ACT.45 策略


翌日(7月19日) 緊急会議

「・・・さて・・・話とやらを聞こうではないか?クライセント君。」

「・・・単刀直入に言います。我々騎兵隊の調査で昨日の襲撃の下手人は
 魔曉忍軍の者であることが分かりました。つまり・・・」

「天真忍軍を使わない点から、『姫暗殺』の首謀者が私だと言いたいか?」

「そうと断言までは・・・」

断言したい・・・だが・・・

「断言する。明らかにあなたの手の者だろう?」

「ソ・・・ソウジ君!今日ばかりは」

「暗殺に使われたのは『球塊式魔道砲』。魔道を球体状に生成し放つ物・・・
 どうしてそんな回りくどい手を使ったのかは皆目見当は付かないが・・・」

ラゥムを睨みつける・・・

「現状・・・・・・そう考えるのが妥当でしょう・・・?」

「フフ・・・妥当?たったそれだけの根拠も何も無い事でラゥム様を?
 忍軍の違いは理解出来ますけどね、
 抜け忍が反抗組織に雇われて暴いたとも考えられるじゃないですか。
 “姫を狙った”=“ラゥム様の仕業”・・・なんて直結するのは行き過ぎでは?」

シン・ヤマザキ―――・・・
この場に居ることからして、中隊長以上の扱いを受けているのは確かだ。
そしてロックハートと戦ったのも間違いなくこの少年―――腕もある。

「・・・行き過ぎ・・・?
 魔道砲は爆弾と違って、魔力を読めば着弾のタイミングはある程度掴める。
 最初からそれに気を使っていれば、“対象とその関係者以外”は避けられる・・・」

「・・・なるほど・・・しかしわざわざ、遠距離武器を使ったのは、
 魔曉忍軍が事前調査の為に内部に侵入出来なかったから・・・じゃないんですか?」

「「――――――!」」

「この城には天井裏が有る場所はそうありません。
 あっても部屋から上る事しか不可能で天井裏同士が繋がっている事はありません。」

無くて当然だ。
そんなモノがあってしまっては王族を守ることなど出来ない。

「その為に侵入出来ずに、仕方なく姫の演説をテレビ中継で見ながら狙った・・・と。
 そう考える方が妥当・・・だと思うんですが・・・?
 だとしたら、爆弾ではなく魔道砲を使った意味が通るんじゃないですか?」

(! こいつ・・・まさか・・・)

「あの・・・僕思うんですが、今回狙われたのは姫だけでした。
 ラゥム様の10数分間の長い演説中には一切何もありませんでしたよね・・・
 と言う事は狙われていたのは姫だけ・・・
 まぁ、こう言ってしまったら変に疑われてしまいかねないんですが・・・
 ねぇ、ラゥム様・・・?」

などと、わざとらしく振ってみせる。

「要は、だ・・・狙われている姫を女王にするよりも、
 狙われていない私を国王にする方が・・・国家の存続と、
 何より国民の更なる不安を掻き立てる必要がなくなると・・・そう言いたいのだがな。
 誰が好んで狙われる危険がある者を国の代表にしたいと思う?」

ラゥムの汚い声が止まない。

「狙われていると言う事は、少なくともそういった組織が嫌がっているんだろう?
 国民の安全を守るのが国王なのならば、狙われなかった私こそが相応しい。」

「き・・・詭弁だ!」

「君がどう叫ぼうが、今朝のニュースなりを見てみれば分かるだろう?
 『姫の女王襲名に反対する勢力の反抗か?』と言っていただろう?
 ・・・世論も非常に怯えたものになっている・・・それとも・・・」

立ち上がり、大げさに手を広げる。

「国民を怯えさせてまで、不安を募らせてまで君たちは彼女を女王にしたいか?」

「く・・・・・・!」

「決まりだな。午後に会見を開き、私の国王襲名の式を挙げることとする。」

「待て!今回の襲撃は」

「証拠は・・・あるのかね・・・?その下手人が私がそうであると言ったのか?
 私がコーデリア様を狙う様に指示したという明確な証拠が・・・。」

「「「―――――――――ッ!!」」」

明確な証拠など、無い。あっても状況証拠ぐらいだ。
物的なら魔曉忍軍の者達だが、自害もしくは黙秘してしまっている―――

「無い様だね・・・そうだ・・・ソウジ・イムラ君・・・
 君と行動している正体不明の剣士が居るそうだが彼に伝えておいてくれないか?
 ここには君の守るべき姫君は居ないのだ・・・とな。」

「「――――――!!」」



バタン。



「・・・・・・・・・」

「・・・こうなってしまっては・・・・・・・・・」

「・・・・・・いや、まだ手はありますよ・・・」

「ま・・・まさか・・・」

「そんな手は使いません。ただ・・・・・・
 僕も“正体不明の剣士”とは実の所、意見は同じでしてね・・・」

ザッ・・・

「どんな手を使ってでも姫をこの国の代表にする。
 何より彼女がこの国を本当に愛しているコトが分かりましたからね・・・」



そう、例えどんな手を使ってでも、後でどんな眼で見られようとも。