ACT.4 気配


1時間後、ほぼ全ての魔物が去って行った。
紅い刻印の力とこの国を守る騎兵隊のお陰である。

「・・・っていうか・・・訳分かんないんだけど。」

「お前・・・そればっかだな・・・」


俺の名前は『キッド・ベルビオス』。今年17になる16歳。
ビサイドと云うこの国、ローテルダム王国の中部に位置する町の学校に通ってる。
特殊技能の授業では、基本的に剣術か魔法を学ぶんだけど、
俺は魔力が殆どねぇし、小難しいコトが嫌いだから剣術科だ。
腕はまぁ、魔物相手なら3体ぐらいは倒せる・・・ぐらい。


「そりゃそうでしょ!?いきなり、独りゴトを言い出したと思ったら、
 何か意味不明な光が出てきて、一撃であんな魔物を倒すなんて!」


で、こっちのうっさいのが『リノン・ミシュト』。同じく16歳。
俺とは16年腐れ縁な幼馴染み。同じ高校で特殊技能の授業では魔術科専攻だ。
俺とは正反対に魔法のセンスがあって、頭も良くて成績はほぼ常にトップ。


「まぁ・・・何か、アンタも混乱してるっぽいし、追求はしないけどさ。」

「・・・一応言っておくとよ、何か誰かが俺に呼びかけてな。
 『人間は弱い』とか『守りたいんなら我が力を使え』とか。」

「はぁ・・・?」

「んで、呼び出してみたら、さっきの炎だったって訳なんだよ。メチャクチャだろ・・・」

「・・・一応、信じるって言うか・・・実際見たし・・・でも・・・」

「あん・・・?」

「いい感じはしないな・・・あの力・・・人間が使えるような魔力じゃなかった。」


魔力とは魔法を使う為の力で、パンチとかキックなどの物理的な力とは違う。
人間に眠ってる潜在エネルギー・・・と言える。
魔族と同じく人間にも魔力があるお陰で魔物の好きにはされていない、
けど魔族(魔物)の魔力のレベルは人間のより高いから、押され気味だけど・・・
稀にこの魔力を持たない人間もいるらしい。


「それは俺も気付いてた・・・デカ過ぎる・・・それだけじゃねぇ。
 何かこう・・・『壊したい』って感情が漲(みなぎ)ってる。」

「うん・・・『倒す』なんてレベルじゃなかった。上手く言えないけど・・・
 とにかく、ヤバイよ。うん・・・それしか言えない。
 けどねぇ・・・何か厄介な事になりそうなのは確実なんだけど?」

「んなコト、言われたって俺にはどうしよーも出来ねーよ。
 無我夢中だったし・・・みんな殺されて、黙ってるなんて出来ねぇし。」

この力がなければ、自分たちも殺されていた。

「それは・・・私だってそうだよ・・・でも、これから先どうしたらいいんだろ・・・
 町・・・もうメチャクチャだし・・・」

「・・・はぁ・・・・・・」

『ガるガアアッッ!!!』

「んなぁっ!?」

「まだ居たのぉっ、っていうか後から卑怯よ!?」

「言ってるバヤイかよ!?」

虎の容姿の魔物だが、サイズは巨大で尚且つ、速い!

「うおおおっ?!」

「・・・そのまま動かずに・・・直ぐに終わる。」

誰かの・・・声―――

「「え・・・・・・?」」


神 刀 流  神 羅 劫 劉 閃(シントウリュウ・シンラコウリュウセン)


『―――――――――ァ・・・・・・!!!』

粉砕―――!

「全く・・・魔物を退治し切ったと思い込んでいるから、
 こう云う事になるんだぞ・・・キッド、リノンさん。」

男の声だが・・・そこに居るのは茶髪に長い髪にスラッとした長身、
そして、天から2度と誰も与えられない様な整った顔立ち・・・
・・・言ってて悔しくなってきたぞ、作者的に。

「せ・・・先輩・・・来てくれたんスか・・・!?」

「あぁ。気になる魔力を感じたから、増援の要請ついでに来てみたんだが・・・
 しかし、驚いたな・・・誰があの大きな魔力の魔物を倒したんだ?」

「倒したっつーか・・・」

「一応・・・キッドの魔力って事になるよね。」

まぁ、確かに。

「・・・魔力?お前・・・そんなになかっただろう・・・?」

「いや、ホントッスから。」

「(・・・右手が微妙に痙攣・・・それに、何だ・・・?この妙な気配は・・・)
 詳しく聞こうか。色々、あるようだからな・・・」