ACT.47 脱出/脱出と追跡と―


2日後(7月21日) 王女の部屋

「嘆願書は無事届けたと言う報告が。」

「ご苦労様です、リカードさん。受け入れは・・・?」

「二つ返事だったと。つまり、ここから我々の行動が始まる。」

「良かった・・・姫の事はどのように?」

理由も無しに国外どころか外に出る事など出来ないのが王族である。

「今回の件で精神的に・・・とでも言って遠隔地休養を取る事になりました。

 隊長の方は今後の事を円滑に進められる様に尽力すると。」

「分かりました。それでは行きましょうか、もう皆、準備は出来ています。」


ザッ・・・


「・・・いえ・・・私はここに残ります。」

「リカードさん・・・?」

「ソウジ様・・・いや、ソウジ君。今の隊長では恐らく、マトモな判断は出来ない。
 ・・・ずっとカエデの事を悔やみ続けているから・・・」

「・・・それはそうですが・・・」

「・・・・・・私は・・・・・・隊長を助けたい。」

「(そうか・・・この人は・・・)分かりました。姫は僕らが必ずユーリケイルに。」

「・・・私の代わりに、道中に間に合う様に仲間を手配している。
 そいつを使ってやって欲しい・・・」

「分かりました。」

「・・・申し訳ない・・・近衛ならば姫を守らねばならないのに・・・こんな・・・」

「隊長を助けられるのは、痛みを知り得るあなただけです。気にしないで下さい。」

扉を開く・・・

「ソウジ君。」

「・・・何ですか・・・?」

「・・・・・・いや・・・・・・何でもない。頼む。」

「はい、必ず成功させて見せます。」




同刻 ???

「という訳だ・・・これを知るのは10数名・・・」

「・・・そら、事の重大さは分かるけどなァ・・・」

と呻く、浅黒い肌の少年―――

「いつもやる仕事が低レベルでつまらんゆーとんのはお前やろうが。」

「・・・・・・了解。ほんなら、あのコも連れてくで?」

「うむ。恐らく、探し人が居るハズだ。
 刻印は刻印と、刻印は鍵と、鍵と鍵は呼び合う定め・・・
 その場に1人、伝承の力を持つ者が居るのならば必ずや。」

ガラッ。

「ちゅー事でや、来るやろ?いや・・・ほぼ確実やろーな。」

「はい。よろしくお願いします。」



同刻 ローテルダム城

「・・・コーデリアが長期療養・・・?」

「えぇ・・・公文書でそう書かれていましたよ。ラゥム様。」

「・・・・・・偵察は・・・」

「もちろん送ってますが、サッパリ。
 昨日の内に姿を消しちゃったのかもしれませんね。(まだ城下町に居るみたいだけど。)」

ガッ!

「何を悠長な事を言っている・・・探し出せ・・・そして私の前に引き出せ!」

「・・・服が延びちゃうんで話してください。」

「・・・チッ・・・」

「どうも。」

僅かに延びた・・・厭な気分になる。

「・・・アハハ・・・そんな怒らなくてもいいじゃないですか。」

「そろそろ、流浪の貴様を拾ってやった恩を返して貰いたいのでな。
 ここで本当の結果を出してもらわねば、意味がないのだよ。」

「ヤだなァ・・・言われなくても分かってますよ。
 『療養先への道中で遭難!』とでもなるようにすればいいんでしょう?
 面倒な処理をしなくて済みますし・・・ねぇ、ラゥム国王。(そろそろ・・・かなぁ?)」

「分かっているのなら、それでいいのだ・・・」

「でも・・・直ぐには・・・無理でしょうね。
 何せ、あのソウジ・イムラさんが居るんですから。」

「・・・・・・加えて・・・ロックハート・クラウン・・・」

「・・・居るらしいですねぇ。まぁ、本当かは分かりませんが。
 あと、キッド・ベルビオスとかいう学生さんもそれなりらしいですけど、
 まぁ、所詮は学生レベル・・・警戒すべきは先の2人。
 この2人を倒さない限りには恐らく無理でしょうね。」


ザ・・・ッ。


「ホントに弱ったなァ。一体多数ってあんまり得意じゃないんですよ。」

「・・・“白刃流”の免許皆伝が何を恐れる?行け。」

「はいはい。それじゃ、“組”も使わせて頂きますね。」