ACT.48 脱出/刻印と鍵
2日後(7月23日) 非領有区
「ヤターっ!国境無事突破ぁ!」
「姫・・・余りはしゃがないでください。」
(つーか、自分の状況を理解してんのか?この姫様・・・)
「ソウジ様の言う事は全部聞いちゃうョ☆」
理解してるが忘れていると思う。
「っていうか、ロックハート君凄いね。姫に完璧な変装させて。」
「しかも、偽造パスポートまで・・・」
「・・・これでも追われの身なんでな・・・
出来うる限りの技術は身につけている。まだ、半人前だがな・・・」
ザッ。
「ともかくだ・・・この周囲10km圏内はどの国にも属さない非領有区・・・」
「つまり、非合法行為やりたい放題・・・
もし追っ手が追いついているのなら、僕らをここで襲わない手はない。」
「そうですわね。このままでは、目立ちますし・・・ある程度、分団します?」
「・・・・・・いや・・・相手は俺たちの人数ぐらい把握しているだろう・・・
どうしようが、見付かる時は見付かる。そのままでいた方が安全だ。
何より姫はプリンセスの1人の可能性が高いという事実・・・
ヒルダンテスが狙っている事も忘れてはならん。」
相変わらず、人の目を見て話す事はしない。
そして、プリンセスという言葉―――
ヒルダンテスやローズが言っていたが、
刻印との関係があるであろう事は何となく皆も分かっていた。
もっとも、キッドやコーデリアは覚えていない、または理解していないだろうが。
「その、前から聞いているヒルダンテスという人ですが・・・」
「あ、そっか。メノウさんは話でしか聞いてなかったんだ。」
「えぇ。その人・・・キッド君やロックハート君と同じく刻印を持っていて、
ロックハート君から昨日までに聞いた話では
プリンセスと呼ばれる6人の人間を探している・・・との事ですけど、
具体的に何をしようとしているのか、分からないんですか?」
(プリンセスって、コーディ、お姫サマだからそのままだョ。)
少し間が空き、ロックハートが口を開く。
「・・・・・・プリンセスとは、基本的に上流階級の血を受け継ぐ娘だとされている。
そして、彼女達は刻印の力を抑える鍵を持っている。
刻印は6つ、鍵も6つでそれぞれに対応している・・・
しかし・・・正直言って、俺もヒルダンテスの狙いが何なのかは分からない。」
「そういえば、3人のプリンセスは捕らえてるって言ってた・・・」
(俺・・・分かんない・・・)
↑半気絶状態だったから。
(話に付いていけないョー。)
↑そもそもアナタに難しい話は無理なんです。
「残るは3人・・・1人はコーデリア姫・・・可能性が高いだけだが。」
「コーディ、鍵なんて持ってないョ!?引き出しの鍵しかないョ!?ほら!」
鍵と言えど、オモチャっぽいのだった・・・
その辺の金属棒でも使えば簡単に開くような。
「・・・姫・・・少し静かに訊いてましょう・・・」
「後の2人は・・・・・・?」
「・・・・・・その内の1人は分かっている・・・」
「・・・やはり・・・そうなんだな・・・」
「「え・・・?」」
「あぁ・・・・・・」
ザァ・・・ッ・・・
「・・・ クリスティーナ・シラ・ソーライト ・・・
彼女は俺の刻印を守る鍵・・・“アレキサンドライト”を持っている。」
「・・・と言う事は、お前は単に国家を再生する為だけではなく・・・」
「そうだ・・・あの男に彼女は狙われている。だが未だ行方不明・・・」
「? ロックハート君がずっと近衛をやってたんだよね。あの事件まで。」
「・・・・・・俺とヒルダンテスが戦った際に少し色々とな・・・」
(((・・・・・・?)))
「(・・・少し話の筋を変えてあげた方がいいかもですわね。)
アレキサンドライト・・・緑色の宝石ですわね。他の鍵も宝石の名が?」
「・・・恐らく。だが、俺の刻印シルフィードは自分に対応する鍵の名しか知らん・・・
フレイムドラゴンに聞けばそいつに対応する物も分かるだろうが・・・」
「って訳で、聞きなさいよ。」
「ちょっと待てよ。
コイツってば、最初に現れてからは全然喋らねぇんだよ。」
「・・・役立たず。」
「少し同感ですわ。」
「つまんなーい。」
(女性3人ヒドイな・・・)
というか、最後の つまんない は関係無いぞ。
「・・・俺が悪いんぢゃねぇ・・・」
「役立たずは放って置いて・・・だ。少し、速度を早めた方がいいだろう。」
「んだと!?テメ、ロックハート!」
「・・・五月蠅い・・・少し黙れ・・・」
(キッド・・・お前、物語の主人公にはどうしてもなれないタイプだな・・・)
(ソウジさんもサラッとヒドイこと言ってますね・・・)
「くそ・・・ぜってー、活躍してやる。」
多分、その内出来ると思う。