ACT.41 抗争/最後のデーモンバスター
「・・・・・・・・・」
「同じ抜刀術同士・・・ですか。面白いですね・・・」
互いに腰を落す。
「・・・殺し合いを楽しむクチか・・・?」
「そうでもありませ・・・!!」
ヒュッッ!!! ガキィィンッッ!!!
「―――――――――覇ァッ!!」
「―――!!」
ロックハートの閃撃をやや遅れながらも同じく抜刀で防ぐ。
「うっわ・・・!あっぶないなぁ!話してる最中ですよ!?」
「ふざけた奴だ・・・加えて、俺はお前の事を知っている・・・思い出したぞ。」
「・・・・・・。」
「ソーライト王国騎兵隊に居た事があるな?
俺と同時期に入隊し、俺と同じく最年少隊士だ。同姓同名、容姿全て同じ。
・・・神速抜刀術・・・“白刃流”の免許皆伝だったな・・・?」
「・・・これまた困ったなァ・・・まさか、知っているとは・・・
凄く速い抜刀術の次に驚きましたよ・・・・・・」
ヘラヘラした顔・・・・・・
戦いの最中にこんな顔をする人間は嫌いなタイプだと、ロックハートは思う。
「・・・俺と同じ、数少ないソーライト本軍の生き残り・・・か。」
「フフ・・・自分で殺したのにそんな言い方は無いでしょう?
・・・ものの20分でデーモンバスターの全50人を全て斬ったのに。」
チャッ・・・
「・・・同志をどうして殺したんです・・・?最後のデーモンバスターさん?」
「・・・・・・戯けが・・・・・・・・・奴らは造反した。
故に俺は尽忠報国の志とクリスティーナ姫への忠義の為に奴らに裁きを下した。
国を見捨てた貴様も・・・その例外では無いぞ・・・」
「・・・なるほどね・・・素晴らしいですよ、その心意気・・・でもヤだなァ・・・」
「?」
「ワザワザ、“クリスティーナ姫”なんて言わなくてもいいじゃないで―――!」
逆風(下)からの剣撃!
「・・・・・・喋りはここで終わりだ。」
「っ・・・・・・!!(僕を打ち上げて・・・連携剣技ですね・・・)」
高い天井の為に軽々とその通りに打ち上げられる。
「散れ、裏切り者!蒼覇赤天斬!!」
「多分、言った人も居るかもしれないけどね・・・」
ガキッッ!!
「主を選ぶのも剣士としての必要な能力です。
“見捨てた”なんて言わないでくださいよ。
僕はコレでも国王には忠誠を誓っていましたし。でも、その人が死んでしまったら」
「もう関係が無い・・・か?笑止!」
ガガッッ!!
「何を・・・アナタはまだ・・・いや・・・」
逃げる様に斬撃を突き放し、着地する。
「やっぱりいいや・・・こんなコト話してても意味無いですし・・・」
「・・・あぁ。俺も話すのは面倒だ・・・」
「・・・・・・ったく・・・参ったなァ・・・もっと強い人が来そうだ。」
もっと強い、と思っているのか分からない口調―――
何より対峙しておきながら、“更に”といわれて尚更気分が悪い。
「――――――(この気配・・・イムラか・・・)」
「見付かる前に消えるとしますか。
でも・・・ここで僕と戦った事は口外しない方が身の為ですよ・・・
我々は連合の代表としてもアナタとクリス姫には色々と・・・ね。」
「・・・国王派に協力している事を口外する・・・か?」
「まぁ・・・そんな所です。そうなれば、元々無関係だった人間が・・・ね?」
「・・・・・・・・・・・・消えろ。次に会う時は殺してやる。」
「・・・それは・・・・・・楽しみにしてますよ。」
フッ・・・・・・
「・・・(俺と同じ・・・生き残り・・・)」
「ロックハート!やはり追っ手が居たか。」
「・・・・・・あぁ。姫はキッドに先導させて先に行かせた。」
「・・・さっきの魔力・・・・・・シン・・・じゃないのか・・・?」
「・・・いや・・・会見場で感じた魔力には似ていたが、
この魔曉忍軍の奴が1人化けていた・・・本物は恐らく違う所だ。」
「・・・・・・・・・まぁ、いいよ。隊長達が抑えてくれている。
取りあえず僕らは、姫を外に。調査も僕らでやる。」
「・・・分かった。」
ほぼ同刻
「おっ!!ラアアッッ!!」
バギィッッ!!!
『グ・・・このガキ・・・何モンだ!?』
「はっ・・・はっ・・・・・・・・・忍者だか知らねぇけど・・・
妙な動きばっかりしやがって。正攻法で来やがれ、ボケ!」
『それが忍だ、馬鹿か小僧。』
「・・・・・・はーっ、まさかオメーら・・・タダの学生に負けるのが怖ぇから、
そう云うマネしてんじゃねぇのか・・・?大したコトねぇな、オイ。プップー(笑)」
『・・・・・・だったら・・・・・・やってやろうじゃねぇか、ガキ!!』
『ばっ、バカヤロウ!そんな易い挑発に乗るな!』
『るせぇ!!こういう生意気なガキにはな!!』
長く鋭い鉄の爪で切りかかるのを確認し、
一気にキッドは左の壁に寄り、構える。
『馬鹿か、テメェ!自分から背水の陣してどーするよ!?』
「バカはテメェだよ・・・・・・」
ヒュッ・・・・・・ガギッッ!!!
『――――――!?』
「顔面狙ってくる事ぐらい分かってんだよ。」
『ぐぬっ!?爪が壁に!抜けねぇ!!』
「3人目ッ!!撃破!!」
鞘で腹を打ち抜く。至近距離の為、力は込め難いものの・・・
『ぐがああっっ!!ゲボォッッ!!』
急所に確実に入り、ダメージ量を補う・・・
『バカヤロウッ!だから言った』
「んでもって、4人目ェッ!!」
ドガッッッ!!!
『―――――――――ァが・・・・・・っ』
「剣術授業、常に満点の俺をガキだと思ってるからだぜ。」
満点ってのは嘘。
「キッド!」
「おう、ちゃーんと全部ブッ倒しておいたぜ。」
「うわ・・・ボッコボコだ・・・」
「凄いョ、キッド様!」
「お陰で護衛に集中出来、助かりました。
(・・・有り得ない・・・一介の学生が、
よりによって暗殺術に非常に長ける魔曉忍軍の者を4人も・・・)」
リカードの能力は忍の中でも非常に高く、10人相手でも手こずる事は殆ど無いだろう。
だが、圧倒的な経験値と運動能力を有する忍に対して学生が勝てる訳が無い。
魔物とは違う戦い方が必要なのだ。
「でもアンタ・・・こんなヤバそうな連中、よく倒せたわね。力使って無いんでしょ?」
「あぁ。確かにヤバかったんだけどよー、廊下って結構範囲が限られてっから、
意外と攻撃が読み易かったんだよな。外とは違ってよ。」
(そうか・・・刻印の力だけでは無い・・・運動能力が秀でて良い訳でも無い。
スネイク師と同じく、彼は空間把握能力に長けているとでも・・・)
(間違いなく、高いですわね。)
空間把握能力―――
三次元空間をいわば立体座標により認知する事が出来る能力。
遠近を確実に読み取る事が出来れば、
間合いを知ることも、事象を利用する事も可能である。
(・・・・・・お前には悪いけど、ソウジよりそれに関しては高いかもしれないな。)
(・・・そうですわね。この先、必ず化けますわ。)
「っしゃ、速く脱出しようぜ!」
「アンタさ・・・ロックハート君に対抗したくて無茶に頑張ってない?」
「たりめーだ!あのキザ野郎には一泡吹かしてやりてぇからな!
炎使わないのも実力だって事を思い知らせてやる為だ!」
「・・・あ・・・そう。」
軽くスルー。
「なっ、何でそーいう反応なんだよ!」
「別に私には関係ないし、あんたの事情なんか。」
(しかし・・・精神は未熟・・・みたいですわね・・・)
(この辺もよく似ているといえば、似ている・・・・・・)