ACT.36 抗争/愚かを選ぶ


「反論・・・か。ならば、彼にやってもらおうか・・・」

ガタッ・・・

「初めまして・・・第二大隊第一中隊隊長を勤めさせて頂いている・・・
 シン・ヤマザキ・・・・・・と申します・・・ヨロシク。」

この場に来た時から気にはなっていた存在だ。
わざとらしいほどの笑顔の少年・・・

「・・・・・・・・・(俺と同年代・・・か。)」

「素晴らしい『演説』だったと思いますよ・・・エピソードも中々だ・・・」

「・・・演説・・・・・・?笑わせてくれるね・・・」

「僕らが何と言おうとこれは『反論』・・・ですから。

クス・・・別にいいんじゃないんですか・・・?意見は違えるのだし・・・」

「・・・・・・あぁ・・・そうだな。じゃぁ、反論でも何でもしてみればいい。」

少しイラつく・・・

「さて・・・こちらからはそんな監督問題云々以前に王位継承資格に関して・・・
 コーデリア姫が如何に素晴らしい人間であっても無理である事をお話しましょう。」

少し間を置いて、シンと言う少年が話し出す。

「ローテルダム王国憲法・・・王家に関する項目、第三条第一項・・・
 『王位を継承する者、20歳以上の成人である事』・・・・・・以上で。」

「・・・今回の件は違う。」

ソウジが間髪居れずに反論する。

「第三条第二項『但し、第一項は存命の国王が認めた王族である場合』・・・だ。
 シン・・・とか言ったね・・・君は全く以って的を外している。
 今回適用されるのは第五条第一項・・・国王の崩御の場合について・・・だ。
 『国王が何らかにより崩御された場合、その第一子に王位が継承される。』」

「・・・第一子・・・ファッシュ国王は既に崩御されている。適用外・・・ですね。」

回答が早い。

「いや・・・君は勘違いしている。ファッシュ国王が崩御された際、
 あの時はレオン国王がおられたからあの方が再任された・・・
 しかし、あの方もお亡くなりになられ・・・
 次はファッシュ国王に王権が渡るが彼も亡くなられている。つまり」

「第一子であられるコーデリア姫に王権が・・・・・・?」

「そう言うコトだよ・・・・・・」


愚かだ・・・僕のやっている事は実に愚か・・・

だが、こうしなければ・・・

姉さん・・・あなたと同じ運命を辿ってしまう人がまた生まれて・・・


「・・・はぁ・・・そう来ましたか・・・」

(総隊長・・・あのガキ・・・何なんです・・・?)

(・・・詳しくは知らない・・・ただ、あんな条文を詰まらずに言えると言う事は、
 それなりに知識があると言う事か・・・しかし・・・
 シン・ヤマザキと言う名、どこかで・・・)

「ならば、ローテルダム王国民法・・・王族を含めた家督相続についてです。」

「そんな物を出してくるのなら、僕はストレートにラゥム様の監督責任について、
 法廷の場で言及する処置を下すよ・・・そんな人間を国王に出来るか・・・!?」

「・・・しかし・・・こんな軍事機密の『様な』書類を持っているとは・・・」

「話を摩り替えようとするな。」

「司書失格ですね・・・・・・メノウ・・・クルストさん・・・でしたっけ・・・?」

「・・・・・・(こいつ・・・・・・僕との関係を・・・)」

切り替えが早い上にこちらの攻撃に関わらず突いて来る・・・
即座に対抗せねばならない。

「もしこれが、真偽はどうであれ本物の軍事資料ならば、
 彼女は司書としての責務を反したから・・・背任罪に問われるでしょうね・・・」

「・・・それ以前に貴方(ラゥム)の罪が明らかになりますが・・・?」

「・・・・・・真偽は分からないでしょう・・・?」

(・・・あくまでシラを切るか・・・どうする・・・これ以上やれば、泥沼化だ・・・)

「・・・どんなに会議を重ねた所で決着は付きそうにありませんねぇ・・・
 ならば、ここは第十一条・・・『国民選挙』でどうですか・・・?」

「・・・・・・(まさか・・・・・・)」

(姫を・・・・・・早急に準備だな・・・)

「・・・僕はそれで構わない・・・が、採決を取りましょう。」



全員一致・・・・・・コーデリア姫とラゥム国弟による国民選挙・・・



会議終了後

「・・・ソウジさん。」

ザッ・・・

「・・・・・・・・・何だ・・・今ここで殺すとか・・・かな?」

「いえ・・・この状況で余り妙なことはなさらない方が身の為ですよ・・・」

「・・・妙なこと・・・?」

シンの眼に殺意は無い・・・だが、気になる・・・

「真偽の分からない事を選挙前に公表するなんて事をしたら・・・」

「余り・・・僕を嘗めるなよ・・・まぁ・・・君も余計な事はしない事だね・・・」

「・・・クスっ・・・ええ、そうですね。(・・・お互いに・・・)」