処理されている・・・
 つまりその5人が下手人で・・・しかし、口封じされた。
 既に彼らの墓も調べ上げ・・・全て証拠は僕らが手に入れていますよ・・・」

「「「・・・・・・・・・っ。」」」

勝った、と確信したい。

「さて・・・もういいでしょう。第二大隊、そして第三大隊も同じこと・・・
 そして、ラゥム様。あなたがその様な指令をしていたら無論のコト・・・
 例えしていないとしても、『第二大隊司令官』としての監督問題になりますよね・・・
 そんないい加減な人物が・・・・・・国王に相応しいと自ら御思いになれますか?」

「くっ・・・・・・・・・」

「僕からは一応・・・以上とさせて頂きましょう。お答えをお聞かせ下さい?ラゥム様。」